1170 大浦崎・仮宿崎=下閉伊郡山田町船越(岩手県)山田湾南岸の岬は美しい風景をつくっているが海に近い低いところは… [岬めぐり]
釜石線が1時間も遅れたために、役に立たなくなってしまった当初計画では、要所要所でバスを降りて海岸を歩いてみたいと考えていた。けれども、今回実際に訪れてみてわかったのは、とにかくどこの海岸もすべて、復興工事の真っ最中であり、部外者がふらふらと紛れ込んで歩けるような道は、ほとんどどこにもないらしい、ということである。
山田湾の南岸、船越半島の北岸には、手前に大浦崎、湾の南で先端にあたる仮宿崎があり、さらにはその回り込んだところに小根ヶ崎という岬もあるのだが、これは見えない。
大浦崎と仮宿崎の間にも、もうひとつ岬があるように見えているが、これは半島の中央に聳える600メートルの霞露ヶ岳の尾根が山田湾に向かって、複雑な地形をつくりながら降りてくるその先端で、無名である。
山田湾南岸では、大浦崎の陰に入江があって、そこに大浦漁港と集落が涸れている以外は、ほとんど無人の岸が続いている。車が入れる道路は大浦まではあるが、その先は100数十メートルの山腹に、一筋の山道がうねうねと仮宿崎と小根ヶ崎まで続いているのみである。
この岸が美しい形を保っているのは、そのためだろうか。岬の出っ張りがそれぞれ濃淡がきれいだ。
大浦の入江の口には、小さな燈浮標があって、その北には立神岩という立岩もある。伝作鼻や大島のあるほうの山田湾でも、湾の南岸付近でも養殖のためのブイがきれいにならんでいる。
「道の駅やまだ」からは、北へ行かずに東へ降りる道もあった。その入口には「鯨と海の科学館」なるものの看板とゲートがあって、ちょっとそっちへ行ってみようかとも考えたが、ダンプカーなどの往来が激しいので止めておいた。それらの施設も被災しているし…。
そちらへ降りてみても、伝作鼻は見えないし、大浦崎も足元にはいって陰になるので、メリットがない。
ただ、そこから南にかけてが、津波が渡ってきたという船越である。
「船越」という地名は、全国各地にかなり多いはずである。その多くはかつてはそこに船を通す水路があったか、または水路はなくとも船を引くか担ぐかして渡すことができたという地形の特徴によるものである。
低い峠になっているところもあるが、ここの船越は船越半島の付け根部分で、東西400メートル、南北1.3キロの低地帯で、池や水路がたくさん残されている。これをみると船越半島は半島というより島のようで、わずかに頼りなく船越でつながっているようだ。
「道の駅やまだ」から釜石へ向かうバスは、30メートルくらいの高いところを走るので、その様子はまったくわからない。おそらく、この谷間のような船越の上を、津波はいっぱいに広がって流れていったわけで、その通り道になってしまった船越一帯は高台を除いて壊滅した。その跡を車載カメラ映像で撮ってYoutubeにアップしている人が何人もいて、それをいくつか見せてもらって確認した。こういうのを見ていても、津波の威力のすさまじさと被害の大きさ痛ましさに胸がつまる。
地理院地図にある池や水路は、その津波の後にできたものなのだろうか。それとも前からいくらかは池や水路があったのだろうか。
これは、地理院地図の写真で震災前と震災後を比較して見ると、現在の地図にある池や水路は、津波によるものであったことがわかった。
丸いドームのような建物が、「鯨と海の科学館」の残されたものであるらしい。その向うには山田湾南部の海面があり、谷間の陸地はがれきも撤去された空地にはクレーンのようなものが立ち、車が何台も停まっているのがわかる。
これから先は、釜石まで、こんな調子でバスを降りることなく、すべて車窓からの眺めになってしまう。次は、山田湾の南に位置する船越湾である。
▼国土地理院 「地理院地図」
39.450596, 141.995214 39.481606, 142.035727
東北地方(2014/11/05 訪問)
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