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1328 雄美岬・猿多岬再び2=白鶴城下(豊後関前藩)佐伯泰英著『居眠り磐音 江戸双紙』シリーズ全51巻振り返りリスト [岬めぐり]

 ←前項に続いて…。
 最終巻読了を記念して、“平成の大ベストセラー”佐伯泰英著『居眠り磐音 江戸双紙』シリーズ(双葉文庫)の全51巻を簡単に振り返ってみるリストをつくってみた。
 あらすじを追うというわけにはいかないので、「ああ、そうだったな」と読後の記憶を呼び起こしてつなげるためのキーワードのようなものを並べてみた。
 
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 豊後関前藩の中老の跡取りが、なぜ藩を出て江戸で浪人暮らしをするようになったかは、巻の途中でもあちこちで説明されるが、実は一見中途半端なこの磐音の立ち位置というのが、物語の展開には欠くべからざる背景となる。
 主に鰻割きで生計を立てる磐音だが、両替商今津屋の用心棒として、吉右衛門や由蔵、さらには佐々木玲圓と速水左近という強力な支援者を得るいっぽう、品川柳次郎や竹村武左衛門という仲間や門弟たち、南町奉行所とのかかわり、医家桂川家など、全巻を通じて重要な脇役たちが顔を揃えていく。
 そして、許嫁だった奈緒との別れ、おこんとの関係などのほか、女性たちが非常に大きなウエイトを占めるところにも注目で、なかでも後半大活躍する霧子も登場して、日光社参という最初のクライマックスに向かう。
 
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 玲圓・左近らと将軍家治の嫡子家基を陽に陰に警護するが、日光社参の密行時から、徐々に家基を排除したい田沼意次一派からの圧力が増していく。
 このあたりから、田沼との戦いになるが、それまでも南町の捕物の手伝いとか、剣戟の響きがさまざま入れ替わり立ち代わり鳴り渡る。それらについては、いちいち書くとたいへんなのでここでは省略している。
 おこんと結ばれた磐音は、佐々木玲圓の跡を継ぎ、特別な使命を帯びた尚武館道場の後継となる。
 この物語では、柳次郎・武左衛門とその家族や、重富利次郎・松平辰平の相手とのそこはかとないロマンス、それに幸吉やおそめ・おはつ、武左衛門の娘の早苗・秋世などの存在も大きな軸になっている。そこで描かれる女性たちの、なんと見事なことか。
 そして、ついに家基の暗殺と玲圓夫婦の自裁、神保小路尚武館道場の消滅という最大の危機を迎える。磐音とおこんは、江戸を脱出し、名古屋で尾張藩と細作中島家の好意を受け、しばらくの平安を得るが、そこにも田沼の手が伸びてきて、それも長く続かない…。
 
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 尾張から移った霧子の生まれた雑賀の隠れ里で受け入れられて、おこんは空也を出産する。
 そこに、弥助霧子と利次郎辰平らの家族のような仲間と、紀州藩と高野山を背景にした戦いの末、磐音は一家とともに江戸に帰り、小梅村に道場を開き、田沼派が次々に仕掛けてくる戦いに臨む。
 最後は、意知の死によって急速に反田沼の高まりに抗しきれず、勢力を失う田沼。そして、ときは流れ、神保小路尚武館の再興から一家とともに豊後関前への帰還とエピローグは盛り上がるのだが…。

 ちょっと最後の関前藩の決着は、いささか期待はずれだった。なぜなら、最後の二巻は同時発売で、少し間を置いてやっと出た最後の締めくくりなのだが、ここではそれまで毎度毎度おなじみのちゃんばらではない、別の収め方をなんとなく想像していたからだ。
 磐音にとっては迷惑年になった明和9年以来、何度も同じことが繰り返され、その度にすでに藩を離れているはずなのに活躍しなければならない。そういう関前藩のゴタゴタは、国家老正睦自身が述懐しているように、裏返せば藩主や当事者の管理能力を問われてしかるべき問題にすぎないように思われたからだ。
 ま、それはそれとして、浅間山が噴火し、飢饉が襲うという時代を背景に、貨幣管理政策や米相場、悪役田沼のあとの松平定信の改革がまた評判が悪いという史実をも織り交ぜて、これまでの剣豪小説とはまったく趣の異なる主人公と多数の脇役たちのからみは、なかなか楽しくおもしろく読ませてくれました。
 佐伯先生、14年かけて公約通りの51巻におよぶ大作、祝完結、たいへんお疲れさまでした。ありがとうございました。
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dendenmushi.gif (2016/01/12 記)

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タグ:豊後関前
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