826 神田岬=下関市豊北町大字神田上(山口県)本州最西端は正確な経度表示でみるとここではなく南の毘沙ノ鼻だが… [岬めぐり]
田園風景が徐々に狭まっていくと、191号線は山陰本線と接しながら海岸に出る。バスの車窓から響灘を眺めながら北上すると、よくわからないで通り過ぎた夫婦岩という地図表記の付近から、同じ下関市ながらやっと町名が変わる。豊浦町から豊北町へ。
ここから、もう一度南の大崎鼻を振り返ってみるが、響灘のもやはますますモヤモヤとふかまっているようだ。
下関市と2005年になって合併した町に多い「豊」のつく語源は、なんだろうか。元は、山口県の中央部、現在の美祢市の西隣にあった豊田町がその中心で、その海寄りが豊浦で、その北側が豊北、ということだろう。
豊田町は、中国山地の中に開けた盆地の町で、真北の方向は天井ヶ岳という900メートルに満たないピークをもつ尾根があり、その向こうは長門市になる。豊北町は、豊田盆地から北西方向に続く、地図では本州最西北端をつくる一帯を占めている。低い山がでこぼこと続くその西海岸の二見で、山陰本線は神田岬を敬遠するように、早々と海岸から離れて山の間に入っていく。
だが、どこを走ってもいい観光バスは、山陰本線を追わず、二見の漁港を過ぎ、このまま191号線を北上して、杖坂山の下を進む。
本州の西の端、鉄道も走らない、人家もない道は、なかなか立派である。自民党の土建屋政権が長く続いてきたおかげで、近頃では日本全国どんな端っこへ行っても、道はきれいに整えられている。
実際、長い時間と膨大なお金がかかりインフラの整備は、いちばんわかりやすい目標ではある。政治とは自分の地元にいかに道路をつくり、線路を引くかということだった。そういう時代が何十年も長く続いてきたので、いまではもう山口県が特別突出しているようには見えないのだが、「広島や島根から山口県に入ると、とたんに道路が立派になる」という話は、長く語りつがれてきたものだった。
おや、人がいる。しかも通学路の標識もある。矢玉の手前付近(注)だろうか。それにしても、このおじさん、ネクタイしてワイシャツをズボンから外に出している。いったい、どういうシチュエーションでの登場人物なのだろうか。
ネクタイは黒いので、結婚式ではない。葬式か法事かの集まりにきて、ちょっと抜け出して一服。ちょっと飲み過ぎ食べ過ぎたので、おなかを楽にさせている…といったところか。
神田岬は、この北側の出っ張りの突端(注)なのだが、矢玉から先へ行く道は、遠く離れた山道のほかはない。したがって、ここも遠くからの写真で、間に合わせるほかないが、矢玉に近寄るほど神田岬(注)は見えなくなる。
この地元の字名をつけたらしい神田岬の位置は、東経130度52分1.68秒である。南の出っ張りの先端部は同じ下関市内の吉母にある毘沙ノ鼻であるが、その位置は東経130度51分38.27秒。
つまり、この二者で比較すると、本州最西端は響灘の南の出っ張りにある毘沙ノ鼻で、北の出っ張りの神田岬ではない。
前の2007年の山口県の岬めぐりでは、番外として本州最西端の備忘録に下関市彦島の竹の子島(番外:竹の子島=下関(山口県)おもしろきこともなき世におもしろく)を収録していた。この竹の子島の位置は、東経130度52分25.25秒であるから、もちろん最西端ではなかった。
191号線の北浦街道が、神田岬の付け根を横断して、岬の東側に出ると、土井ヶ浜(注)という名のある美しい海岸が広がっていた。
さっきのおじさんの隣に立っていた看板には“和久漁場管理委員会”とあったが、その和久という集落があり、隣には特牛という牛丼屋のメニューみたいな名の漁港がある。もちろん「とくぎゅう」とは読まないのだろうが、“特牛=こっとい”という読みは、考えてわかるものではない。
自然の入江を利用した広い漁港は、イカ漁の漁業基地らしい。この先でバスは191号線を離れ、海岸寄りを北上していくはずである。ここまで、目的地が近づけば、もうそのコースの予想は外れない。
注:この項、はじめての地をバスで走り抜けながら撮った写真を、地図で照合しながら書いていたが、「とみお」さんからご指摘をいただいた。修正がなかなかむつかしいので、そのコメント全文を追加しておきたい。「こっとい」はタイプミスでしたので、本文を修正しました。「とみお」さん、ありがとうございました。
「とみお」さんからのコメント
ですのでこの時点で神田岬は既に通り過ぎています。
和久から振り返れば見えていたのですが…残念です。
ちなみに土井が浜は和久の手前ですので、次に紹介されている浜は土井が浜では無く荒田という地区の小さな浜です。
さらに、特牛の読み方は『にっとい』ではなく『こっとい』です。
by とみお (2013-02-15 20:29)
▼国土地理院 「地理院地図」34度17分16.73秒 130度52分2.80秒
中国地方(2012/05/29 訪問)
暑中お見舞い申し上げます。
暑い日が続きますが、どうかお体ご自愛下さいますよう。
by ナツパパ (2012-07-31 18:15)
@ほんとうに連日の猛暑、みなさんおたがいに自重して、気をつけてこの夏を乗り切っていきましょうね。
今日から、ちょっと岬めぐりは夏休みして、「記憶遺産」のカテゴリで連日の書き込み…といっても1週間くらい…。
by dendenmushi (2012-08-01 05:47)
突然失礼します。
この記事の中ほどのワイシャツ・ネクタイおじさんのいるところは和久です。その上の写真が矢玉です。
ですのでこの時点で神田岬は既に通り過ぎています。
和久から振り返れば見えていたのですが…残念です。
ちなみに土井が浜は和久の手前ですので、次に紹介されている浜は土井が浜では無く荒田という地区の小さな浜です。
さらに、特牛の読み方は『にっとい』ではなく『こっとい』です。
by とみお (2013-02-15 20:29)
@とみお さん、ご教示ありがとうございました。イヤー、この辺は自信がなかったところでした。矢玉と和久と神田岬をはさんで前後の位置がずれていたわけですね。
土井ヶ浜遺跡も含めて、この辺はもう一度再訪したいと思います。とりあえず、ご指摘のコメントを本文中にも入れさせていただきました。
by dendenmushi (2013-02-16 07:56)