1115 潮早岬=佐渡市犬神平(新潟県)一帯は黒い火山岩がでこぼことどこまでも続く南仙峡の岬で [岬めぐり]
小木から西へは、琴浦、宿根木、小木強清水、犬神平、深浦、そして沢崎と続く佐渡西南端部の海岸線は、いかにも巨大地震による地形の変化を留めているようである。あちこちに小さな谷と入江が刻み込まれ、古い火山活動でできた枕状溶岩を含む黒い岩がごつごつでこぼこと続いている。
とくに犬神平付近の海岸線は、南仙峡と名づけて、その風光を珍重したようだ。そういう地形だから、道路は海岸から遠くはなれているのだが、宿根木線というバス路線が、本数は少ないがいちおう走っている。沢崎にいちばん近いところで宿泊施設があるのは、強清水(弁天岬のあった東強清水と区別するためにこちらは小木強清水)までである。
バスは大きい道路から南にそれて、強清水の民宿の前まで入ってくる。おそらくは、新しい道路ができるまでは、これがメインの道路だったのだろう。
民宿に泊まった朝、海岸に出てみると、西へ遠く続く黒い海岸が望める。
このいちばん奥が、潮早岬になる。
犬神神社を奉る犬神平の集落は、県道45号線から山のほうへ谷に沿って固まっている。道路脇には、この付近ではあまり見ない小さなバス停の待合所のようなものがある。覗いてみると座るところもないし、立っても大人数人が入ればいっぱいになる狭さだ。
バス停といったって、もともと一日に3、4本しかないのだし、集落の人はみんなクルマだろう。ここは、バス停としてよりももっぱら集落のコミュニケーションセンター伝言板の役目のほうに重きがあるようだ。
犬神平のなんとかさんは、たらい舟で漁に行ってるらしいな、いつ頃帰るようだというのを、お互いに連絡しあうようになっている。
集落から道路を横切って海に下る道を行くと、そのたらい舟が伏せてある。これが観光用ではない、実際に使われているたらい舟だ。なるほど、観光用のよりはだいぶ小さい。
この付近の海岸線は、入り組んだ岩礁と浅瀬でできているので、船も小舟でないと近寄れない。ワカメやサザエにアワビなど、岩礁地帯での漁には、船底が平で、小回りがきいてどこにも入っていけるたらい舟による“磯ねぎ漁”と呼ばれる漁が、受け継がれているのだ。
この漁法は、船の上からヤスなどを突き出し、箱メガネで海中を覗き込みながら獲物を探して獲るもので、佐渡だけでなく、全国各地各海岸で似たような方法が取られている。その呼び名が、地域によって違うだけなのだ。
でんでんむしの地元の湘南の海岸でも、“みづき漁”という名が残されている。この漁では、操船にコツがいるだろう。まして、手はヤスとメガネでふさがっている。残るは足だ。これで櫓を操る、と聞いたことがある。
小さいたらい舟には手や肘がすぐ届くところに櫂もある、その点でも利点があるのだろう。
その下のほうには、やはり黒い岩の潮早岬の海岸が見えてくる。
この道路も、犬神平の人々が漁に行き来するためのもので、海岸には船着場があるだけだ。道路のかなり上のほうまで引き上げてある漁船もある。
朱色に塗った燈明台もある。
後で考えてみた結論(というか推論)だが、これは観光用の飾りなどではない。だいたい、こんなところまでやってくる観光客はいない。おそらく、ここで漁をする人々にとって、必要欠くべからざる目印なのだろう。
南仙峡一帯は、人家もなく、暮れてくると黒い岩の海岸では、ただ白い波だけしか見えないのだろう。
「日本の地質百選」にも選定されているという佐渡小木海岸の南仙峽では、主に玄武岩や粗面岩といった火山岩からなる黒い海蝕崖が連続している。大きな庇ができたようになっている岩の窪みは、対岸の越後の角田岬で撮った写真を思い出させる。あっちのほうがずっと規模が大きかったが、海峡を挟んでも地質はつながっている。
▼国土地理院 「地理院地図」
37.811247, 138.215361
信越地方(2014/05/16訪問)
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