1146 殿崎=佐渡市虫崎(新潟県)海府トンネルの開通で忘れられていく運命にある岬も岩に丸太で橋を架けた橋掛岩も [岬めぐり]
内海府海岸には、北寄りに弁天岩というのが2か所あったが、崎も岬もこちらがわでは弁天さんには縁がないらしい。弁天さんどころか、全般に波も風も外海府に比べると静かなはずの内海府側は、意外にも集落自体があまり発達していない。
それは、もっぱら耕作地に適した場所が少ないという地形上の制約からのなりゆきなのだろう。でこぼこも少ないので港の適地も少ないが、代わりに林業などの生計の道はあったのだろう。
としても、やはりトンネルとトンネルに挟まれた虫崎地区は、昔は相当の覚悟がないと到達できない場所(舟で行けばまた別として)だったのではないかと想像できる。
虫崎と南隣の黒姫集落の間は、2.5キロも無人の領域が続いていて、かつてはそこを海岸の際につけられた細い道を渡っていたらしい。
三ッ石岩とか、殿崎、橋掛岩といった名は現代の国土地理院の地図にも残っているが、そもそも「殿崎」という名も、殿様が一本杉のあるそこで休んだので、そういう名が伝えられてきたものだ。
いつのどこのなんという殿様か…まではわからないのが残念だが、そういうことらしい。また、橋掛岩というのも、厳しい道中が迫られるなかでもそこは岩と岩との間に丸太を渡して橋としたところから、その名が記録されてきた。
もちろん、近年では道路もちゃんと整備されたであろうが、6年前の平成20年までは、その海岸沿いの道を往来していた。
現在では、虫崎の集落が切れるところから、大きなパイプをふたつに割ったようなトンネルの入口が口を開けて、車を飲み込んでいる。自転車レースの人と自転車も飲み込まれている。
これが内海府トンネルで、トンネル部分は1.8キロくらいはある。
このトンネルが開通したのは、2008(平成20)年も押し詰まってからだった。(近頃の公共工事は、大手ゼネコンと地元企業を下請けではなく組み合わせた共同企業体方式がとられていることが多いが、この工事を担当したゼネコンの大林組のページでは竣工が翌年の2009年となっていた。)
その10年前、平成10年には、南の黒姫地区で大規模な土砂崩れが生じて、長い間通行止が続いたこともあったらしい。
それまでも、全国各地で土砂災害は繰り返されてきたはずだが、平成26年の広島で起きた土砂災害以来、いっそうなにか危険が身近になったような気がする。それは、それが人気の少ない山の中や人口の少ない地方でのことではなく、ごくごくどこにでもある普通の市街地の、密集住宅街での被害だったからではないだろうか。
ま、ともかくめでたくトンネルはできて、以来、旧道は閉鎖され、三ッ石岩も殿崎も橋掛岩も見ることなく、トンネル内を走り抜けて行く。
虫崎からトンネルに入る前に、三ッ石岩とおぼしき小さな岩島が並んでいるのが、ちらりと見えた。殿崎はその向こうである。
▼国土地理院 「地理院地図」
38.24091, 138.503013
信越地方(2014/05/18訪問)
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