949 千波崎=大島町野増(東京都)三原山の南西裾野の緩斜面の行き着く先では伊豆諸島展望台も見当たらず… [岬めぐり]
波浮港ラインの路線バスは、当然観光客ばかりではなく、地元の人も利用する生活路線だから、結構乗客は多かった。だが、地層切断面というバス停で降りたのは、でんでんむし一人だけであった。間伏を挟んで差木地の集落はまだ5キロ近くも先で、あたりには人家もない。
こんなところで降りるヤツは、よほど酔狂なへんなヤツに決まっている。そんなバス車内からの視線を感じながら、降りたところで地層を見上げると、そういえばここにバス停があること自体がなかなか偉大なことのように思えてきた。
その偉大なバス停の、写真を撮るのを忘れてきたが、ここで降りたもう一つの目的は千波崎にある。
地層や千波崎がある野増(のまし)も、三原山のカルデラをもすっぽりと包含した島の南西部の広い地域を指している。あるいは、三原山を挟んで反対の北東側に広がる泉津地域よりも広いのかもしれない。
「野」と「原」は、「野原」というように、ほぼ同じように使われているが、もともとは「原」だけが広い平野のような平らな地形を意味することばであった。
「野」はカタカナの「ノ」で示される形のように、山の裾野、山の麓の緩傾斜の地を意味する日本語であり、これに「野」の字を当てたのは、はじめから精確ではなかった、という。(樋口忠彦著『日本の景観』ちくま学芸文庫)
してみると、「野増」の名もなかなかに含蓄がある。三原山の外輪山から流れ出した溶岩が、最初は急傾斜で、それから徐々に緩傾斜になりながら、海に向けて広がっていった…そんな様子を想像できる。
その「ノ」の先っちょが、千波崎である。長い海岸線のほぼ中央にあって、西海岸のほぼ南端といってもいい位置に突き出ているが、都道からは離れて飛び出しているこの岬の周囲は木々に覆われていてなにもない。
少し高くなっている地層切断面の道から、その岬のほう西方向を見ると、手前に一軒だけ建物の屋根が見えるほかは、灯台もなければ展望台もない…と思ったら、大島バスの“島めぐりマップ”では、そこに“伊豆諸島展望台”という表記があった。
地図では都道からの迂回路が示されているが、岬へ行く道はない。こういう場合でも、行ってみるとちゃんと岬へ向かう道があったりすることもあるので、それと“伊豆諸島展望台”を期待して行ってみるしかあるまい。
そう考えて、2.5キロの道をぐるりと歩いてみたのだが、やっぱり岬へ行く道はなく、しかも“伊豆諸島展望台”などはどこにも影も形もない。
後から考えてみれば、それはただ単にバスが通る道路脇のことだったのだろうか。
後から考えてみれば、それはただ単にバスが通る道路脇のことだったのだろうか。
道を降りて行く途中には、利島を目の前にした製塩所の装置(流下式?)らしきものがある。その先はほぼまっすぐな道が、樹木の中に埋もれるように通っているだけである。
数台の軽トラックが停めてあって、なにやら作業をしているらしい。こんな人のまるでいない場所でなにをしているのだろう。
近頃では、動物保護の意識も広く定着しているので、害獣の駆除作業にもいろいろ配慮が必要なのだ。
その道にはこのような立て札があったが、それと軽トラは関係があるのだろうか。“キョン”の立て札は、島のほかの場所でも見かけたと思うが、それはいったいどこでだったろうか。
在来種の生存に影響を与える特定外来生物として、哺乳類では11種が指定されているそのひとつに“キョン”がある。シカに似た動物で、元々日本にはいなかったものが、動物園などから逃げ出したもの(逸走個体)が住み着いてしまったものだ。中国東部や台湾にいる動物だが、日本では千葉県にあった“行川アイランド”(095 浜行川岬) から、ここ大島では島の動物園から逃げ出したものが繁殖しているという。大島でもその防除作業が行なわれているようだった。
前々項トウシキの鼻に続いて、あまりはっきりしないが、いちおう大島南東の海の上からの写真も…。▼国土地理院 電子国土ポータル(Web.NEXT)
34.703311, 139.360428
関東地方(2013/03/22訪問)
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