692 イコリ岬=虻田郡豊浦町字礼文華(北海道)あいかわらず変な写真ばかりですがここも雨の車窓から [岬めぐり]
この項の写真も、変なひどいのばかりですいませんね。普通に見れば変でひどくても、でんでんむし的にはOKなのです。でも、こういう写真の雰囲気にも理解を示してくださる、ぱぱくまさんのような方もおられるのは、ありがたいことです。
さて、噴火湾が、実は噴火できた湾ではなかったとしても、富浦の、とくにこの礼文華から長万部町静狩付近の地形は、外輪山の慣れの果てだといわれても怪しまないほどで、非常に気になる場所である。そんな峰が続き、400メートルを越える山はいきなり湾に落ちていく。その峰の反対側は、浅い盆地のように傾斜は緩やかになっている。
イコリ岬は、この付近最高峰413メートルの幌扶斯山が、崖と岩場を伴って湾に消えていくところ、礼文華川の右岸河口にある。
岸壁が飛び出し、その先に槍の穂先のような立岩が屹立するさまは、室蘭本線の車窓からだと、礼文華浜トンネルを出たところで、わずかにうかがうことができる。
だが、そこから線路はもう海から離れて川沿いの町に入って行くので、すぐに見えなくなってしまう。これから先、礼文華の駅を過ぎると、列車は大きく山塊を迂回して、また長い礼文華山トンネルを抜ける。このトンネルと次のトンネルの間の深い谷間に、小幌(こぼろ)駅がちょこんとある。
小幌駅までくると、もう幌扶斯山とイコリ岬は、東に遠くなってしまう。
この駅がまた不思議な駅で、これまたZENRINソース地図が無視している岩屋観音というのが崖の上にあって、そこまでの一本の点線の道と狭い砂浜に降りる道があるだけで、人家もなにもないように思われる。
こんなところに、どうして駅が必要なのだろう。いや、観音さんと砂浜があるから駅が必要なのか?
小幌駅は、虻田郡豊浦町と山越郡長万部町の境界線上にあるのだ。この先長万部町に入ると、またすぐ新辺加牛トンネルと新鼠ノ鼻トンネル、そしてまた静狩トンネルと、立て続けに長いトンネルがある。
新鼠ノ鼻というからには、国土地理院の地図にもない岬が、ここにもあるということだろうか。
車窓からはほとんど見えないのだが、噴火湾最北部の崖海岸線が連続している地帯になる。この付近は、長万部町の領域は、いちばん幅の狭いところでは250メートルくらいしかなくて、その北側は黒松内町になっている。この境界線も不思議な線引きといってよい。
湾から250メートル断崖がせり上がり、頂点の境界線を越えるとなだらかに盆地が始まり、境界線の北側すぐを流れる来馬川は、すぐ南の湾に向かってではなく、朱太川となって遠く北に向かって流れ出している。
長万部町側の山は海に向かって急傾斜だが、内陸の黒松内町側はなだらかなでこぼこのある盆地になる。
鉄道も苦労して、いくつものトンネルで、この湾のそばの山を抜けたわけだが、人馬の往来はさらに大変だったろう。国土地理院の地図で、トンネルの上や境界線の上に敷かれた曲がりくねった点線の山道を眺めていると、礼文華峠や静狩峠を越えて行き来した、その当時の苦労が偲ばれる。
トンネルが終わって静狩駅を出ると、海岸線は砂浜が続き、間もなく長万部駅に着く。名前だけは、なぜか昔からよく知っているが、ここに降りるのも初めてである。
雨は相変わらず降っている。ここで降りて、寿都行きのニセコバスに乗る。今夜の宿を頼んだのが、途中の黒松内だったからだ。JR函館本線も、黒松内を通るのだが、バスのほうが時間の都合がよかった。
長万部といえば、最近では「まんべくん」問題が一部(これとか目玉テレビの韓流偏重批判など、一般メディアではあまり目立たないニュースがネットでを賑わすのが最近の傾向)で話題になったようだが、自治体がバックのゆるキャラは発言の自由も、まして思想信条の自由はないらしい。偏向という批判を神経質におそれるのは、それまた逆の偏向を生みだしていることにも気がつくべきだし、もっとおおらかでゆるくあってほしい。
“歓迎東京理科大学”の旗がつけられた柱が並ぶ通りは、あっさりと終わって、雨の中を一路バスは黒松内を目指す。理科大は、どういうわけでここに縁を結んだのだろう。
黒松内町は、海岸線をもたない。だが、そんなに内陸奥深く、海から遠いかといえば、決してそうではない。
南の噴火湾には、あとわずか250メートルで届くし、北の寿都町を挟んで湾までも、250メートルの砂浜を残して届かない。この町が、海へ出ることを欲していたかどうかは知らない。
盆地(というより、谷間?)で、豊かな山林をもつこの町の名産は、ブナの森林と木である。それをテーマにした町おこしの一環でできたらしい温泉もあるので、そこへ泊まりたいと思ったが、一人だというと満室だとあっさり断られた。
仕方ないので、駅前の温泉ではないらしい小間旅館に泊まった。古くからのいわゆる駅前旅館だが、函館本線の駅から真っすぐの突き当たりにはあるが、距離では70メートルくらい離れている。
洋室もあり、料理も家庭料理ふうで工夫してある。商人宿という言葉も、最近では死語の世界に入りつつあるようだが、ここは、時代の流れに対応しつつやってきたような、なかなか気持ちのいい駅前旅館だった。
明日は寿都へ行くというと、小間旅館のおかみさんは、「明日は寿都はお祭りなんですよ」と教えてくれた。
ブナの森は、いちばん最近がもう何年も前になる白神山地の観光コースを歩いたくらいだが、一時期この木に思い入れを深くしたこともあった。若い頃歩いていた中国山地にも、ところどころブナの純林が残っていたが、白樺とはまた違う意味で、魅力のある樹木。それがブナである。
新聞の織り込みチラシを見て、わざわざ電車で茅ヶ崎のスーパーまで、ブナの苗木を買いに行って、盆栽にしたいと試みたこともあった。
黒松内町の歌才には、ブナ自生北限地帯がある。
▼国土地理院 「地理院地図」
42度34分1.90秒 140度34分56.66秒
北海道地方(2011/07/16 訪問)
長万部から寿都までバスが走っているんですね。
黒松内からとばかり思っていました。
函館本線は見るも無残な本数なので補完の意味もあるのかな。
by ナツパパ (2011-09-12 20:28)
@寿都行きのバスは、黒松内町からがメインですが、一日に2本くらいは、長万部からのがあるのです。
函館本線も室蘭本線も、乗っている人は少ないのでしょうね。だから、ダイヤもどんどん間引かれていく。だから、また、ますます利用しにくくなる…。
by dendenmushi (2011-09-14 05:25)