1273 竜ヶ崎=輪島市輪島崎町(石川県)今はなき鉄路を惜しむがごとくにある輪島で港をつくる竜の頭 [岬めぐり]
あれっ、また竜ヶ崎ですよってなことは前にも小崎であったが、この竜ヶ崎もここでは同じ名前の岬が鵜入とこことふたつ続いてある。龍神様を祀ったとか、およそそんなことだろうが、この竜ヶ崎は輪島港がある半島の西側海岸にあり、地図を眺めていると、この小さな半島自体が竜の頭のようにも見えてくる。
左向きの竜の頭には大蛇礁という岩礁が帯になってヒゲのように伸び、輪島港の防波堤は角のように後ろに突き出て、鴨ヶ浦と竜ヶ崎の岩場はちょうど口を開きかけたところのようだ。トンカチのような半島が、輪島市街の西の海に突き出ていて、その先50メートルくらいのピークが二つある。
これも陸繋島にしては繋ぎ部分が高いようだが、北側の二つのピークと、南側の鳳来山公園のある海士町の丘とは、かろうじてつながっている。そのひとつには灯台ものっけているが、東側には港と港町がぎっしり埋めていて、その名も輪島崎町。反対の西側には、袖ヶ浜という白い砂浜が半月形に展開していて、東西が対照的である。
竜ヶ崎は、灯台のあるピークの西の先っちょで、その下は遊歩道がトンネルで通り抜けている。
ここは、この日のいちばんのバスで、しかもこれを逃すとお昼前までないという門前発輪島行きのバスに乗って、まず白米の千枚田を訪ね、その帰りに馬場町で降りて輪島市街を歩いてきた。
輪島は二度目で、朝市も漆塗会館もそのときに訪ねていたが、今回も朝市通りから塗師の家もある裏通りから赤く塗られた鉄橋のいろは橋を渡って、住吉神社から鳳来山公園の下を抜けて袖ヶ浜へ出るというコースを歩いてきた。
竜の首の付け根を横断してきたわけだが、この坂は結構な勾配もあるので、後から開かれた峠道なのだろう。竜の首の後ろから背筋につながるところは輪島の市街地だが、竜の喉首から下は海水浴場になっている砂浜のきれいな景色が続く。その景色のなかに、竜ヶ崎はピッタリと納まっていて、なんだか整いすぎているような印象すら受ける。
袖ヶ浜で大沢方面に行くバスを待つ間、しばし砂浜の風景を楽しむ。
西の光浦のほうには、白い粒のように小型漁船がたくさん集まっている。ダルマ瀬などの岩礁地帯の沖は、漁場になっているのだろう。
地理院地図では袖ヶ浜の海水浴場を囲むように堤防が描かれているのだが、実際にはこれはもう放置されて波のなすがまま。いまにも跡形もなく崩れ去る運命のようだ。
駐車場やキャンプ施設もあり、大きな観光旅館もある袖ヶ浜は、夏のシーズンにはかなりの賑わいを見せるのだろう。
輪島のバスの実際の終点は市立輪島病院なのだが、その手前の輪島駅前というのが実質的なターミナルになっている。ここに駅なんかあったっけ?
そう思う人も多いはずだが、昔は確かにちゃんと輪島駅があったのだ。でんでんむしが最初にきたときも、能登鉄道の輪島線が走っていた。その頃はここが終点で、その駅のプラットホームの行き先掲示板には輪島の次は「→ウラジオストック」とあったという記憶がある。シャレてていいな、とそのときにも思ったのだが…。
バスターミナルの建物のトイレ裏手には、その線路や信号機やホームの一部が残されている。が、掲示板の文字は「→シベリア」となっていた。
あれっ、記憶違いだったのか? そうなのかも知れないが、行く先名としては“シベリア”は漠然としすぎているうえに都市の名でも駅の名でもないので、「→ハバロフスク」か「→ナホトカ」でもいいけど、やはりシベリア鉄道起点の「→ウラジオストック」のほうが適切なのではないかと思う。ここは、“ナホトカ=新潟”のように、実際に航路があったあったわけではないので、どう書いてもいいという考え方なのか。
でんでんむしの記憶が正しいとすれば、掲示板を残すにあたって、「“ウラジオストック”じゃわからんじゃろー。“シベリア”に変えとけ」と、どこかの誰かの浅知恵が働いた結果、ということも考えられるが…。
それにしても、ちょん切られたレールが折れ曲がりながらもつながるその先には、のと鉄道の電車の写真が大きなパネルにしてあって、そこまでやるか!という感嘆しかない。
なくなった鉄道と駅の記憶を、とことんまで惜しみ懐かしむかのようなこうした形跡は、能登半島ではこれから先、内浦側にたくさんあるのだ。
▼国土地理院 「地理院地図」
37度24分20.60秒 136度53分44.91秒
北越地方(2015/09/12 訪問)
タグ:石川県
むかし航路があったということでしょうか。
by U3 (2015-10-19 11:57)
@なんでも計画は昔にあったらしいですね。でも計画倒れで、実際にはなかったようです。現在輪島からある航路は舳倉島航路だけのようです。
by dendenmushi (2015-10-19 14:37)