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669 神須ノ鼻=尾鷲市梶賀町・熊野市須野町(三重県)三木里の海岸からも見えるには見えるのだが… [岬めぐり]

 「熊野へ参るには、紀路と伊勢路のどれ近し、どれ遠し、広大慈悲の道ならば、紀路も伊勢路も遠からず」
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 神須ノ鼻は、尾鷲市と熊野市との境界を区切っている岬である。だが、この岬を回る道には、バスも通っていない。尾鷲のふれあいバスは、三木里までと賀田への路線まで。熊野市からのバスも、二木島止りで本数は少ない。つまり、この二つの市を結ぶバス路線はないし、JR紀勢本線も山の中をトンネルで抜けるので、ここへは公共交通機関では行くことができない。
 タクシーはといえば、三木里にも二木島にもないので、尾鷲か熊野の中心市街地から呼ばなければならない。タクシーで行ったとしても、道路から岬までは1キロ以上歩かなければならないので、その間待たせておかなければならない。そこまでする必要もないと判断して、結局ここは三木里と三木浦からの遠望でよしとすることにした。
 三木浦小学校前(前というより「上」なのだが)のバス停で日に5便、昼間は3便しかないバスをつかまえて、再び三木里まで戻る。その途中の車窓から、神須ノ鼻は眺めることができる。
 漁港のある三木浦と砂浜のある三木里も離れていて、海岸の三木里の町と少し高いところにある三木里駅も若干離れている。前日は、駅の下の海岸の古い集落であることを示す大きなクスノキなどが茂る、道路に面して建つ民宿に世話になった。
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 地方でも都市部のホテルなどと違って、こういった地域で宿を探すのは、なかなかむずかしい。インターネットの情報もぜいぜいが名前と電話番号だけだったりするし、これすらもかなりいい加減であてにならない。三木崎まで行くには、三木里よりもトンネルに近い三木浦に泊まったほうが、効率がいい。そう考えて探してみたら、インターネット情報では三木浦にも民宿があった。電話を掛けてみたら、なんとそこはもう何年も前に廃業したという。
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 そんなわけで、「浦」ではなく「里」に泊まることになったのだ。ここでは2軒の民宿があって、ここもその名前と電話番号だけしかわからない。どちらにするか、迷うところだが、運を天に任せてそのひとつに電話して予約した。来て見ると、改装してきれいになった民宿と、古い建物の民宿が2軒斜めに向き合うようにしてある。電話をかけたのは、改装されたほうだった。
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 この浜に2軒も民宿があるところをみると、それは海水浴客目当てでもあろうが、このささやかな集落が熊野古道を往来する旅人にとって、貴重な休息の一夜を提供するところだったとも考えられる。
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 なぜなら、三木里を挟んで、北の八鬼山越えと南の曽根坂越えは、どちらも熊野路を行かんとする旅人を難渋させてきたことは、容易に想像できるからだ。
 そもそもこの熊野路は、紀伊半島の西側、主に和歌山県を回る紀伊路と、半島の東側、三重県を通り抜ける伊勢路に分かれる。西の紀伊路が主に都から権力者・貴族達が熊野詣でを盛んに行なった道であるのに対して、東の伊勢路は東国から多くは伊勢参りをすませた庶民が熊野を目指すときのルートであったという。
 二木島駅にあった、環境庁と三重県が建てた曽根の次郎坂・太郎坂の案内板にはそうあり、さらに冒頭に示した『梁塵秘抄』からの引用があった。(「遊びをせんとや生れけむ…」でも有名な『梁塵秘抄』は、平安時代に編纂された口伝の歌謡集。)
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 三木里の海岸は、美しい砂浜がゆるく弧を描いている。この付近では、全体に砂浜が少ないので、ここは海水浴場としても名高いようなのだ。先にも、三重が地元という夢空さん(やはりSo-netの地域ブログの常連さん)からのコメントがあったように、近郊近在からはみんなここへ海水浴にきたことであろう。
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 三木里海岸からの神須ノ鼻は、見えるといえば見えるような気もするが、実はその大部分は梶賀の無名岬の連なりであると思うべきだろう。
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 とすると、やはり神須ノ鼻のそれらしいところは、三木浦の上を通るバスの車窓写真、ということにならざるを得ない。
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 紀勢本線は、多くの駅が無人駅で、各駅には熊野古道をアピールする掲示かなにかがある。上りと下りが同じ線路、同じホームという駅も少なくない。乗ってきたバスが駅前で折り返しの時間を待つ三木里駅も、上りと下りと二本あったひとつをわざわざ撤去して、一本だけ残された線路とホームが静かに次の列車がやってくるのを待っている。
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 ホームにある名所案内の看板には「三木崎灯台」というのはあるが、三木崎園地はなかった。おまけに、そこまでの所要時間が「南西 4.5キロ 徒歩*0分」とあって、*のところの数字が1字分削り取られていた。
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 一般論としては公共器物を損壊する行為は褒められないにしても、おそらく腹立ちまぎれであろうがこれをゴシゴシしたくなった気持ちは、わからんでもない。でんでんむしでも、そうしたかもしれない。駅のホームにあるので、所要の距離も時間もこの駅からだと解釈できるが、灯台までとても数十分で行けるわけがない。でんでんむしが歩いたところでは、三木里トンネルから三木崎灯台を往復するのに1時間半以上はかかっていた。その半分に加えてトンネルから三木里の駅まで歩く時間も加えなければならない。この区間は、バスに乗って往復したので歩くときの所要時間はわからないが、それを加えないといけない。実際の距離も、ここに表示されている距離のおよそ倍近くはありそうだ。こういう誤った情報掲示を放置しておくほうが、はるかに害が大きい。
 この手の看板情報は、誰が責任をもって書いてチェックされているのかよくわからないが、こういういい加減な情報が、どこにでも割と多いものである。
 駅から見える山は、ヤマザクラの淡いピンクが、緑の木々の間に映えて、こういう景色を見ると、たいした写真が撮れるわけでもないことはわかっているのに、ついカメラを向けてしまう。
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 その反対側の山は、大きく削られている。盛松の土でも想像できるが、この付近の山の花崗岩は、資源でもある。三木里と三木浦の間には、一筋の道が山に延びていて、そこは小脇町という集落がある。先にもふれた尾鷲市議さんのブログに質問して確認し得た情報によると、ここには採石場がある。
 そして、さらに先の尾鷲市の人口統計では、採石場の小脇町のデータ(平成23年6月分住民基本台帳人口)は、次のようになっていた。
 5世帯 人口8人 (男3、女5)
 年代別では 0〜4歳女1、40〜44歳女1、75〜79歳男2女1,80〜84歳男1女2

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 「太郎坂・次郎坂』の名は、志摩と紀伊の国境であるため「自領・他領」と呼び習わしていたのが転じてついた、と二木島駅にある先の案内板にはあったが、ここから“他領”へは5〜6キロの道を海岸づたいに行き、古江町、賀田町を過ぎて曽根町から峠に入ることになる。
 三木里駅から二木島駅へ向かう列車は、亥が谷と曽根と二つのトンネルを抜けると、熊野市へ入る。
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▼国土地理院 「地理院地図」
33度56分50.77秒 136度13分52.85秒
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dendenmushi.gif東海地方(2011/04/13 訪問)

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タグ:三重県
きた!みた!印(43)  コメント(6)  トラックバック(1) 
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きた!みた!印 43

コメント 6

okin-02

訪問有難う御座いました、
我がブログは、本日をもって翁の散歩日記-2011:07・10~
(URL:http://okina-1.blog.so-net.ne.jp/
移行継続して行く事に致します、今後もお付き合いの程・
宜しくお願い致します。
by okin-02 (2011-07-10 16:25) 

ナツパパ

子どもの頃家族で行った海水浴を思い出しました。
小さな町の民宿に泊まって2日間...その思い出に似ています。
おそらく、こういった町は日本全国あちこちにあったのでしょうね。
...過去形じゃなく、いまでもあるのでしょう。
わたしも行って泊まって、雰囲気を味わいたいものです。
by ナツパパ (2011-07-10 21:50) 

ぱぱくま

静かな入り江の街ですね。
今の季節は海水浴客で賑わいをみせているのでしょうね。
同じ日本でも我々の生活圏とは様子も違いますね。
いかに狭い所に人がひしめき合っているか痛感します。
by ぱぱくま (2011-07-10 23:00) 

dendenmushi

@okin-02さんのブログ、なつかしい雰囲気がたくさんあります。
 ジョロウグモもそうで、よくこれで遊んでいました。

by dendenmushi (2011-07-13 05:39) 

dendenmushi

@海水浴場って、考えてみればおもしろいですね。そうではない、そこいらの海で泳いでいるのが普通だったけど、やはり海水浴場へ行きたい、という気分がありました。
 ただ泳ぐんじゃなくて、おでかけすることがポイントなので、だから結構遠くまで行ってたんじゃないか…。
by dendenmushi (2011-07-13 05:42) 

dendenmushi

@確かに、こういうところへくると、東京は異常に思えてきます。でも、それこそがわれわれの生活圏なので、思ってみてもどうしようもないわけですが…。
by dendenmushi (2011-07-13 05:45) 

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