705 沼前岬=古宇郡神恵内村大字珊内村・積丹郡積丹町大字神岬町(北海道)いよいよ神の領域になるのか [岬めぐり]
村の中に村がある神恵内村と、町の中に町がある積丹町。その境界線をつくる沼前岬の出っ張りは、古宇郡と積丹郡の分け目でもある。岬の名は、積丹町大字神岬町の小字名からとっている。
ここも、お約束にしたがって岬の付け根を積丹トンネルで通り過ぎるのだが、トンネルの前後が少し開けているので、岩と断崖の岬の様子も、バスの車窓から眺めることができる。
だが、相変わらずのどんよりした光量の少ない空の下では、岩も波もその陰影のはっきりしない、のっぺりとしたシルエットのようにしか見えない。
どんな岬へ行っても、たいていの場合その近くのどこかには、必ずと言っていいほど釣り人の姿があるのだが、さすがにこの付近ではそれも見ることもない。
岬の先端に、65メートルの高さの三角形のピークがあるのが、ここの特徴なのだが、角度によってその姿が変わる。そのうえ、この付近ではこういう岩島や立岩の類いもあちこちにたくさんあるので、それだけでは判別し難いところもある。
よく、地方を歩いていると、思いがけずすばらしい景観や自然の造形に接することがある。滝とか河原とか奇巌とか、立岩もそうで、これひとつ東京の近辺にもっていけば、けっこうな観光資源になるのではなかろうかと、つまらぬことを考えたりする。
北海道では、こうした立岩もめずらしくはないので、とくに名のないところも多いが、観光地に近いところでは必ずポイントのひとつになっている。
この積丹半島でも、有名な立岩は、次の岬である神威岬の先にあり、また幌武意にもある。
およそ「観光」と名のつく場合は、総じて点としてしか見ていかない。その点だけを見れば、「すんだすんださあ次行こう」という傾向が強い。だから、そのポイントの一点に集中して、その周辺や地域一帯には、観光バスガイドの説明くらいで終わってしまう。それで、見落としていくものは多い。
およそ人間によってつくられたものとは思えないのに、ただ単に自然にできたものというには、腑に落ちない不思議すぎる。そういう場合、人はそれを神意によるものだという解釈をする。
沼前岬の北側、積丹トンネルを出てからは積丹町大字神岬(こうみさき?こうざき?)町。石神岩の祠を過ぎ、神岬トンネルのところの海中には、地図ではたこ岩と名がついている。これはきわめて即物的な命名だが、これでも充分奇景である。ここから、いよいよ前方に神威岬がだんだんと大きくなってくる。
神威(かむい)も、神格を持った霊的存在をさし示すアイヌ語に、漢字を当てはめたものであるが、漢字のもつ表意性と相俟って、独特の効果をもつ言葉と名前となった。
たこ岩と沼前岬と、さらにその向うに過ぎ去った西の河原のジュウボウ岬は、神威岬にさしかかるところから、南に一望できる。
▼国土地理院 「地理院地図」
43度16分53.85秒 140度20分14.65秒
北海道地方(2011/07/17 訪問)
いよいよ地の果てに近づいてきた、そんな印象を受けました。
タコ岩って、まあよく名付けましたねえ。
by ナツパパ (2011-10-12 17:32)
@…と思うでしょ。ところがね…。(本日の706項参照)
by dendenmushi (2011-10-14 06:56)