1162 弁財崎=斜里郡斜里町ウトロ西(北海道)「領海の外縁を根拠付ける離島の地図・海図に記載する名称の決定」でついた名に… [岬めぐり]
日本中に、いわゆる地形的にみた岬の形状を示す場所は、数えきれない。ゴマンとある。しかし、そこに名前がついて初めて、名実ともに「岬」となりうるのである。
では、どうして名前がつくのとつかないのとが混在するのか。どこかでなんどかふれたが、そこには人との関わり方が影響してくる。人がいない、人がまったく行かない、目立たないような場所では、地形的に立派な岬であっても名前もつかない。反対に、人が頻繁に往来するような場所で、なにかと目印が必要な場所では、地形的にはちょこんとした小さな出っ張りにも、ちゃんと岬の名前がつくのである。
そのことを、証明しているような場所のひとつが、ここオシンコシン崎からウトロ崎の間である。ウトロは東海岸の羅臼と並んで、知床半島ではもっとも人が集ってくる場所なのだ。
アイヌの名前に混じって、いかにも和人がつけたらしい名がある。弁財崎。
この岬の西沖合には、ウカウブ岩、ベンザイアサム岩と岩礁に名前がつけられている。岬や岩礁の名前は、船で航行する人にとっても重要だった。
“ベンザイアサム岩”というのは、弁財崎からついたのか、それともアイヌ語に“ベンザイアサム”があって、それに和人が“弁財”と嘉字をあてたのか、どっちだろうという疑問がわく。
調べてみようとしたものの、これがよくわからない。
ところが、別の意外なことがわかった。
記憶のいい人は、何年か前に日本中の沿海に散らばる無人島や岩礁などに、ひとつひとつ名前をつけることにした、という政府決定があったことを覚えているだろう。(「領海の外縁を根拠付ける離島の地図及び海図に記載する名称の決定について」平成21年総合海洋政策本部決定)
もちろんでんでんむしも覚えている。ただ、それは記憶がいいからではなくて、当然ながら政治的な思惑もありながらも、そのことが岬めぐりにも関わる関心事項だったからだ。
そして、それによって「地図・海図に記載する名称が決定した離島」のリストの14番目に、なんとこの“ベンザイアサム岩”があげられていたのだ。
ということは、それまでは名前がなかったか、あるいは地図・海図には記載されていなかった、ということになる。
そしてまた、“領海の外縁”という割には、ずいぶん岸近くのものも含まれている。
“ベンザイアサム岩”は、ほとんど目立たないが、その周囲には広く岩礁地帯が展開している。弁財崎の先にもふたつの岩島があり、そこから東にかけても岩場が広がっているようだ。
弁財崎は、そう高くはない尾根が三角にせりだしているところで、国道334号線は鋭角にこれを回り込んでいかなければならない。50メートルくらいの高さの切り立った先端の崖には、よく見ると金網がかぶせてある。
遠目には、そこだけ灰色に見えるので、セメントの吹き付け工事でもしてあるのかと思っていたのだが、近くに寄ってみればどうやらそれは落石防止用のネットであるらしい。
この崖は、道路を取り付けるために切り開いてできたものではなくて、もともとの尾根の先端が崩れたもののようだ。
岬の先端に近づいていくと、ふたつの岩島が道路脇からにょっきりと生えているように見える。これを写真に撮ろうと、カメラの手がまたにょっきりと…。これは、でんでんむしの手とカメラではない。(だとしたら、ちょっと不気味でしょ)
ここにもまたトンネル…、いや厳密に言えばこれはトンネルではなくて“覆道”と呼ばれるもので、要するに道路の上に覆いを被せたようなものだ。これも落石や雪崩から道路と車を守るためのものだ。
箱根駅伝のポイントにもなっている函嶺洞門の“洞門”も、ほぼ同義であるといってよい。
弁財崎のは名前の部分がはっきり読めないが、覆道なのだろう。
▼国土地理院 「地理院地図」
44.054389, 144.960558
北海道地方(2014/09/28訪問)
タグ:北海道
2014-11-06 00:00
きた!みた!印(20)
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