1163 チャシコツ崎=斜里郡斜里町ウトロ西(北海道)“チャシ”の“コツ”だからこの名前になりました(わかりやすい!) [岬めぐり]
弁財崎から2キロ北東にあるのが、チャシコツ崎。この岬の名前由来は、はっきりしている。
2014年10月末頃の朝日新聞には、“最近北海道のチャシめぐりが人気”というような記事があったが、その“チャシ”であり、その意味は古いアイヌの祭祀や城塞的な集落のような役目をもつ、柵や環濠をめぐらせた施設のことである(主に道東)。ただし、現存するチャシはなく、あるのはすべてその痕跡なので、1973年以降になってやっと始まったという研究の歴史も浅く、まだまだわからないことが多い。それについては、根室の岬めぐりでも紹介したことがある。(アイヌとシャチとメナシ・クナシリのことなどは、たとえば「1022 ノッカマップ岬」の項 などでふれている。)
では、“コツ”はというと、その跡を示すという。つまり「チャシコツ」は、“チャシの跡”ということになる。この岬の上にも、かつて“チャシ”があったわけだ。“チャシ”を設けるにはピッタリである。
チャシコツ崎は、流れ下る尾根がいったん切れて、その先端にまたひとつ小山がくっついたような地形になっている。小山の上が平坦になっているようなので、そこが「チャシコツ」なのだろうか。
ここは、三方を海に囲まれた見事な出っ張りで、しかもおあつらえ向きにてっぺんが平らときている。
岬の先端がまた独特で、マフィンケーキをくっつけたような出っ張りがある。地図でみると岬の西側がちょっとしゃくれたようになっている、その部分が大きな岩塊と崖を演出していて、チャシコツ崎の顔をつくっている。
旧道は、この小山と尾根の切れるところの間を回り込んでいたが、現在ではその旧道は閉鎖されている。だが、閉鎖のやり方が応急的なものなので、臨時の措置なのだろうか。
トンネルで尾根の下を走り抜けるようになっている。このトンネルを抜けると、ウトロである。
尾根からずっと半島の分水嶺までいくと、そこには1,300メートルくらいの山脈が流れているのだが、その海寄りの部分は標高200メートルに満たない高原状になっていて、そこにはウトロ高原という地名があり、どうやら開拓地のような直線道路が走っている。その北に続く高台のウトロ香川は、ホテルや温泉やスキー場まである観光地になっている。
ウトロ高原は、ウトロからオシンコシン滝の上まで広く長く展開しているが、この地名の区切り方がおもしろい。通常、こういう海岸の地名は海岸線を区切りながら切り分けていくことが多い。ところが、ここでは台地状になっているところは「ウトロ高原」で、その下の海岸に至る斜面から海までは「ウトロ西」という地名が細く長く海岸を覆っているのだ。
前項でふれた、岬と人間の関係が、ここにも影響しているように思える。
岬の南側、弁財崎にかけては、海には白浪がたっていて、この付近に岩礁が広がっていることを示している。
岩礁そのものは、船の航行にはやっかいでも、こうした海岸近くの岩礁は多くの場合海の幸を恵んでくれる貴重な場所にもなり得た。「ウトロ西」が海岸線に沿って細く延びているのも、そういった人の暮し方と関係があったのかもしれない。
ウトロ高原とウトロ香川はまた、近年の新しい知床の暮し方のひとつの表われなのでもあろう。
さて、ここでまたまた気になることを発見してしまった。
どこが優れているのかしれないが、“GOOD DESIGN”マークをつけたMapionでは、チャシコツ崎南の海岸近くに、比較的大きな島がはっきりと描かれているのだ。地理院地図では小さな川の河口の北(地図の右上)で、岩礁がずっと広がる場所である。
あれれ!と思ってその南をみると、弁財崎のところにも大きな島がある(地図の左下)ではないか。しかも、弁財崎の形もまるで違うし…。オイオイ!!
住宅地図になりたい一心?のMapionが、地形図としての地図を捨てたことは、それでも地図というからには、もうちょっとちゃんとしてくれないと困ると、前々(2009年03月の(番外DB:「Mapion」がZENRINになってしまうなんて大ガッカリだよ!!(「岬めぐり」のためのネット地図比較検討考)以来)から指摘し問題視してきた。
その意見がまったく無視されたわけではないことは、その指摘以降、MapionがZANRINソースに切り変わってからはその存在を無視されていた、島々の輪郭と陸地表示の塗りを追加し始めたことで確認できる。(後から追加した島は色の塗りが異なるのですぐわかる。)
意見はムダではなかったのだが、いいかげんさはちっとも変わっていないようで、弁財崎のふたつ岩島も海岸の岩礁も、勝手に大きな島に描き変えてしまうという大胆さ!
まったく、この無神経さで堂々と地図を名乗っているのには、驚いてしまいますネ。(はい。今回は残念ながら是々非々の“非々”のほうですね。)
で、Mapionはいったい何を根拠にして(何を見て)こういうバカなことをやっているのだろうか。きっと、Googleかなにかの航空(衛星)写真を見ているのだろう。これも前に指摘していることだが、航空写真はその撮影の時間帯によって、その場所がそのとき満潮か干潮かでも海岸線の見え方が異なる。こんなことは、小学生でも知っているだろう。
たまたま、ここを撮影したときには干潮で、岩礁が水面の上に出ていた、というわけである。あるいは、高高度から見れば満ち潮でもその下に隠れた岩礁が見えることもあろう。
地図作成の基本のひとつは、陸地と海の線引きである。潮の干満で見え隠れする岩礁は、陸地とは違う描写法をとるし、岩場と砂浜では海岸線も違うのが当然だが、Mapionにはその意識も手法もなく、ただ線と塗りで陸地と海を分けているのだ。そのために、「文句言うヤツがいるらしいから、じゃ島を追加するか」というくらいの安直な気持ちでやればこういうことも起こるのだろう。が、いずれにしても、“地図をつくる”というプロ意識からはかなり遠くかけ離れている。それは、無料のネット地図だから許されるとか、OKだとかいうものではないと思うのだが…。
▼国土地理院 「地理院地図」
44.067557, 144.978154
北海道地方(2014/09/28訪問)
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