1132 大崎=佐渡市北狄(新潟県)海岸段丘の田圃が続く「尖閣湾」の北の端に飛び出た北狄の岬 [岬めぐり]
小川・姫津と二つの大崎鼻が続いた後は、今度は大崎。そこへは、北へ向かっててくてく歩き始める。次のバスを待っているわけにはいかないので、できるだけ歩けるところは歩いておく。
北北東に向いている真っ直ぐな県道は、人はもちろん車もときどき走ってくるぐらいなので、そのときだけ脇へ寄れば道路の真ん中を歩いていても平気だ。後ろからくる車は、音でわかる。
道路の右手はややゆるやかな斜面が山まで続き、左手はほとんど平地に近い段々の田圃が海まで広がっている。
きれいな田んぼの畦道は、大きめの軽トラが通れるくらいの幅は充分にあり、しかも佐渡ではせこせこしていないようで、畦にコンクリートを使っていない。本土の田圃の多くは少しでも収穫面積を増やすため、畦もできる限り細くしようとする。するとコンクリート畦が多くなる。それだと草も生えないし合理的ではある。
昔ながらの、土を盛った太い畦からは、草も生えまたそれを刈り取ってあり、なにか懐かしさがそこいらじゅうから沸き立つような気持ちになる。
こういう光景が、約1キロ弱続いている。これも典型的な海岸段丘のようだ。当然、田圃が終わるその先は断崖になっていて、ここも高さは25メートルくらい。
その崖のほとんどは見えないのだが、南では畦からも見える断崖もあった。これを見ていると、能登の弁慶の船隠しを思い出すが、これのもっと小さい海岸の切れ目凹みが、この段丘が終わる大崎まで続いているようだ。
前項で「湾はどこじゃ?」と言っていたその湾とは、こういう湾をいうらしい。
佐渡観光協会の「尖閣湾」の説明は、次のようにいう。
姫津から北狄までの約4kmの海岸に見られる、5つの小湾の総称を言います。特徴は、高さ約30mの絶壁で、世界一の峡尖美として名高いノルウェーのハルダンゲル峡尖に勝るとも劣らないことから、その名を直訳して名付けられました。この一帯は海中公園で、遊覧船や海中透視船で海の世界を楽しめます。海中を悠々と泳ぐクロダイの群れは圧巻です。
“尖閣諸島”の“尖閣”も、同じような意味なんだろうか、と思いながら地図を見ると、う〜ん確かにでこぼこはたくさんあるけどなあ。どれとどれを数えて5つなのかはわからない。そのでこぼこの沖にも、尖閣湾と表記してある。
観光協会の説明の「姫津から北狄までの約4kmの海岸」というのはその海岸のでこぼこに合わせて測ったものらしく、直線距離では姫津と北狄のふたつの集落の間は1.7キロくらいしかない。
“湾”というには、いささか…。「その名を直訳して」というのもよくわからない。ノルウェー語の“ハルダンゲル”というのにそういう意味があるということなんだろうか。
ま、それはともかく、ここに限らず海岸美は船から見ないとわからないわけで、ここでも遊覧船があるようだ。それだけでなく、大崎の出っ張りの南側の灯台があるところには水族館や公園などもあり、その先には、橋でつながった揚島という島があって観光地になっているようだ。
岬めぐりは、必ずしも観光地めぐりではない(むしろ、へそまがりはできるだけ観光施設は敬遠してしまう傾向がつよい。ごめんね、観光協会さん)ので、ここは通過して北狄の港のところから大崎を望む。
ここで高さは20メートルちょっとくらいなので、こういう断崖の凸凹が連続しているのが、尖閣湾なのだろう。
「北狄=きたえびす」という集落の名前もおもしろい。地理院地図では“狄”に“えびす”とふりがなをつけているが、この字は本来“てき”であって、そういう呼び方はないように思えるが、わざわざそういう字を当ててある。そのうえ“狄”一字にすでに「北のえみし」の意味が込められている。呼び方に字を当てたのか、字がさきにあったのか。なんとなくアイヌがらみのような…。
この字面をみるとすぐに「東夷北狄南蛮西戎」という熟語が浮かんできて、なかなか消えない。
北狄の港には、尖閣湾遊覧の船が何隻も係留してあった。こういうのもなかなか一人では乗れない。
ここ北狄で次のバスを待って、走り出したバスの車窓から後ろを見ていると、たちまち大崎は白波の峰の彼方へ消えてしまう。
▼国土地理院 「地理院地図」
38.095867, 138.249167
信越地方(2014/05/17訪問)
タグ:新潟県
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