915 ツブロ鼻=備前市日生町寒河(岡山県)目をつぶろう鼻もつぶろう日生大橋はもうじきできる [岬めぐり]
国道250号線は、この付近では結構道幅も狭くなっているところも多いけれど、交通量は少なくない。兵庫県から岡山県にかけて南部の瀬戸内海沿岸を走る道路は、浜国道(浜国)とも呼ばれているようだ。沿線にそれなりに工場なども多く、重要な道路である。その北の山中を走る山陽自動車道ができても、それは変わらないらしい。
そういえば、国道2号線はどこへ行ったのやら?
相生では駅のすぐ北側を走っていた国道2号線は、播磨と備前の国境付近からは10キロも北北東に入った山の中を走っている。その鯰峠(ナマズは淡水魚だから山の中でもいる)付近は国道2号線の北限らしく、そこからだんだんと南西に向きを変えながら下ってきて、このバスの終点になる片上付近で250号線と一緒になる。
掛ノ鼻を回り込んですぐに、250号線を水道沿いに走ると、前方に見えてくるのがツブロ鼻である。運悪く、ツブロ鼻の写真はこの1枚しかない。
工事中の橋のほうに、気を取られてしまったのかもしれない。なにしろ、運転手さんが一生懸命説明してくれるので、こちらも一生懸命聞きながら相づちも打たなければならない。
鹿久居島と本土の日生町を結ぶ、大規模な架橋工事が、うちわだの瀬戸で進行している。へえー、こんなところで大きな橋を架けてるんですねえというと、運転手さんは鹿久居島とその南の頭島(かしらじま)を結ぶ頭島大橋はもう10年くらい前にできていて、本土と鹿久居島をつなぐこの日生大橋が完成して初めて、この架橋計画が達成されるのだという。随分、気の長い計画というか、なんというか。橋がなくても、日生港から連絡船が通っているので、10年も待てたのだろうか。
鹿久居島は、備前市の日生諸島の中心をなす、岡山県下では最大の島である。もともとシカがたくさんいたのでその名がついたのだが、平地がほとんどないので、無人島であった期間のほうが長い。一時期は、漁師の基地として栄え、鹿久居千軒と呼ばれたこともあったらしいが、流刑地だったり、鹿狩り、馬の牧場だったりといった時代が続いた。
改めて入植が始まったのも、戦後になってからのことだ。どちらかというと、鹿久居島よりもはるかに小さい頭島のほうが、人が住み着きやすい地形のようだ。それでも、鹿久居島の南側には、弥生時代の古代体験ができるとかいう施設もあるらしいので、人間の生活のしぶとさも感じられる瀬戸内の島である。
今でも鹿久居島の人口は、7世帯14人、頭島では174世帯427人が住むというが、541人のために備前市が進める第一期第二期の総工費130億円という架橋が、ほんとうに必要で適切かについては、当然に着工前からさまざまな議論があったようだ。
その様子は、現在に残っているネット情報からも知ることができる。また、それらのなかには、ご多分に漏れず談合屋や仕切り屋が暗躍したことを臭わせるものもある。
備前市が本土と鹿久居(かくい)島との間に計画している架橋事業について、住民団体「市の将来を考える会」(神田英則代表)が市民に行った電話アンケートの結果が28日、まとまった。市全体では「今は必要ない」「今後も必要ない」を合わせると64・9%(419人)、「必要」は16・9%(109人)。一方、事業予定地の日生地区では「必要」が半数近くを占めた。神田代表は「市全体では、今すぐ取り組むべきではないとの結果が出た」として、事業の見直しを求める意見を添え、西岡憲康市長と歳安友繁議長に報告した。(中略)
アンケートは21~25日、民間の市場調査会社に委託して電話で実施。コンピューターで無作為に抽出した市内の約6000世帯から718人の回答を得た。
このうち、架橋事業の是非は645人が回答。「〈1〉今は必要ない」が32・8%(212人)「〈2〉今後も必要ない」もほぼ同じで32%(207人)、「〈3〉必要」は109人、「わからない」が18・1%(117人)だった。
この中で、橋が架かる予定の日生地区では123人が答え、〈1〉が20・3%(25人)、〈2〉が16・3%(20人)。〈3〉は最多で半数近い58人(47・2%)だった。「わからない」は20人。
報告書を受け取った西岡市長は「本土の住民は無料であちこちに行けるが、離島の住民は船賃を払わないと行けない。不平等だ」と事業に意欲を見せ、アンケート結果には「慎重に検討する」と述べた。歳安議長は「大方の民意と見ていいのでは。全議員に配り、参考にしたい」と話した。
2008/01/29, 大阪読売新聞より ブログ 「6年は組」(ウェブリブログ) による
そんなことにはおかまいなしに、公共事業はひたすら着々と突き進む。これが、いちばんしぶとい。
なぜか、この地方のある地域の小さなケースが、日本の民主主義と政治と行政の制度全体の問題を象徴しているように思えてくる、というのは風呂敷の引き延ばしすぎ広げすぎだろうか。
日生大橋は、鹿久居島とちょうどツブロ鼻付近の間に架けられる。既成事実はどんどん進行し、いずれできてしまえば誰も目をつぶってしまう。鼻もつぶれば臭いにおいもにおわない。そして、日生地区の人もそうでない人も、みんな橋も渡るだろう。
▼国土地理院 電子国土ポータル(Web.NEXT)
34.730064, 134.282673
中国地方(2013/02/05訪問)
タグ:岡山県
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