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672 牟婁崎=熊野市二木島町(三重県)ウィキペディアにもない阿古師神社と室古神社を結んでドンとドンとドンと〜 [岬めぐり]

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 牟婁崎は、英虞崎から見ると、すぐ目と鼻の先にある。灯台から元来た道を戻ると、途中で下りになり、神社の脇に出る。この道は、海のほうを向いている阿古師神社の前を通って、再び山道を上って行く。この神社へは、この山道を上ったり下りたりする以外には、海から船でくるしかない。鳥居の先は、桟橋のような出っ張りが海に向かって切れている。そのほぼ正面に見える小さな集落の塊が、甫母である。
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 そして、ここから東へ船で1キロほど進んだところに牟婁崎があり、その北側には室古神社がある。向きとしては、阿古師神社のほうが北を向いているので、厳密にはふたつの神社が向きあっている、というわけでもない。室古神社までは、かろうじて陸路もあるようだが、牟婁崎は岸壁が荒々しくむき出しになった岬である。
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 英虞崎にあるのが阿古師神社、牟婁崎にあるのが室古神社。字こそ違え、岬の呼名と神社の呼名が、それぞれシンクロしてセットになっているのは、他にもあまり例がなく興味深い。
 この二つの神社は、英虞と牟婁の境界でもあった二木島湾を挟んで、対峙しているが、相互に強い絆で結ばれていたらしい。
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 室古神社のほうは、甫母町から眺めると、神社の屋根らしいものがやっと見えるくらいだ。そこまでは行けないので、牟婁崎は甫母から眺めるだけ。室古神社にも行けないので、阿古師神社のほうだけでもチェックしておこう。このふたつの神社は、ウィキペディアにも情報がない。
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 阿古師神社の社殿は、立地の割りには比較的よく保たれていて、新しい造作も加えられた様子もあって、荒れた感じも寂れた感じもない。それもそのはずで、ここの祭礼は三重県の無形民俗文化財にも指定されていて、神社そのものもかなり古い歴史をもつもので、粗末にはできないのだ。
 熊野市教育委員会が平成20年に立てた(比較的新しい)熊野市指定文化財の案内板には、次のように書いてある。

 「阿古師神社 二木島湾を抱く東の岬にあり、対して西の岬に室古神社がある。祭神は豊玉姫命、伊勢大神、三毛入野命との説がある。
 『日本書紀』持統天皇六年(六九二)阿胡の行宮において紀伊國牟婁郡の阿古志海部、河瀬麻呂の兄弟が鮮魚を献上したとあるのは、この神社である。
 ここの祭礼は、古代を最も厳格に伝承しており、阿古師、室古両社にちなむ関船早漕ぎ競漕(二木島祭)は、往年の熊野水軍や捕鯨の勢子船の早漕ぎを彷彿させる。」


 祭神に諸説があってはっきりしないというのが、普通、神社では考えられないと思うが、確かなことがわからないくらい古いのである。因みに、“三毛入野命”というのは、神武天皇の兄であるという。かの「神武東征」のさいに、この地で遭難したので、ここに祀られたという。さらに、持統天皇ですよ。あの“衣ほすてふ”の…。大変な古さである。
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 もうひとつ、同じく熊野市の文化財の掲示があって、そこにはその二木島祭の関船の絵があった。早漕ぎ競漕というので、ペーロンのようなものを想像していたが、8本の櫓を32人で漕ぐというのだから、これはそれよりもずっと大きな船である。いわゆる“八挺櫓”で、徳川家康は七挺櫓以上の漁船の建造も禁じていたくらいのものである。八挺櫓は、和船の歴史のなかで、長い間花形であったようだ。
 従来は、春と秋の二回行なわれていた祭りも、現在では秋のみという。
 あ、もうひとつ“八挺櫓”で思い浮かぶのは、こどもの頃にラジオで聞いた憶えがある、藤原義江が歌っていた『出船の港』。作曲は中山晋平で、時雨音羽の歌詞にはこのことばが出てくるのだ。

  ♪ドンとドンとドンと波のり越えて
   一挺二挺三挺 八挺櫓で飛ばしゃ…


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 二木島の読みは、“にぎしま”と濁るのが正しいらしい。二木島の海でも、やはりタイの養殖が盛んなようである。
 笹野島までは二木島町だが、それより西は熊野市遊木町となる。

▼国土地理院 「地理院地図」
33度55分57.45秒 136度11分51.42秒
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dendenmushi.gif東海地方(2011/04/14 訪問)

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タグ:三重県
きた!みた!印(43)  コメント(3)  トラックバック(0) 
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コメント 3

ナツパパ

奥が深く良い形をした湾ですねえ。
両神社には船で行くことが多かったのではないでしょうか。
木々が豊かに茂っていて、素晴らしい岬の風景ですね。
by ナツパパ (2011-07-24 21:05) 

dendenmushi

@ふたつの神社を結ぶお祭り、「二木島祭」も、関船の競漕がメインイベントで、これも海のお祭りなのですね。
 厳島神社のお祭り「管弦祭」も、競漕はなかったけどそうです。
by dendenmushi (2011-07-27 05:50) 

ウガヤフキアエズ王朝実在論

前略、画像を下記のサイトにお借りしましたので、問題があればお知らせください。
http://ugaya.jimdo.com/%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3-%E7%A5%9E%E6%AD%A6%E6%9D%B1%E5%BE%81-%E4%B8%AD%E7%B7%A8/
by ウガヤフキアエズ王朝実在論 (2015-05-06 13:22) 

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