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786 ほり崎=西牟婁郡すさみ町里野(和歌山県)岩磯だらけだけれどもあえてネほりハほりの枯木灘 [岬めぐり]

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 ほり崎と三崎のある里野は、すさみ町の東端にあたる。その東隣は、いよいよ紀伊半島南端の串本町になる。
 『紀伊続風土記』では、里野浦については「江住浦の東二十四町にあって、荒磯である。」と本文一行の記述しかなく、まことにそっけない。だが、「荒磯である」との数文字が、この地域をみごとに表現しているとも言える。
 岩礁の磯が続き、ところどころに岩島が海中に頭を出し、細かいでこぼこの海岸線が連続する。ほり崎は、そのいちばん西の岬で、ここはまだ江住に近い三角形の出っ張りになっている。
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 こうした岩磯は、直線でも20キロになんなんとする、すさみ町の海岸線すべてに共通する。これが「枯木灘」である。
 782 和深崎 の項 でも、「枯木灘」については若干ふれているが、どういうわけかこのキーワード単独では、“海底ポスト”などの関連項目まで拾ってくるウイキペディアにも該当する情報がない。中上健次の小説や都はるみの歌もあるくらいで、それほど一般に知られていないなじみのない名前ではないはずだろうに…。
 それではと、改めて「枯木灘」の正しい解釈と意味を、すさみ町商工会のページにあった『すさみ町誌』から探してきたので、まずその記述から引用してみよう。
 
 「枯木灘」とは荒涼感を放つ美しい地名ではないか。
 陸上の旅行者が炎暑をさけ、木陰でしばしの憩いをとり、汗をぬぐい、手足をのばす。ところが、並木がことごとく枯れてしまっては休息をする場所がない。これを海上に置き換えてみると、和歌山県串本袋港を出た船は、すさみ町周参見港までの間には、難をさけて船を休ませるべき港がない。すなわち、串本袋港と周参見港という木陰以外は、みな「枯れ木」であるという意味である。古くから紀州の海を航海する船乗りの間では、この地方を『枯木灘』と呼んでいたらしい。(『すさみ町誌』すさみ町商工会のページによる)

 
 『紀伊続風土記』にはその記述もないので、どのくらい“古くから”ある名称かは不明なままだが、先に782項で紹介した明治期の編纂になる『周参見村郷土誌』では、「周参見港より以南二色の袋港に至るの海上数十里一帯」を枯木灘としていた。“二色の袋港”というのは、串本の西の浦にあるので、串本の西の袋港から周参見港まで、およそ40キロ近くというのが、そもそもの範囲であったことになる。
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 『すさみ町誌』によれば、1953(昭28)年に和歌山県が初めて制定した県立公園条例では、「枯木灘海岸」の名称で、周参見町と江住村の境界から、串本町有田の錆浦までの間を県立公園として指定している。この範囲は、上記40キロよりもさらに限定された狭い範囲である。どうやら、両端の港は木陰部分だからそれは“枯木”には含めないで、その港のない間を枯木灘とする、律義な定義による区分であったらしい。
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 枯木灘の名を公式に残すのは、ほぼこの公園の名称だけだろうが、その名付け親は当時の小野和歌山県知事であったという。彼の生家は、串本町田並で海運業を営む旧家で、幼少の頃から知っていた呼称を公園名に提案したようだ。
 その後、1968(昭43)年には、「熊野枯木灘海岸県立自然公園」という名称になるとともに、白浜から串本町潮岬西までの、海岸線約70キロと、その範囲は大きく広がっている。
 中上健次の生まれ育った新宮市は、和歌山でもいちばん東の端で、実はこの定義による「枯木灘」の範囲外である。
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▼国土地理院 「地理院地図」
33度30分25.06秒 135度36分36.85秒
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dendenmushi.gif近畿地方(2011/10/06 訪問)

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タグ:和歌山県
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コメント 2

ナツパパ

あるほどそれで枯木でしたか。
ここは外海だから昔の船は大変だったのでしょうね。
by ナツパパ (2012-05-02 15:09) 

dendenmushi

@そうですねえ、昔の船はみな沿海を陸地を見ながら進むという航法しかとれなかったのですからね。
どこを見ても、船を着ける港がないというのは…。
by dendenmushi (2012-05-04 06:12) 

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