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1364 ヨオリヶ鼻=八丈町鳥打(東京都)八丈小島が全島離島で無人島になったその背景を考えてみると… [岬めぐり]

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 調べてみると、八丈小島が無人島になったのは、1969(昭和44)年の“全国初の全島民完全移住”から後のことであった。島からの移住を望む声が出始めたのは、その4年前の1965(昭和40)年頃からのようで、その年の国勢調査では、人口総数は123人で、これは明治初年の約4分の1であったという。翌年に出された住民からの請願書では、その理由を次のように述べていた。
 
 理由

 小島地区は、ご承知のとおり、八丈本島の属島で未だ、電気、水道医療の施設もなく、文化果つる、離島の離島として住民の生活程度は低く、高度の経済成長に伴い、生活水準は年々向上の一途をたどっている現在、その格差は益々開いて皆様方の想像以上の苦しい生活を営んでいるのが実情であります。
 更に最近若い人が島をはなれるのが多く、人口は、減少しその構成も老令化して近い将来老人ばかりの島となり本島との連絡にも事欠く事態となることは明らかであります。

 以上のような観点に立つて私達住民の将来に於ける生活を考え、全住民が生活環境が整つた地域に移住し子供の教育は勿論私達の生活向上をはかりたいと存じております。

 八丈町議会は実情調査を行なったうえで、この請願を採択し、1967(昭和42)年には八丈町から東京都に対し、「八丈小島の全員離島の実施に伴う八丈町に対する援助」の陳情が行なわれた。
 そして、土地買収に関する住民との協議を経て1969年初めから離島が開始され、半年後には鳥打小・中学校および宇津木小・中学校が廃校となり、全島民の移住が完了している。
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 現在の地理院地図でも、北部の鳥打、南部の宇津木という地名表記は残る。
 北の鳥打の集落は、下立鼻の緩傾斜地よりもずっと上の傾斜地に、屋根と同じ高さの背後の崖にへばりつくようにして、三方の周囲にはカザグネと呼ばれる木を植えた防風垣で囲まれていた。
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 あえて緩傾斜地を避け、急斜面に崖を利用して、強風に耐えられる家造りが行なわれていたようだ。室町時代から人が住んでいたというこの小島では、環境に適応すべく、かなり独自の生活様式が残っていたのであろう。
 だが、それらは島でありながら漁業は自給自足分だけ、わずかに現金収入になりうるのは島の周囲でとれるテングサやノリくらいだという。農業も主食のイモ類くらいが主で、近代的な経済手段からは遠いものであった。わずかな斜面の耕地を放牧地として乳牛を飼育し、一時はバターづくりなどもされていた。その最盛期が島が最も活気があった時代だったようだが、提携先の森永乳業に不祥事が起こった影響で、天水利用という点が問題視されて取引停止となり、壊滅することになったという。
 現在の地図では島には道路というものがまったくないが、戦後には失業対策事業で道路づくりが盛んに行なわれたようだ。これが、農業や漁業によらない主要な現金収入だった時期も永く続いていた。だが、それは島の経済的な自立を促進するものにはならなかった。
 全島離島を前に、東京都教育委員会が実施した民俗人文地理調査に参加した澤田裕之氏の小論「東京都八丈小島における経済活動と集落」を参考にさせていただきながら、Wikipediaその他のネット情報には書かれていない部分をちょっとだけ補うべくつまみぐい学習してみたが、インフラもない離島の生活の厳しさは想像を絶する。
 あるいは、崖崩れも確かにあったのであろう。島の斜面を見ていれば、それも容易にわかる。これに自然災害が加われば、人の生活は成り立たない。
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 ヤギ? あっ、そうそうヤギね。ヤギも確かにいました。
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 最初は島民が飼っていたヤギが逃亡して野生化したもので、移住のときに置き去りにされた後に異常繁殖したようだ。そのため、都の天然記念物ハマオモトなど植物群落の消失など環境悪化とそれらに続く崖崩落を招いたらしい。ヤギと崖崩れの因果関係も、植生への影響から多少はあったのだろう。その後進められたヤギの捕獲・保護策により今ではもういないらしい。
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 最後に、八丈小島の将来に多少は明るいニュースも…。
 国際自然保護連合から絶滅危惧種に指定されている、クロアシアホウドリの飛来や抱卵などが、2013年に市民団体や研究グループによって確認されているという。また、国の特別天然記念物のアホウドリとコアホウドリの飛来も確認されたというので、そのうち大型の海鳥の繁殖地として八丈小島の名が知られるようになるかもしれない。
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▼国土地理院 「地理院地図」
33度8分10.40秒 139度40分59.06秒
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dendenmushi.gif関東地方(2016/04/15 訪問)

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タグ:東京都
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