784 江須崎=西牟婁郡すさみ町江住(和歌山県)鐘木のようなほとんど島になっている岬に神のおりやどりて… [岬めぐり]
見老津を出てすぐに、紀勢本線また見老津トンネルに入る。そのトンネルを抜けると割りと大きな谷を越える。この谷を流れているのが江須之川で、両岸に集落があり、それが河口から岬の付け根まで広がる。谷を渡るとやがて海中に長々と延びている江須崎が現われる。だが、その全貌は少し離れたところからでなければ確認できない。
江須崎は、細長い出っ張りとその先にいったん途切れて、またイモのような島がつながっている地形であるが、横から眺めると単に長い岬のように見える。だから“鐘木山”という名もあったのだろう。
○江洲崎島
江須ノ川の地方から八町ばかり離れた所にある。一名鐘木山という。島周十六町半ばかり。一円に椎の木が鬱蒼と茂っている。ゆえにこの辺りの婦女は農隙に椎の実を拾って浪花へ売る。多い年は二十石、少ない年は五〜六石ばかりを拾うという。(KEY SPOT『紀伊続風土記』現代語訳 牟婁郡周参見荘江住浦)
『紀伊続風土記』では、このようにはっきりと“島”として記しているのだが、現在ではどこにも島の表記はない。あるいは道と橋で地続きになったのは、その後のことであろうか。
椎の木が鬱蒼と茂っているので、婦女は農隙にその実を拾って浪花に売ったというのが、なんとも切ない。
そのシイの木を始め、現代に受け継がれてきた自然の植生は、この付近の周参見の稲積島、沖ノ黒島などと並ぶ紀南地域を代表する天然林で、江須崎にも暖地性植物群落として∴マークがついている。
40メートル弱の頂をもつ島の回りは、岩磯で取り巻かれているが、岬の付け根にはなぜか“日本童謡の園”とか、“すさみ海立エビとカニの水族館”といった施設もあって、江住海岸公園となっているらしい。島も周回できる細い道もつけられているようだ。
先端部の灯台は、あまり大きなものではないせいか、車窓からではわかりにくいが、岬の立岩に続く断崖の上にちょこんと乗っかっている。
島の灯台とは反対側には江須崎明神を祭っていて、「江須」の名はこれより起こった、と『紀伊続風土記』はいう。
その江須崎明神の「江須」が、どこからきたものかにはふれていないが、この周辺にたくさん広がって存在する「江須」「江住」の名称が、元々はこの島の明神の名から起こっているというのはおもしろい。
やっぱり、神様のほうが先なのである。その神様を産み出したのは、実は人間なのであって、彼らもまたその土地その谷にしがみついて一生を終えるが、その子孫もまた代々生き様を踏襲してきた。
本来ならば、見老津駅か江住駅辺りで列車を降りて、歩いて見たいところであったが、なにぶんにも3時間に一本しかないという周参見以南の紀勢本線では、思うに委せぬところが多い。
▼国土地理院 「地理院地図」
33度29分57.87秒 135度35分32.11秒
近畿地方(2011/10/06 訪問)
地図で拝見してもぎりぎり繋がっている感じですね。
by ナツパパ (2012-04-28 14:53)
海に浮かんだ森のようですね♪
複雑な海岸線ですね!
by ぱぱくま (2012-04-30 00:49)
@つながっているという部分が、細く狭くなっていますのでね。どの程度のぎりぎりなのか、今度は降りて歩いて見なければなりませんね。
by dendenmushi (2012-04-30 05:12)
@暖地性植物群落の指定地になっていますからね、こういう海に近い森は、けっこうあちこちにありますね。
この海岸線が「枯木灘」で、ちょっとこれからヒッパれるとこまでヒッパリますよ。
by dendenmushi (2012-04-30 05:17)