1333 馬ガ鼻＝さぬき市小田（香川県）小田峠から小田に降りてくる古道は興津経由だったが小田湾岸は全部小田

　馬ガ鼻を頂点とし、釜居谷と小田を結ぶ線を底辺とする二等辺三角形は、底辺のほうが他の辺より短いので、鋭角につきだしているようにみえる。この三角形のなかは100メートルに満たない最高点付近にクラブハウスをもつゴルフ場が、この三角のほぼ全域を支配している。

　三角形の底辺の真ん中辺りからの道を入る道があるだけで、ほかには道はない。そのゴルフ場の最北端にあたる馬ガ鼻へは、ゴルフコース以外に陸上からのアプローチはまったくない。

　東側からは見えない馬ガ鼻も、西側は北に開けた小田湾が広く円弧を描いているので、その沿岸からならどこからでも眺めることができる。

　東側が少し高く、そこから西側と北側に下っている三角形の出っ張りは、南西側からみるとほぼ平らな岬のようにみえるが、それはこのゴルフ場全域の大部分が標高50メートルの等高線の範囲内におさまっているからだろう。

　大空という集落は、小田から南東の小さな谷間の水流に沿っている。津田小田線のさぬき市コミュニティバスが、大空口まで降りてくるのは、その集落の住民のためもあるが、ここで津田小田線が終わると、今度は志度小田線につなぐことによって、この半島をぐるりと回るためであろう。

　志度小田線に乗り換えれば、JRも琴電もある志度まで出ることができる。

　ところが、そのダイヤは午後にならないと便がない。そこで、ぶらぶらと小田へ降りて行き、小田の町と港を抜けて興津の海岸までやってきた。

　ここから北東方向に見る馬ガ鼻も、若干後ろ側からの姿になる。雨はいちおうは止んだが、お天気はまだはっきりと晴れる方向には流れていきそうになく、あいかわらずまたいつ降りだしてもおかしくないような雲ゆきなので、岬もいまひとつぱっとしない。

　だが、こればっかりは、その時その時と場所場所のめぐり合わせというもので、いたしかたない。

　本小田、小田、浦小田という字名が続く集落は、ふたつの港が並ぶ湾奥にあり、この範囲が従来の小田地域であったのだろう。

　わざわざに、こういうことを書くには理由がある。現在の住所表示では、さぬき市の小田という地域は、東は馬ガ鼻のある三角形の出っ張りから、西は細長く北西へ伸びている大串半島東半分の先っちょまで、小田湾の沿岸をすべて包含するようになっているからだ。

　“正確な所属を示すとは限らない”と開き直っている地理院地図だから、これもひょっとすると…？

　念のためにMapionでも確認してみたが、やはり湾岸一帯すべて小田である。

　住民が少ないのだから、文句を言うやつもいないだろうとばかり、小田の範囲を拡大してしまったのだろう。確かに、ゴルフ場だけの東の出っ張りと、西の大串半島には住人はいないようだが、このため奥の谷、中西、興津、笘前といった昔からの集落の名前は公式には消えてしまった。

　小田の町並みが切れる中西から、道はふたつに分かれる。海岸から離れて真っすぐ行けば小田峠を越えて志度へ抜ける近道で、海岸を波打ち際に沿って山の下の狭い道を行けば、興津の海水浴場に出る。興津からさらに小さな峠を越えて大串半島に寄っていけば笘前（なんて読むのかねえ。“とま”は草冠だよね。“せんまえ”かねえ）の集落がある。大串半島の東側の付け根にあたるそこまで歩いて行っても、大串岬は見えないし馬ガ鼻の景色にはたいした代わり映えはしないので、興津の海岸で午後のバスがやってくるのを待つことにした。

　興津海水浴場の砂浜も、どうやら自然のままというわけではなさそうだ。遠く北には、小豆島の島影が浮かぶ、よくみると、おやおや！　ゴルフ場のグリーンは馬ガ鼻の上にまで達しているが、その下の岬の向こうには…。これは大型のタンカーのようだ。こういう景色が見られるのも、瀬戸内海ならでは。

　そして、道の脇には、「馬ヶ鼻と興津海岸」という石柱と並んで、こんな古い石の道標が立っていた。

　なるほど。小田峠からは北の興津へ降りてきて、ここから東へ海岸の道を行くのが従来の古い道だったのだ。小田峠から中西へ行く山の中の道は、車が走るためにつけられた新しい道だった。

　あれれ、また雨が強く降りだしてきたので、比較的新しく作られたらしいバス停の待合所に避難。

▼国土地理院　「地理院地図」
34度21分3.09秒 134度15分0.58秒

四国地方（2015/11/02　訪問）

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