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677 判官館(判官岬)=新冠郡新冠町字高江(北海道)日高本線沿線はサラブレッドの故郷なので… [岬めぐり]

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 ガンかハクチョウか、渡りの鳥が翼を広げて飛びながら、長く伸ばした首をかしげて一声あげているように見える北海道の地図で、斜め下にほぼまっすぐに延びている羽根の前縁(西側)に沿って、JR日高本線は走る。
 苫小牧駅から様似駅まで、146.5キロメートル。もともとは、北海道開拓史のなかでも大きな役割を果たした、王子製紙グループの鉄道としてあったものを1927(昭和2)年に国有化して、その10年後に様似まで開業全通している。
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 記憶にある昔見ていた北海道の地図では、羽根の後縁(東側)の海岸線にも、広尾までの線路が記されていた。そのときには、「どうして、この尖って突き出た三角のところだけ、鉄道がなく切れているのだろう」と、こども心に疑問に思ったものだ。そこには、日高山脈がながれ下って、東西を分断していたのだ。が、鉄道がぐるりと大きな半島を周回しなかった理由は、もちろんそれだけではあるまい。
 JR広尾線が廃止されたのは、1987(昭和62)年で、ついにつながることのなかった広尾=様似間は、現在ではJRバス日勝線がかろうじて結んでいる。
 今では一両編成で2時間に一本がやっとこさの日高本線も、終始寂れた支線だったわけではなかったようで、1960年代には、準急「えりも」が走り、それが「日高」とともに急行になったりしている。
 その頃には、観光客が連日わんさと押し寄せていた、ということもないだろうから、日高地方にもサラブレッドの育成牧場を中心とした、第二の開拓ブームがあったのかもしれないと、また例によって勝手な想像の翼を広げている。
 日高本線は、もちろんいくつもの小さなでこぼこや曲線はあるものの、静内まではほぼ海岸線に沿って、その先、様似まではいくらか内陸部に入り込みつつまた海岸に戻ってきながら南東方向に向かって走る。
 この間、岬と名のつくのは前項のシノダイ岬と様似のエンルム岬のみである。
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 それではあんまり淋しいので、岬に準じて名のある場所も、項目に加えることにしたい。そう思って国土地理院の地図を見ても、新冠(にいかっぷ)までの途中、日高町の厚賀には港はあるだけで、新冠町に入っても大狩部は線路からすぐ海で、その間には頼りなげな柵と土嚢のほかなにもない。
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 節婦でも、駅から降りたわけではないが、地図では港があっても岬らしきものはなかった。
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 やっと新冠川の河口に、せり出す丘と「判官館」という表示があった。名前からすると義経伝説がらみのようだということがすぐわかる。ここも新冠川河口がまだ広かった頃には、立派な岬であったと思われる。
 義経が兄頼朝の追っ手から逃れて蝦夷地に渡ったという伝説は、さまざまにあるが、この要害の地を選んで館を設けたといい、ピリカメノコとの悲恋話が残る。それは、ここが江戸時代の蝦夷支配の数少ない東の拠点として会所なども置かれていた場所だからでもあろう。寛文年間の松前藩とアイヌのシャクシャインの戦いでは、シベチャリ(現在の新ひだか町)の英雄シャクシャインが誘い出されて謀殺されたのも、この地であるという。
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 この出っ張りの写真が、新冠町のホームページではそのトップに掲げられていて、その名も「判官岬」と称されていた。
 標高80メートルほどの広い台地の上は、キャンプ場やら森林公園やら墓地やら、いろいろな施設もあるようだが、川と海に面したところが断崖になっていて、浦河国道235号線は節婦から新冠まで、ここを避けて迂回している。日高本線は、断崖と海岸線の間を押し通っていて、岬の先端部分をトンネルで抜けている。
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 往路では、ひどい雨と霧の中で、ほとんどよく見えなかったが、翌日の復路では、断崖の岩壁もなんとか見えた。復路では新冠駅からまっすぐ判官館に向かうので、進行方向左車窓の端に、どうにか先端部分がとらえられる。
 新冠町も当然開拓の町だろうが、Googleの航空写真でみると、この町はきれいに区画で仕切られ、整然としていて、なおかつ比較的新しい街づくりも広がっているように見える。町では、定住者・移住者の受け入れにも積極的なようである。
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 5,843人(2,655世帯)しかいない町の人口よりも、おそらくは馬のほうがはるかに多いのであろう。とくに、国道235号から分岐した道道209号線が日高山脈の懐に向かって延びるあたりは、“サラブレッド銀座”と呼ばれているほど牧場が連なっているらしい。その銀座が終わる先には、“ハイセイコーの墓”もあると、町のマップには記してあった。約8キロ以上にわたるサラブレッド銀座の最初の3キロくらいは、地図で見ると見事な一直線が引かれていた。
 また、陸上競技のトラックのような形や円形の馬場らしいフィールドも地図上のあちらこちらに描かれていて、航空写真ではそれが白く光ってUFOのように見えるのもある。それはきっと、屋根付の屋内トレーニングセンターのようなものであろう。
 競馬には、まったく縁がなく、「だいたいチクショーのうえに他人が乗っかって走るものに賭けるとはいかがなものか」と思っていた。が、昔会社の同輩に好きなのがいて、ウマの世界における“血統”の意味と大きさについて教わって、ふーんなるほどと感じたことが思い起こされる。
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▼国土地理院 「地理院地図」
42度21分45.31秒 142度18分11.46秒
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dendenmushi.gif北海道地方(2011/07/14〜15 訪問)

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タグ:北海道
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コメント 4

シラネアオイ

おはようございます。日高線探訪お疲れ様です!!
by シラネアオイ (2011-08-08 08:09) 

dendenmushi

@日高本線、乗って座っているだけですが、けっこう長時間。確かに疲れました。
 でも、見るものすべてが初めてとあって、景色を焼き付けるように見てきました。
by dendenmushi (2011-08-10 05:35) 

ナツパパ

ホント海の近くを走っているのですねえ。
少し荒れたら危ないな。
by ナツパパ (2011-08-15 09:37) 

dendenmushi

@そうですね。「海にいちばん近い駅」というのが、日本海の青海川?だといわれていましたが、ここのほうがもっと近いです。が、むこうはホームがあったからか…。
 「海にいちばん近い線路」は、文句なくここですね。
by dendenmushi (2011-08-17 05:55) 

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