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962 砂糠崎=神津島村砂糠山(東京都)“石言葉は摩訶不思議”という黒曜石の帯が取り巻く岬を回る [岬めぐり]

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 横瀬鼻の南付近から続いていた海岸の断崖に明らかな黒い帯は、砂糠崎(さぬかざき)ではいっそう顕著になる。白い流紋岩の層に挟まれるようにして、岬の周りをぐるりと取り巻いているこの黒い帯状になった層こそは、きっと「黒曜石」なのではないだろうか。
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 数メートルの厚みをもった、なかなか見事な黒曜石層を見るのは、初めてである。流紋岩では右往左往で一苦労したが、黒曜石についてはWikipediaはこういう。
 
 化学組成上は流紋岩(まれにデイサイト)で、石基はほぼガラス質で少量の斑晶を含むことがある。流紋岩質マグマが水中などの特殊な条件下で噴出することで生じる。
 
 つまり、流紋岩がマグマ状態の時に、ある特殊な条件のもとに噴出するときに生じるのが黒曜石なのだというのか。それで、流紋岩の層に挟まれているのはなんとなく納得がいく。だが、どういう状態の時ときにそうなるのかがわからない。おそらく流紋岩が白くならずに黒いガラス質になってしまうメカニズムは、きっと見ても聞いても、そう簡単にわかるような、そういうものではないのだろう。
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 花に“花言葉”があるのなら、石に“石言葉”があっても、おかしくあるまい。というわけで、誰がどのようにしてつくったかはわからない“石言葉”によると、黒曜石のそれは “摩訶不思議” なのだという。
 なるほど、とそれにはなんとなく納得してしまう。
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 黒い色のガラスの塊のような黒曜石を見ていると、その色にも光にも、つやつやのなめらかな剥離面も、その端の尖った鋭利な刃先も、どうしてこんなものが生まれてきたのか、不思議というほかない。
 神津島では、この砂糠鼻と西に4キロほどいったところにある恩馳島(おんばせじま)で、この黒曜石を産出するが、こういう特定の条件を備えた場所は限られている。それでも日本中で探すと、70か所を超える産地があるというが、良質なものが出るところはそう多くはないようだ。
 なかでも有名どころには、北海道白滝(「番外:地層切断面」の項 で、日本ジオパークのひとつとして紹介した)や、国の天然記念物に指定されている大分県の姫島の黒曜石などがある。
 「951 利島」の項 では、村のホームページで、「縄文時代から神津島の黒曜石を搬出するための中継地であった」、としていることを紹介したのだが、実を言うと、でんでんむしはそれを読むまで、神津島の黒曜石のことは考えていなかった(何かで読んだのだろうが完全に忘れていて意識になかった)のだ。
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 それで、思わず唸ってしまったが、そのときにも例によって ChinchikoPapa さんからコメントで、「神津島の黒曜石は関東各地でみつかっている」と教えていただき、またひとりで唸っていたのだ。
 う〜む!
 なぜ、黒曜石は神津島・恩馳島だけにあり、同じように流紋岩でできているはずのコーガ石の新島や式根島にはないのだろうか。これがまた黒曜石誕生の摩訶不思議なところなのだろう。
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 相模湾から太平洋に延びる富士火山帯の海嶺では、神津島・式根島・恩馳島から銭州の岩礁が銭州海嶺というグループで、大島・三宅島・御蔵島・八丈島・青ヶ島の帯とは、別のものだという。地図では、大島から神津島の並びが一塊で、三宅島から八丈島の並びが別のように見え、東海汽船の航路もそれによっているように見えるが、それがわかったうえで改めて地図を見ると、大島と新島の間が切れているように思えるのも不思議だ。
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 だが、海嶺の繋がりを知らなくとも、島から島へ、飛び石伝いに行けば、確かに高度な航海術を知らなくとも、舟も粗末な丸木舟であっても必死に漕いで神津島の黒曜石を運び出すことは、充分可能だったのである。
 神津島から湘南海岸の、たとえば大磯の海岸までは、123キロメートルの距離である。紀元前2万年の後期旧石器時代から、その距離は変わらない。
 この黒曜石の辿る海上ルートをもって、日本人の起源を南方の海上からに求め、その最初の足跡を伊豆諸島とする説もあるらしい。それは別としても、後期旧石器時代から縄文時代にかけての気が遠くなるような長い間、この島の黒曜石は関東各地に運ばれ、数少ない有用な道具として使われてきたことは間違いない。
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▼国土地理院 電子国土ポータル(Web.NEXT)
34.204895, 139.175076
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dendenmushi.gif関東地方(2013/03/23〜24訪問)

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