685 鷲別岬=室蘭市日出町・登別市鷲別町(北海道)岬と町と駅と川と山との五点セットが揃っている鷲別 [岬めぐり]
鷲別岬もまた、なかなか微妙な位置にある。というか、幾多の思惑や駆け引きの目印となっていた形跡が伺えるのだ。それは結構大きな岩山の出っ張りで、ほぼ垂直に崖が屹立している。岬の岩山は、海岸のそこだけ取り残されており、山は町と海の間に長めに横たわっている。
岬の東側、鷲別町に注いでいる鷲別川を、鷲別駅の北東から辿って上流へ向かえば、標高911メートルの鷲別岳に至る。つまり、“鷲別”の名は岬と町と駅と川と山との五点セットになっているわけで、これほど見事に揃っているのはあまり例がない。
ところが、よくみると、おかしなことに気がつく。
国土地理院の地図(だけ)では、鷲別岳にはカッコ付きで(室蘭岳)と並記してある。
JR室蘭本線の鷲別駅は、駅のホームの真ん中で、登別市と室蘭市に分けられている。
境界線は、通常、川とか岬の尾根が基準になって線が引かれることが多いが、ここの境界は川の流れに従っていない。
では、岬の尾根だろうかといえば、ここには尾根がない。
ふたつの市を分ける市境は、駅の北500メートルのところから、鷲別川から離れ、市街地を横切り、駅を分けて鷲別岬の岩山を真っ二つに分けているのである。
岬の北側半分は、登別市の鷲別町、南側半分は室蘭市の日出町。駅から正面あたりにあるらしい鷲別神社は、境界線の微妙な動きによって、ぎりぎり鷲別町に入っている。
鷲別駅のホームからは、緑の空地の向うに、岬の北側の一部が望める。
鷲別駅の前後には、貨物駅や引込線がたくさんあり、室蘭の工業地帯のバックヤードが、ここまで広がっていることを伺わせる。
室蘭の町は、室蘭港を囲むようにカギ爪状に展開する新日鉄をはじめとする工業地帯を挟んで、市役所のある室蘭駅周辺と、東室蘭地区に大きく分かれているようで、室蘭本線も立て前上は盲腸のように行き止まりになっている室蘭駅までの短い路線も同等に扱っている。だが、それは名目上のことで、ほとんどの列車は、東室蘭止まりとなるか、ここから更に函館方面に伸びていくことになる。
東室蘭の駅と幅広く並んでいるたくさんの線路で、町は南北に分けられている。工業地帯への引込線も含めて、とても踏切で横断できるような規模ではないので、高い陸橋が駅の両側にある。
ビジネスホテルだけが目立つのも、町の性格を一面で示しているようで、なんとなく納得できる。西口に降りてホテルに荷物を預け、再び雨の海岸までタクシーを走らせていると、陸橋の上から「はとやま会館」という大きな看板を掲げた建物が目に入る。
「おおっ、ここが地元だったのかあ」と、思わず声に出してしまったら、運転手さんがすかさず、「そうなんですよ。でも、もうだめでしょうね」という。
不出馬表明騒ぎがあったかと思えば、地元では後援会長がもうやってられないと降りたとかで、どうもごたごたしているらしい。
政治の世界のことは、口にするのも書くのも恥ずかしいことばかりなので、言いたいことはいろいろあるがひとまず置いて、車窓からでは充分とはいえない鷲別岬の姿を求めて、室蘭市寿町の海岸までやってきた。
雨の中、しかも日暮れ方となって、またまたぼんやりはしているが、100メートルほどの頂を残して、岬の東と南は崖で鋭く抉られている様子も、どうにかわかる。
室蘭街道といわれる36号線に沿って、岬の名残りのような崖地が細い帯をつくり、それが砂浜をともないながら手前に延びてくる。道路脇に土手のようにできているのは、その末端である。
白い波が絶え間なく押し寄せるのを見ていると、これがあの岬を削り、崖をつくった大きな力でもあったのだ。
▼国土地理院 「地理院地図」
42度21分7.98秒 141度3分11.63秒
北海道地方(2011/07/15 訪問)
ウチのオヤジは室蘭出身です。その辺りに地球岬というのがあったと思います。
by うっしい (2011-08-27 23:39)
浜辺と比べて随分切り立った岬ですね。
風雨に煙るその姿もこの辺りを象徴するような景色ですが
冬場はもっと厳しいのでしょうね。
by ぱぱくま (2011-08-28 14:19)
@うっしいさん、そういうことならば実家とか、お墓とかもあるんでしょうかね。それによっても、その地域への思い入れは、だいぶ違ってきますよね。
チキウ岬は、このあとに出てきますよ。
わたしも「なぶら」のような店が、近所や仕事場の近くにあればいいなあ、と思っていますが…。
by dendenmushi (2011-08-29 06:05)
@そうなんですよ、ぱぱくまさん。
浜と崖の対比がおもしろかったので、今日の項目ではそれについてちょっと書いてみました。
by dendenmushi (2011-08-29 06:07)