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763 城山崎=田辺市芳養(和歌山県)地誌『紀伊続風土記』の記述に偲ばれる古の風景のなかに [岬めぐり]

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 なんでも記録を残すということは大切なことで、記録があるということはそれだけでも財産になる。現代では、大事を扱う国家の会議でさえ、議事録もなにもとらないらしいので、地域の記録などもどうなるのか、いささか心もとない。
 さすが、紀伊徳川家の一族や重臣が各地に配置されてきた和歌山には、他に誇るべき記録がある。『紀伊続風土記』(きいしょくふどき)は、紀州藩が年1806(文化3)年に、儒学者の藩士らに編纂させた紀伊国の地誌である。実に、編纂開始から33年の歳月をかけて完成させている。
 田辺市の西の端にある芳養(はや)地区は、戦前に遡る田辺市の成立の時、芳養村も加わって、以来ずっと田辺市の一部だが、海岸から境界線の分水嶺まで15キロ近くもある細長く広い。
 インターネットで探すと、「KEY SPOT 紀伊すぽっと」というサイトで、この『紀伊続風土記』の一部を現代語訳にして載せていた。そのなかにちょうどあったので、「芳養荘」の記録をみると、こんな感じ。

 この荘は一渓にある。南北に一つの渓流が通って芳養川という。源は東山の古屋谷という所より出て三里流れて下村に至って海に入る。下村一村は海浜にあって農漁相雑ざる。芋村より上は川を挟み山に沿って村をなす。中間の諸村は土地は狭くなく多くは平田で肥沃な土地の形であるが、田に余地なく山が浅くて山沢の利に乏しく家はよくない。貧村である。一荘みな田辺城に隷する。
 
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 芳養の海岸にやってきたのは、時刻も陽が西の海の雲に沈む頃とあって、写真は例によって、かなりいいかげんなものばかりである。単なるメモ代わりの記録のため、と割り切っているが、古記録のおかげでねぼけた景色もいきいきとしてきたような気がする。
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 芳養川のほかにも二本の水流と、それに沿って低い細い尾根が海に向かって延び、そのひとつの先端が、城山崎である。
 30メートル足らずの小山は、かつては砦でも置かれたので、その名がついたと想像できるが、熊野街道はここを短いトンネルで抜ける。
 この岬から南の海に眼を転じれば、天神崎の先に続く元島があり、さらにその南には白浜の岬がある。
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 「芳養荘全十二ヶ村」といわれた広い芳養荘のうち、ここにいう「下村」および「芋村」というのが、城山崎のある付近の村であった。隣のみなべ町堺に接する下村については、さらにこういう。
 
 日高郡南部荘境村の巽(東南)に二十五町にある(熊野街道の側袖摺石をもって郡の境とする)。村居は海に浜して熊野街道にある。荘の下で海口にあることをもって下村の名がある。当村は漁戸商家相雑ざり、造酒家もある。また鰹節を製造する小名も二つある。井原・大屋という。みな芳養川を隔てて村の西にある。村の東の浜沿いに松原という地がある。古くは芳養荘の地であったが、今は田辺荘に属する。

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 「井原・大屋」の字名は、現在の電子国土ポータルの城山崎の左右にその名を残している。続いて芋村については、

 下村の北五町にある。村居は山手にある。古くは南の平地にあったが、寛永四年の津波で流亡し今の地に移ったという。村の名の意味は詳らかでない(今も旧地に二、三戸ある)。

 …という記述がある。津波の後の高台移転は、ここに限らず結構歴史的にみると多くの先例があるようだ。芳養王子跡もこの付近にあるはずだが、こういう古い地域の風景を描き出し、記録に留めてあることは、とてもうらやましいことのように思える。 shiroyamasaki08.jpg

▼国土地理院 「地理院地図」
33度44分42.59秒 135度20分42.68秒
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dendenmushi.gif近畿地方(2011/10/04 訪問)

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タグ:和歌山県
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コメント 2

arashi

あ~、竹富島だ^^;
by arashi (2012-03-17 18:40) 

dendenmushi

@そ〜、竹富島ですぅ。^^)
arashiさんは、石垣島のご出身だそうですが、「石垣島だより」もみてください。いろいろツッコミどころも多かろうと…。
by dendenmushi (2012-03-19 06:04) 

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