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1051 タン崎=長崎市蚊焼町(長崎県)「蚊焼包丁」の産地は湾に向かう斜面に展開する大きな集落で… [岬めぐり]

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 夫婦岩や網掛岩のある以下宿町、黒浜町を過ぎると、北へ向かう国道499号線はどんどん勾配を登って行き、みるみるうちに道路は海岸からはるかに高いところを走っている。わずかに見える下の海岸は、岳路(たけろ)の海岸で、岳路海水浴場入口というバス停もあるが、ここから下の海水浴場まで降りていくのも(また帰りに登ってくるのも)なかなか大変そうだ。
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 この岳路からは、長崎市蚊焼町(かやきまち)になる。そこからしばらくはまた山の中を走り、次に視界が明るく展望が開けるのが、蚊焼の中心集落である。
 町村合併促進法に煽られて、(昭和30)年に川原(かわら)村・為石(ためし)村・蚊焼村の三つの村が合併して、三和町ができたことは、前にもふれたとおりだ。長崎半島を横断して東西の海岸を結ぶひとつの町になったわけだが、これらの村の共通点は、かつては佐賀藩領だったということである。蚊焼から北に続く深堀もそうだったから、長崎半島の中央部は佐賀藩領が天領を分断していたことになる。
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 こじんまりとした湾を見下ろす斜面に、結構大きな集落が展開し、湾の左右にそれぞれ岬がある。まず、左手(西寄り)にあるのがタン崎である。
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 蚊焼の集落を見下ろす国道から、北寄りの狭い急傾斜の道を降りて行くと、家々の屋根の間に徐々にタン崎が沈み込んでいく。
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 「1043 年崎」の項 で書いたように、「包丁で知られる蚊焼」は、ただうろっと集落を一周りしただけでは、まったくわからなかった。けれども、ネットで調べてみると、現在でも三軒の刃物屋さんがホームページを設けていることがわかった。そのひとつ、桑原鍛冶工房のページ によると、

 蚊焼鍛冶は江戸時代に始まりました。当時の刃匠、吉田左馬之助直種の弟子が、刃物の焼入に適した蚊焼の水と焼刃土(刃物の焼入にかかせない土)を利用して、良質の刃物を作り上げました。
 以来、長崎開港とともに南蛮刃に技法を取り入れ、「切れ味」に「粘り」を加えた、他に類を見ない良質の刃物を作り出し、現在に至っています。
 隣の深掘藩に刃を献上していたと伝えられています。

という。また、
 
 さて、カヤキ包丁の評判の一つである粘りは、焼き入れと焼き戻しの工程によって生み出されていきます。
 焼き入れは800度という高温で溶かした鉛の中に鉄を入れるため、鉄に鉛が付着して後まで残ってしまいます。そこで、このような水で溶かした泥を塗って一度乾燥させたものを鉛の中に入れることで、鉛の付着を防ぐことができるのです。この泥こそが、焼き入れに必要な土。蚊焼の土なのです。

と蚊焼の特徴について述べている。
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 もちろん、この蚊焼の土のように、ブランド化するにはある特定の条件も必要だっただろうが、「村の鍛冶屋」という童謡があったように、一般の日用雑器のなかでも、包丁など打刃物に限らず、鋤や鍬や鎌から鍋釜に至るまで、生活に欠かせない鉄器生産は、かつてはかなり広く地産地消的に行なわれていたと考えてもよいのだろう。
 高度な技術を要する打刃物については、現在まで各地にその名と伝統を守って伝えられているが、岬めぐりでこれまで訪問したところでは、「番外:柏原と小林一茶記念館」の項 で信州打刃物についてふれたことがあったのを思い出す。
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 民家の間を抜けて海岸に出ると、そこも防波堤で囲まれた道路が取り巻いている。タン崎の手前からも湾を守る防波堤が突き出しているが、その向こうに遠く見えるのは伊王島である。また、タン崎の向こう側にも黒島などが浮かんでいるが、ここからは陰になる。
 防波堤には、ペーロンの絵が絵が描かれている。これは漕手も多い本格的なやつだ。
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 ペーロン競漕は、全国各地に広がって定着しているものもあるが、それらも沖縄などを除けばだいたいは長崎起源といっても差し支えないのだろう。当然、地元長崎では半島の各地域にもそれぞれのペーロンがあって、なかなか盛んなようだ。
 この岬めぐりで、ペーロンがすぐに思い浮かぶのは、まず「048 金ヶ崎・万葉の岬=相生」 であろう。
 
▼国土地理院 「地理院地図」
32.655849, 129.811259
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dendenmushi.gif九州地方(2013/11/03訪問)

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タグ:長崎県
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