628 小泊岬=北津軽郡中泊町大字小泊(青森県)小泊岬とはオレのことかと権現崎 [岬めぐり]
十三湖の湖口からもうずっと見えていた小泊岬は、大きさからいえば中くらいの半島であるが、日本全図の地図でみても、すぐに探し当てることができるくらいに目立っている。鯵ケ沢から龍飛崎まで、緩いカーブながらほぼ真っすぐに南北に延びるすっきりした海岸線のうちで、唯一そこだけがぴょこんと突出している。
龍飛崎までは何度かきていても、小泊岬は長年の懸案のままで時が過ぎた。ここまでやってくるだけでも、なかなか大変である。以前は、龍飛崎からの路線もあったらしいが、それもとうにない。
小泊岬は、国土地理院をはじめ地図では、半島の南西側の灯台がある出っ張りを指している。そこへは、下前からのルートがいちばん確かそうだ。もっとも、岬の付近は崖になっているので、どこまで近づけるのかはわからないが、道はあるようだ。
立松を過ぎると、すぐに道沿いの家はまばらになり、しばらく行くと道路を柵で封鎖してありそこに1台の車が入れないまま停めてある。その柵をかいくぐると、人は入ることができる。通行止めがしてあるということは、あまり先へ行けぬということだが、かまわず進むと道は登り坂になる。
すると、崖が崩れていたので、これかと思うと、その先では道路が大きくひび割れて裂けている…。
これは大変だ! これでは、先へ進めない。
舗装道路が、途中で崩れ落ちてしまっている。パイプの柵もひっくり返っているし、割れ目には草が生い茂っているので、もうこうなってからも久しいのだろう。下のほうに降りる細い道も、途中で通行止めになっていた。
どうやらこれは、ちょうど中泊町ができた2005(平成17)年の台風14号の影響らしい。これで、地図では石碑の標識がある展望台や、灯台に近づく道は断たれてしまい、230メートルの尾崎山へ登る以外、小泊岬へのさらなる接近ルートはないことになる。山登りまですることでもないので、引き返そうとしているところへ、下の細い道を上がってくる3人の人がある。若い人で服装もラフだが、クリップボードのようなものを手にしているので、単なる遊びではないようだ。崩落の状況を点検確認にきた県庁か役場の人とか、そういう感じで、柵のところに止めてあった車に乗って行ってしまった。
たちまち生活に支障が出て困るわけでもないので、こういう不要不急の道は、いったんことあるとなかなか復旧されるまでに時間がかかる。観光資源としても、さほどの重きを成しているわけではないようだ。半島を周回する道は山道しかない。そこを歩く人はほとんどいないのだろうが、立松を経由して集落に戻ったところにあった観光看板には、一応ちゃんとルートが“東北自然歩道”として太く赤く示してある。これを見ると、簡単に歩けそうに思えるが、こういう安易なガイドは、百害あって一利ない。
青森県が立てたこの案内図では、この半島の先端を「権現崎」と称する一方で、“小泊岬南灯台”と“小泊岬北灯台”と両方を並記してある。
国土地理院は南の方にだけ名をつけているが、この日投宿した民宿には「権現崎」の観光ポスターばかりが張り出してあった。小泊岬は実際はなかなか複雑なようだ。
南灯台は崩落が進む崖の上の階段状になったわずかな平地に立っているらしいが、近寄ってはそれは見えず、遠くから写した写真には小さいながら確かに確認できた。
そこへも到達できなかったが、県の案内板には“キャニオンハウス”という表記があった。小泊岬の崖は、なるほどキャニオンのようである。地図ではそれらしき建物の上にある石碑も気になる。こんなところになんだろう。
中泊町のホームページで「小泊海岸地名」というページで探ってみると、なんとそれは“徐福上陸の碑”であるという。さらにライオン岩公園の近くには、“徐福の里・徐福の像”まであるではないか。
これには、ちょっと驚いた。徐福伝説のある地は、日本中に数多いが、こんな北の端の方にまで及んでいるとは、想像もしていなかった。
あれっ、この町のページでは“小泊岬(権現崎)”として、南側の突端に表記がされている。やっぱり、小泊岬は複雑である。
再びバスに乗り、半島を山越えで横断して小泊の町に出る。この山越えの峠道も深いが、太宰治の乗ったバスが通った道も、山越えのところは今の339号線ではなく、こちらの下前からの道だったのかも知れないと思えてきた。
昔読んだ『津軽』では、道のことはどう書いていたのか、記憶にない。確認しようと思ったが、本がどこかに紛れて探し出せなかった。それよりも、iPadのi文庫で見ればいいのだった、と気がついた。
ところが、iPadで改めて読んでみると、これでは記憶にないわけだ。大宰は、十三湖から小泊に着くまでの部分は、なんと「国防上たいせつな箇所になるので、れいに依って以後は、こまかい描写を避け」てしまっていた。
▼国土地理院 「地理院地図」
41度7分28.13秒 140度14分56.70秒
東北地方(2010/06/30 訪問)
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