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ミサキの神の美崎御嶽をはじめ石垣島にもたくさんのうたきがそこらじゅうに(35) (石垣島だより シーズン2) [石垣島だより]

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 石垣市の官庁街というほどではないが、登野城の石垣税務署と那覇地方裁判所・検察庁の間に美崎御嶽(みさきうたき)はある。石垣牛の店と民宿と鍵屋とコンビニと学習塾とアパートと民家と合同庁舎の建物に囲まれている敷地は、かなり広い。しかも、島では一等地である。
 登野城のこの辺りは、昔は海から見るとやはり山のように見える場所だったのだろう。美崎山と呼ばれていたここに、大美崎トウハの神に航海の安全を祈願する御嶽ができたのは、琉球王朝尚真王(1477年〜1527年の50年にわたり在位)の頃だというから、ちょうど1500(明応9)年のオヤケアカハチの乱を平定して、八重山諸島を王朝の版図に組み入れた時期にあたる。
 したがって、その由来も琉球政府軍の船の航海安全を、神女が祈ったところから始まり、王府から派遣されてくる役人の離着任時や公の農耕儀礼の場所でおおいに政策的な公儀の意味をもっていた。それが、時代が下るにつれて、字大川の村の拝所となっていく。
 県指定の史跡と重要文化財になったことを記念して建てられたらしい、県と市の教育委員会の石碑が語っていないことには、週刊誌的、ニュースショウ的な興味では無視できないことがある。
 オヤケアカハチに対抗していた長田大主には、二人の妹があった。下の妹の名が真乙姥(まいっぱ)、上の妹の名を古乙姥(こいっぱ)といった。この美崎御嶽で王府軍の船のために申し出て祈った神女というのは、その下の妹のほうであった。ところがその姉のほうがアカハチに嫁いでいたので、夫と共に誅せられてしまう。
 そのため、王府軍は真乙姥の心からの申し出を信用せず疑ってかかる。そこで、「兵船が一艘たりとも遅れたりすることあらば曲事たるべし」とかえって嫌味な条件をつける。真乙姥は、この後に八重山初代の大阿母になる多田屋オナリなどの助力と神徳を得て、無事に兵船は帰着することができた。琉球王朝は真乙姥を八重山の大阿母(聞得大君きこえのおおきみ=最高位の司)に命じようとするが、真乙姥はこれを固辞して神職につく。これ以降八重山の神も聞得大君の神道に統一されていくことになる。
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 御嶽は“うたき”のほか、“うがん”、“おん”などとも呼ばれ、その周囲は低い石垣で囲まれている。その中には拝殿に当たる神棚を備えた吹き抜けの小屋があり、その奥にまた石垣で囲まれ、石門で区切られた中心部はウブと呼ばれ、神を招く場所である。そこには神女や霊力をもつ司と呼ばれる女性でなければ入ることができない。
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 本来は、集落の者以外は外側の石垣から中へ入れないとされていたくらいで、神聖にして侵すべからざる場所なのだ。でんでんむしも最初に御嶽を訪ねたときは恐る恐るという体で遠慮をしていたが、だんだんと市街化が進むと公園と一体化したり一部が駐車場になったりする例もでているようだ。
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 周囲には大木が枝を茂らせ、幽邃な雰囲気を醸し出している。美崎御嶽の向かって右側の大木は、根が板根になっているので、サキシマスオウノキなのだろうか。それが、こんなところに…?。(後でわかったが、板根になるのはサキシマスオウノキだけではないようだ。)
 こうした御嶽は八重山でも同じような形式でもっと古くからあり、村々よりももっと小さな単位でつくられたものと思われる。それぞれに由来があるらしいが、美崎御嶽のように神女の司が神に祈った場所が御嶽になるというのがどうも一般的らしい。
 石垣市の市街地を歩くだけでも、規模や様式もさまざまだが、至る所とはいえないまでもそこここにそれはある。
 ここでは、石垣の長田御嶽、新川(あらかわ)の長崎御嶽、それに白保の波照間御嶽の写真を紹介しておこう。
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 町中の長田御嶽はホテルと保険会社のビルの間に挟まって、肩身の狭い思いをしながらそれでも消えることはない。
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 周囲の大木が見事な長崎御嶽だが、この木が石垣市の木クロキなのだろうか。なんとなくそんな気がする。
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 波照間御嶽では、拝殿にウブを覗く丸い窓が開けられているが、これも代表的様式である。
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 なんで白保に波照間御嶽が? これにも実はふかーいわけがある。“明和の大津波”で、全村ことごとく流されて人も尽きたとき、村の復興と存続のために波照間島から住民が移動してきた。白保の先祖は波照間にあったからだ。
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 どの御嶽でも、まず鳥居が目につくのだが、御嶽は神社とは似て非なるものというべきだろう。でんでんむしは、これは戦時中の皇民化教育と国家神道の威勢によるもので、もともとは門のような何かはあったろうが、こういう神社そのものの鳥居は後からくっつけたものだろうと思っているのだが、どうなんだろう。
 では、琉球弧の神はいったいなにかというと、これがなかなかよくわからない。天にも海にも山にもいて、名前もひとつではないからあらゆるものを超越した存在として拝むもの祈るものであろうか。
 古い資料では、やはり天地開闢(かいびゃく)説がある。キリスト教の生誕神話や天地創造、古事記の国生み神話とまったく似たものなので、これもそういうものから脚色された可能性が大である。ここでも男女二神から始まるがお互いに離れて住み、風によって孕むという処女受胎まであるのだ。
 もともとは久米島の風水師が大陸からこういう様式を持ち込んで、琉球弧の各島に広まったとされる御嶽だが、これを中心として島に今も盛んなさまざま行事や祭りや習俗が伝えられてきた。エイサーもペーロンも奇妙なお面をつけて踊る祭りや綱引きなども、春と秋の二回の穂利(ブーリ)豊年祈願にからんできたものだろう。
 農地も少なく、痩せた土地が多い島で、ひたすら農作にからむというのも一見すると変だが、だからこそなのだという説がある。貧しく辛い暮らしだからこそ、海の彼方の世(ユー)に憧れ、弥勒世(ミルクユー)の到来を島が渇望し、その願望がいろいろに祭式化されてきたのだという。
 なるほど、そうかもしれない。
 でんでんむしは、それに加えて先祖崇拝と地域共同体意識が大きな中心になって、それらが渾然一体となって島々の伝統行事と風習を育んできたのだろうと思う。だが、女系で引き継がれる司の伝統も、女性が嫁すればその役目を負う家は変わる。御嶽を守るべき司が絶えてしまったものか、美崎御嶽から遠からぬ海岸寄りにはこんな御嶽もあった。
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dendenmushi.gif沖縄地方(2014/01〜2 訪問)

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タグ:沖縄県
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きた!みた!印 33

コメント 2

うつぎれい

こちらのページにはまだ誰もコメントしてないようなので、ちょっと長いのを書かせてもらっちゃいます。

浜崎の2つの浜の話と共に興味深く読ませて頂きました。うたきとは御嶽と書くのですね。私は東京奥多摩の御嶽山からの連想で「みたけ」と読んでしまいました。

私は生まれて以来、中学の修学旅行を含めても東京から外には5回くらいしか出た事が無いというほどの旅行嫌い ( 自宅以外に泊まるのが嫌い ) なので、グーグルマップでしか東京の外の世界を知りませんが、でんでんむしさんの岬めぐりはそれを実感をもって補強してくれるようなブログですね。改めて読んでみると落合町誌さんと世の中を見る視線が似てる気がして、交流があるのも尤もだと納得させられました。

グーグルマッブと云えば、最近その航空写真機能の海底地形図で海没したアトランチスの痕跡 ( アゾレス諸島の間 ) とか、マデイラ島の西南西700キロにある矩形の海底都市遺跡らしきものとか、幾つか奇妙なモノを見つけてしまったので、今回のリンク先にはそれらを纏めたページを入れときますが、現在、私は主に有名なUFO事件の発生した場所などを中心にグーグルのストリートビューで訪ね歩いています。

下はグーグルアースや航空写真やストリートビューを使ってここ数ヶ月で訪れたことのある場所のリストです。

サンノゼ ニューヨーク ( ハーレム地域 ) ラスヴェガス サンタフェ ロスアラモス
アルバカーキ ロズウェル ヒーバー バリンジャークレーター ファーミントンの円形農地
サンマリノ公国 ムンバイ スラト ローマ バチカン パリ リヨン ブールジュ
オアフ島 ラナイ島 スリナ ( ルーマニア ) カイロ ( ギザのピラミッドとスフィンクス )
ロンドン ケンジントン公園 エイムズベリー ストーンヘンジ バッキンガム市
メッカとカーバと砂漠地帯の円形農地 ( サウジアラビア ) 上海のサイバー攻撃拠点周辺
キンバリー鉱山跡 ストックホルム ヨンコピン 岐阜県中津川市 ダウラギリ ムスタン
チェラビンスク キシュティム村 ファティマ タリファ ( ジブラルタル ) ケルキラ島
イスタンブール ロシア・ボビガイクレーター ビリュイ川源流地域 ( ロシア・サハ地区 ) 
トロムセ市 レイスター市 ( イギリス ) 九州長崎市 軍艦島 彦島 巌流島 九十九島
ドバイ アブダビ バンコク パーヌルル国立公園とアーガイル湖 ( オーストラリア )
ベネズエラ高地地方とエンジェルフォール ラパヌイ島 ( イースター島 ) ナスカ地上絵
アタカマ高地砂漠 オンタリオ湖コーバーグ ( カナダ ) バンクーバー島 ( カナダ )
ティオティワカンとその周辺 ポポカトペトル山 ( アトリスコとプエブラからの眺望も )
レーニア山 ニューポート グルームレイク ( エリア51 ) プレスコット フェニックス
セドナ メキシコシティ グアダラハラ サカテカス メテペック クスコ ピスコ
ティワナク カラササヤ神殿 テキサス州スティーブンビルと隣接するダブリンの町
ロシア プリヤート共和国ゴリャチンスク村 ドイツ ( リースクレーター ) ネルドリンゲン市
ルーマニア ( マラムレシュ ) サプンツァ村 ドナウ河流域全域 アカンバロ ベリーズシティ
チュクシュルーブ村 アンドラ ルルド カルカソンヌ クレルモンフェラン テヘラン
南極ウェッデル海とクインモードランド ( ノイシュバーベンラント ) 明智町大正村 ( 岐阜 )
遠山郷 ( 長野県飯田市 ) フェルナンド・デ・ノローニャ島とロカス環礁 ( ブラジル東端 )
エレガンテクレーター ( メキシコ ) セントヘレナ島 マラウィ ビクトリア湖 タンガニーカ湖 ンゴロンゴロクレーター トリスタン・ダ・クーニャ諸島 
コフ島 沖の鳥島 北大東島 南大東島 沖大東島 西之島と2013年の新島 南鳥島 
アゾレス諸島 ( サンミゲル島・テルシラ島・クラシオーサ島・ファイアル島・ピコ島とフローリース島・コルヴォ島など ) ブーベ島 ( 亜南極 ) ヤンマイエン島 ( 北極圏 ) スパールバル諸島
オークニー諸島 シェトランド諸島 神宮前5丁目の歩道橋と4丁目のカフェLa Shou Shou
ピエルン島とホーペン島 ( バレンツ海 ) アルタ市とハンメルフェスト市 ( ノルウェー )
ルイス島 ( 外ヒブリディース諸島 ) ダグラス市 ( マン島 ) ネス湖 バガン ( ミャンマー ) サーペント・マウンド ( オハイオ ) 1897年にUFOの落ちたオーロラの街 ( テキサス )

等々です。

by うつぎれい (2014-02-11 22:50) 

dendenmushi

@うつぎれい さん、御嶽は「おんたけさん」のように山の呼び名であることは事実です。それも御がつくだけ尊い山を示していると考えていいのでしょうね。
石垣の御嶽の伝説では、やはり山から始まっていて、於茂登山(沖縄最高峰です)に降りた神を、麓の4つの集落が御嶽をつくって迎えるという話があります。
地図での旅行も、また楽しいですね。
落合町誌さん(落合道人のChinchikoPapaさん) と世の中を見る視線が似てるとは、うれしい褒め言葉ですね。ありがとうございます。
by dendenmushi (2014-02-13 08:15) 

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