1276 鞍崎=珠洲市長橋町・片岩町(石川県)珠洲市半島北海岸で数えられる岬は計7つあってここも新旧二本のトンネルが通る [岬めぐり]
この日は雨の日曜日であった。日曜日は路線バスの運行本数が減るのがどこでも普通で、学校も病院も休みになれば、ただでさえ少ない“バスに乗らなければならない人間”はうんと少なくなる。
能登半島の路線バスもそうで、ただ一本だけしか使えるバス便がない。そのため、途中で降りることができず、ひたすら終点まで乗り続けるしかない。
半島を曽々木から東北東に進むバス路線は大谷線、木の浦線とあるが、結構走り方が複雑怪奇で、旅人にはきわめて不便なようにできている。
真浦に泊まることになったのも、本来なら泊まりたかった長橋町や木浦までのアクセスがなく、迎えに来てくれそうな宿もないからであった。
以前に来たときには、狼煙から輪島へ向かったので、今回はその逆で西から東へ走っている。バスはいつものように乗客はでんでんむし一人だけで、途中から一人乗ってきたくらい。
真浦の逢坂トンネルを過ぎると中田浜で、ここにも揚浜塩田の施設がある。(揚浜塩田については「1274 白崎」の項参照) 仁江町・清水町・片岩町と珠洲市の集落が点在するのを拾いつなぎながら、雨の国道249号線を走って行くと、前方にうっすらとあった山が、徐々に大きくなってくる。
岬の手前が片岩の集落で、そこを過ぎると赤島と表記もある小さな出っ張りの向こうに鞍崎が…。人が跨がる鞍のようにくびれた形をしているのが、その名の由来なのだろうか。ただ、それも上空から眺めてみないとわからないことなのだが…。
この岬は、周辺に岩礁地帯を伴うだけでなく、岬全体も岸壁に覆われているようだ。そのためにここだけ海食にも耐え、岬として残ることになったと考えてよいのだろう。
この沿岸では、海岸線の地形は比較的大きな変化がないので、約25キロに及ぶ真浦のツバ崎から狼煙の禄剛崎の2つの岬の間では、地理院地図に表れる岬は、この鞍崎と大崎・鰐崎・堂ガ崎・シャク崎と5つしかない。
それらの岬もすべて、ほぼ同様な地形・地質のようで、厳しい日本海の波浪に抗して岬として残るべくして残った、と言えるのだろう。
もっとも、そんなことを理屈とすれば、日本中の岬もほとんどすべて同様ということにはなってしまうのだが…。これから先の能登の海岸を走って行くと、なんだかそう言いたくなるような…。
その5つの岬のなかでもこの鞍崎は、50メートルくらいの高度があること、岩山の岬の下をトンネルが通っていること、そして灯台をのっけているという特徴がある。高度とトンネルは前項のツバ崎と同じようだが、灯台は輪島港の竜ヶ崎以来久し振りである。
白い円筒形をした鞍崎の灯台も、雨の中にすっかり霞んでしまっている。
もうひとつ、ツバ崎と同じようにここでも新旧ふたつのトンネルがある。これも暗くてはっきりしないが、岩の壁の下に電柱と道らしきものがあり、トンネルの入口もあるのだが、写真ではよく見えない。ただ、地図上ではこのトンネルの道は破線であり、自動車道にようには見えない。
岬を新旧二本のトンネルが通るというのは、ケースとしては少なくない。そのたいていは旧道が狭かったり老朽化して危険だったりして、新しい道と新しいトンネルを内側に付け替えたもので、旧トンネルは閉鎖されるが道の場合は迂回路として残ることもある。
この鞍崎の旧道と旧トンネルも、あまり残す意味もなさそうなので、すでに閉鎖されていると思われる。
…ってなことを考えながら地図を見ていて、また奇妙なことを発見した。
Webの地理院地図では、カーソルを置いた位置の住所表記が表示されるのだが、それによると鞍崎はまるまる珠洲市長橋町になっている。ところが、Mapionでは町の境界も点線で示し、色分けまでして明確に区分しているのだが、それによると鞍崎の旧トンネルを突き抜けた先までが珠洲市片岩町となっているのだ。
さて、どっちが正しいんでしょうね。こういう場合、国土地理院のほうを信用したくはなるが、そちらは境界線を明記しているわけではないのでねぇ。
▼国土地理院 「地理院地図」
37度29分54.93秒 137度8分41.29秒
北越地方(2015/09/13 訪問)
タグ:石川県
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