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1240 仏崎=岩船郡粟島浦村(新潟県)「やす突き観音」が引き揚げられたのがこの岬だというのでこの名に… [岬めぐり]

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 今回の粟島の岬めぐりでは、島を一周する観光船「シーバード」からの眺めで追っているが、その他の方法としては、レンタサイクルかコミュニティバスという方法もあった。
 自転車は役場で貸してくれるし、もっと楽なほうのバスは、フェリーの粟島汽船が運行している。タクシーもない小さな島では、なんでも融通を利かせてカバーしている。バスには、二系統あってひとつは内浦と釜谷を結ぶ県道を走る路線で、島を横断する。もうひとつの路線は北回りの観光ルートで、島の北をぐるりと回ってくれる。残念ながら、運行ダイヤが限られているので、島での時間に充分な余裕がないと乗ることができない。そのバスが走る道路は、岬の高さと同じくらいのところを通っていることが、白いガードレールの線でわかる。
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 だが、それに乗れば、この仏崎や次の八ッ鉢鼻では展望台もあって、停車して景色を楽しむことができるのだ。とくに仏崎では、展望台からの眺めが素晴らしいらしく、新潟県の観光情報などにもよく登場しているし、粟島自慢のスポットらしく前掲の観光パンフの表紙を飾っているのも、どうやら仏崎展望台からの景色らしい。
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 どこかのサイトにあった仏崎展望台上のほうからの写真を見ると、確かに長手鼻から立島、切石ヶ鼻、エビスヶ鼻の岩礁の海岸風景が素晴らしい。それでほほうと思ったのは、地理院地図にはないエビスヶ鼻を、陸の上のほうから見ると何本もの立岩が林立しているような風景で、その塊を見ていると、そこが確かにその上に土をかぶせれば、立派な岬になると思ってしまう。
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 この仏崎は、岸壁だけがか細く飛び出たところで、さほど目立つものがあるようでもないが、その名前はありがたい。こういうありがたい名前の岬では、漁師が仏像を引き揚げたとかいう話が残っている場合が多いが、ここもまさにそれである。
 粟島に伝わる「やす突き観音」の話は、粟島浦村教育委員会発行の「あわしま風土記」三訂版によると、次のような記述があった。
 
 やす突観音
 波の岸御法の船の観音寺生死のみちをやすくわたせよ(巌谷一六)
 幕末、明治の書家で、童話作家巌谷小波の父一六は、粟島を訪れて観音を拝し、その霊験に感じてこの歌を残した。
 「粟島図説」には「観音寺の略縁起といふものに、本尊観世音の像何人の作なる事を知らず。打過るほどに、康保元年は今年天保壬辰迄ハ百六拾九年におよぶ。それより以前の事は考る処なし。また此略縁起は宝永五戌子春本縁を略記すとあり。」と書いたと、次のような記述がある。
 「此島の鎮守は八社神と号、祭神は知らず。社頭は前浜の上に有。又八幡の宮、弁財天の堂、観音堂もありて、本尊は十一面観世音を安置す。往古、海面夜な夜な光ありて数月に及ぶ。或夜、壱人の漁者小舟にとりのりて、其光の甚だしき処にうかがひより、魚叉を持て水底を探るにものあり。ヤスを引あぐれば観音の像浮び出づ。故に土人、魚叉突の観音といふ。又かの仏像を舟にのせて上陸せし処を、今に仏が崎といふ。」
 この観音像が海から引き上げられたのは、康和年間(1099~1104)であると伝えられており、仏崎は漁師も網を入れない聖地とされている。村人の信仰はもとより、北前船の往来したころには、船人達は船旗を持って必ず安全を祈願したものだという。
 昭和47年(1972)の県教委の調査で、この観音像は平安後期の作とされた。
 

 また、別の記録によると、海底に不思議な光を見つけたその漁師は六造という若者で、「良いものなら一やす、悪いものなら二やす。」の掛け声で、魚獲りに使うヤスを光に目がけて突き立てた、という。一突きで海底から上がってきたのは、人間ほどの大きさの観音像だったというのである。
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 内浦地区の観音寺に祀られているこの十一面観音像が、六造の船で陸に引き揚げられたところの岬が「仏崎(ほとけざき)」と名付けられたわけで、ここは今でも海草が生えず、漁の際にも網を入れない聖地、という。
 海草が生えていないかどうかは、船から確認できなかった…。また、断崖の岬は等身大の仏像を引き揚げるに適した場所とは思えないが、まあ岬の裾の浜なら可能、ということにしておくか。それに、仏崎の南からは逢坂山の南麓の峠越えの細い道があり、これが昔は西海岸と東海岸の往来の道であったと考えられる。とすれば、西海岸で引き揚げた仏像を東海岸に運ぶのも、さほどにムリな相談ではない。
 仏崎を回り込むところでは、もうすぐ次の岬の八ッ鉢鼻がその鼻を現してくる。
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▼国土地理院 「地理院地図」
38度28分30.91秒 139度14分17.68秒
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dendenmushi.gif北越地方(2015/06/29 訪問)

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タグ:新潟県
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