1048 口ノ鼻=長崎市野母崎樺島町(長崎県)遠目の雨中で霞んだ写真しかないがここが長崎半島の最南端で… [岬めぐり]
旧野母崎町(のもざきちょう)の各地域は、平成大合併で長崎市になって、長崎市脇岬町のように表示が変わったが、樺島町だけは“長崎市樺島町”ではなく、“野母崎”がくっついたままである。駅名と同じで、同名の町がほかにある場合はかぶらないようになにかを加えた表示になるので、ここも野母崎のほかのどこかにもうひとつ、別の樺島町があることを意味している。
探してみると、それは長崎市の中心部、大波止交差点の北東に位置する小さな一角であった。文字や映像情報によってしか知らない、長崎の伝統の祭りおくんちでは、この小さな樺島町がかなり重要な役を負っていることがわかった。
なにしろ、この町の奉納踊り「コッコデショ」の担ぎ手を決める選考会には、全国各地から力自慢が集まるという。太鼓山というそれは、大きな座布団を何枚か重ねたようなものだが、この祭りの類似系は西日本の海岸線に広がっている。重さ1トンもあるこれを、空中に投げあげそれを片手で受け止めるという。
プロ野球の中継で、外野スタンドの観客が「モッテコーイ!」というプレートを掲げたり叫んだりしているのを、ありゃなんじゃろかどこのことばやねんと、でんでんむしはなにか落ち着かない違和感を感じて見ていたのだが、ついでにその“語源”?が判明した。
これもどうやら、長崎くんちの掛け声らしい。意味は“アンコール”というのだそうだ。つまり、球場で使うのは「もう一本」というのと「ここまで(ボールを)もってこい」という気持ちかららしいが、意味がわかってもやっぱりしっくりこないなぁ。(カープファンは、あまり真似しないようにしてもらいたい。)
さてこの項のテーマは、野母崎樺島町のほうで、その南端にあるのが口ノ鼻。
クチなのかハナなのか、ここの地形と合わせて考えてみると、ひとつの推測が成り立つ。
一周すると8.3キロというこの島は、南北に流れをもち谷筋がそれにともなっている。100メートルくらいの山が連なる島には平地はなく、周囲は断崖が多く、とくに東海岸には甲ノ瀬、一ッ瀬、桃瀬、甑瀬、貝瀬という岩礁地帯が取り巻いている。そして、口ノ鼻がある岬の上は行者山という急峻な尾根になっていて、その西が大小の尾根に挟まれた谷間になっている。
その入口には唐人瀬がある入江は、かつてはもっと深かったようだ。
その入江こそがクチで、その東の先っちょがハナだったのではないか。
これらはみんな地図を眺めながらの想像だが、唐人瀬という名は、ここに出入りしていた船には外国船があったことを示してもいる。
風よけの避難港として、あるいはひょっとしたら密貿易の基地にも使われたのかもしれない。二つしかない島の入江は北と南で表と裏の役目を持っていたのかもしれない。
想像が広がりすぎた。だが、地図を眺めて空想を広げるのも、こういうケースではやむを得ない。
現在の地図ではすっかり閉じられてしまっているが、地理院地図では水域の表示を残すとともに「地下ダム」と記している。
なんと、ここには1970年代の初め頃に、日本で初めての「地下ダム」があったのだ。いわば、障壁を埋め込んで地中の土壌に地下水を貯めこみ、ポンプで汲み上げるというものらしい。今、ここでは緊急用くらいしか実用性はないようだが、離島の水対策など技術用途はもっと広がる可能性をもっているのではないか。
口ノ鼻とおぼしき付近は、実際にはもっぱら雨の脇岬町の海岸を走るバスの車窓から遠目に眺めるだけに終わったので、やっとその輪郭がわかる程度でしかない。
島だけれど陸繋島なので、とにかくここが長崎半島の最南端になる。
▼国土地理院 「地理院地図」
32.549409, 129.775611
九州地方(2013/11/03訪問)
タグ:長崎県
「地下ダム」の存在を初めて知りました
by ハマコウ (2013-12-22 06:40)
@わたしも知りませんでした。でも、長崎では五島だったかな、ほかにも島であるようです。
この名前は、地下にプールのようなものがあるのかと錯覚してしまいますが、そうではなくて、土壌のなかに水を蓄えるというのがおもしろいですね。
by dendenmushi (2013-12-23 07:50)