1263 通ヶ鼻=輪島市門前町皆月(石川県)クラゲのような形をした「神様岩」がある港も船も小さいが… [岬めぐり]
海岸線と皆月川沿いに民家が密集して軒を連ねる皆月(みなづき)は、五十洲(いぎす)よりはずっと大きな集落で、その北の端に小さな漁港がある。通ヶ鼻はその漁港の北西に突き出た細い岩の飛び出しである。
そこは南の小崎からも、五十洲の海岸からもずっと見えていたが、帰りのバスが出る夕方の時間まで間があり過ぎるほどあるので、小崎からの帰りの皆月から、さらに岬の上とその先まで地図では点線で示された細い道を行ってみよう。
港のコンクリート傾斜に引き揚げられている船は、どれも揃って小型なので、沿岸の漁業が中心なのだろう。漁港の防波堤には、軽を道路に止めたおじさんが一人釣り糸を垂れていたが、その道の脇におもしろいものがあった。
皆月漁業組合の小さな番屋の隣りに、丸い石が鎮座ましましていて、白い柵が囲っていて、脇に立つ石碑はそれが「神様岩」だという。
なるほど。そういう神様、貧乏神の代わりにうちにもきてくれんかな。
この逸話は、その地域での特定の分限者の誕生と、その地域の経済的支配者としての正当性を主張し、裏付けようとしたものとも考えられそうだ。
大型の漁船がたくさん停泊するような大きな漁港もないが、日本海側ではそのような場合でも北前船などが往来していたこともあって、漁業以外の海運回船関係の仕事が多くあり、それによって一定の役割を果たしている場所もある。
その例のひとつは、佐渡の宿根木(「番外:宿根木=佐渡市宿根木(新潟県)吉永小百合さんも行った千石船の里の風情と行けなかった新谷岬…」の項参照)でもみてきた。
わずかに顔を出している情報によると、幕末頃のここ皆月には水夫が80人いたというし、船長なども輩出するような、そういう土地柄だったらしい。
そういえば、皆月からの連想だが「海月」は「クラゲ」の当て字でもある。とくにミズクラゲが青い海にぷかぷかしているところなど、“海の月”とはまさに言い得て妙。
港から坂を上っていくと、「皆月青少年旅行村」というピカピカの立派な看板が、その下にベンチを伴って建っている。どうやら公の施設らしいが、青少年は学校で勉強中だからか、まったく人の気配もなく、ひっそりと静まりかえっている。
活用されているのかどうかわからないようなこういう施設は、全国どこに行っても各地域にあるようだ。ここは輪島市の施設なのか、キャンプ場が主体のようなので、3月から11月の間が開設期間とあり、管理人が昼間だけ常駐するのも夏の間だけらしい。
もう9月だから、半分閉鎖状態になっているのだろう。
通ヶ鼻へはそこから、海辺の細道を入って行かなければならないが、そこから南西には風の小崎が見える。
同じように海に向かって突き出ているのに、ここではさほどに強い風を感じない。
だが、皆月湾の海岸から見る通ヶ鼻は、白波を立てて押し寄せるうねる海の向こうにあり、その風を受けているはずなのだが…。
順光で見るのと逆光の下で見るのとでは、岬の印象も随分違って見えるものだ。
ただ、通ヶ鼻は岬としては大きくもなく、高くもなく、ただ岩の出っ張りが細長く突き出ているような感じなので、風もやさしく感じるのだろうか。
▼国土地理院 「地理院地図」
37度21分24.68秒 136度45分4.80秒
北越地方(2015/09/11 訪問)
タグ:石川県
コメント 0