1362 大越ヶ鼻＝八丈町大賀郷（東京都）閉校から40年も経った後で建てられた「八丈町立永郷小学校跡地記念碑」

　永郷小学校があったことを語ってくれるのは、都道脇の「八丈町立永郷小学校跡地記念碑」である。なんとなくぎこちない感もあるその碑文の文言を読んでみよう。

　

　八丈小島を望む大越が丘に昭和32年度より昭和49年度まで八丈町立永郷小学校が建てられていました。

　小さな学校に大きな夢を持った児童が学んでいた場所でした。

　児童数減少により昭和50年3月31日に閉校しました。

　18年間の卒業生数98名　閉校時の在校生4名の学び舎でした。

　この地が 素晴らしい学びの場であったことを 永く忘れないため ここに記念碑を建設します。

　

　このあとに、校歌の一節があり、記念碑の題と寄贈者の名前などが記され、左の石柱には「旅立ち」、隣の四角いのには「アップル」という題があった。「平成27年3月29日」という日付がある記念銘板は、浮き出しで彫り込まれている。

　つまり、この碑は学校があった年月よりもずっと永い、閉校から実に40年も経った後で建てられているわけである。

　そこになんかドラマをみるような気がするのは、でんでんむしが勘ぐり屋だからであって、事実はもっとあっけらかんとしたものであろう…か。

　なんとなく気になったので、碑文に刻まれている製作者の名前を検索してみると、金城靖子さんはこの学校の卒業生で、造形会を主宰する彫刻家であることが、NHKカルチャーセンターのサイトでわかった。

　月夜ヶ鼻と大越ヶ鼻は、ほんの400メートル弱しか離れていない。都道脇には「大越ヶ鼻灯台」という標識があるので、灯台の名前は月夜ヶ鼻ではなくこっちのほうになっているようだ。園地の名前も大越であるところからみると、どうやら今では地理院地図からも名前が消えた、この付近の古い地名である永郷の小字名だったものだろうか。だが、その古い地名は新住居表示で広く大賀郷にくくられ、吸収されても捨てられない…。そんな想いが、標識の「大賀郷永郷」には感じられる。

　大越ヶ鼻の南、クソガ根という岩根の上のほうにも、道路からは下で目立たない集落があるようだ。

　灯台の展望台から、北に降りていけば月夜ヶ鼻へ、南に降りていけば大越ヶ鼻の上に出ることはできたのだろう。だが、この付近はこれまでよりもさらにもっと下らなければならないようだ。

　下りなくても、道路付近から下の海と海岸が見通せている。おまけに傾斜もかなり急なので、ここからで充分と横着を決め込んでしまった。

　赤崎からここまでみてきたところでは、八丈島の岬はどれもみな大きく高く海に突き出ているというようなものではない。

　わずかに飛び出た岩の出っ張りに、“崎”や“鼻”という名がつけられているに過ぎない。そしてそれは、隣の“根”という名がついているところと、どうみても区別するのはむずかしい。

　大島を始めとする伊豆諸島の島々を、訪問したときにもそう思ったのだが、どうやら伊豆諸では、“根”と“崎”や“鼻”は、まったく同じもの、同列なのだと考えるほうが筋が通るように思えてしかたがない。

　しかし、だとしても今さらそれを修正して“根”も岬めぐりに入れるというわけにもいかないことは前項の通りである。

　そのうえで、伊豆諸島の特殊性として、そのことはいちおう記しておかなければなるまい。

　海底が隆起し、同時にその火山が噴火して海面上に突き出て、さらに噴火と溶岩流と火山弾・火山灰の流出と噴出によって、こういうぽこぽこした島がいくつもできた。このため、海面から急角度で山が立ち上がって海岸線がつくられた。溶岩流は、その勢いのまま海になだれ込んでいったので、海岸には平地や砂浜もできる余地がなかった…。わずかにそのヒダの目立つところに、“崎”や“鼻”そして“根”の名がついたのだろう。

　八丈富士がまさにそうだったと思われるが、これは大きすぎてまた近すぎて視界に入りきらない。だが、八丈小島なら…。

▼国土地理院　「地理院地図」
33度9分13.20秒 139度44分37.83秒

関東地方（2016/04/15　訪問）

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