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622 塩見崎=西津軽郡深浦町大字追良瀬・大字驫木(青森県)地形図を読んで想像が広がる [岬めぐり]

 キンモクセイが肉厚のくせにか細い花をつける頃は、毎年例外なく雨に叩かれて、短い命をさらに急がされてしまう。今年もまた花散らしの雨が降る先日の休日、iPadで青空文庫を読んでいた。たまたまそのなかに、寺田寅彦の随筆『地図をながめて』があった。そのなかで、自然地形の様子をもし文字や言葉で表現しようと思うととんでもない難事になる、という意味の文章に続く一節にこうある。
 
 (前略)それが「地図の言葉」で読めばただ一目で土地の高低起伏、斜面の緩急等が明白な心象となって出現するのみならず、大小道路の連絡、山の木立の模様、耕地の分布や種類の概念までも得られる。
 自分は汽車旅行をするときはいつでも二十万分一と五万分一との沿線地図を用意して行く。遠方の山などは二十万分一でことごとく名前がわかり、付近の地形は五万分一と車窓を流れる透視図と見比べてかなりに正確で詳細な心像が得られる。しかしもし地形図なしで、これだけの概念を得ようとしたら、おそらく一生を放浪の旅に消耗しなければなるまい。

 
 でんでんむしの地図好きの理由も、まさにこれにつきるわけだが、でんでんむしが書いてもありふれた当然のことであって誰も感心しない。だが、同じことでも、科学者で文筆家だった寺田寅彦が言えば、誰もが納得することだろう。
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 五能線の海岸美を乗客に楽しませるために徐行するという「リゾートしらかみ」は、容赦もなくスピードあげていく。夕方の便は、もう千畳敷にも停車しないので、鯵ケ沢まで一目散に走るのが当面の目標となっているらしい。また、深浦を過ぎて北寄りには、もう五能線の海岸美はないということなのだろうか。日暮れでしかも空模様も怪しくなって、車窓のガラスにわずかな水滴が散ったりする。
 そんなわけで、車窓から透視図を眺めるには、えらく悪い条件が揃ってしまった。
 鯵ケ沢までの間に、すでに訪問済みで項目に上げている018 大戸瀬崎=千畳敷以外にも、この塩見崎と、鳥居崎、弁天崎と3つもの岬があるのだが、これでは、いい写真は撮れそうにない。
 もともと記録のための写真である、ということにのみ意義があると割り切っているので、いい写真、芸術的な写真、きれいな写真を撮ろうというつもりもない。それでも、いちおう公開してもいいくらいのレベルは確保したいところだが、これから624項までしばらくは、それもあきらめなければならない。
 …と、言い訳がすんだところで、忘れちゃいけない塩見崎。
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 遠くから見たのと、近づいて見たのとでは、だいぶ違って見えるが、40メートルの山が海岸にぴょこんと飛び出していて、その先には黒島という名のある岩島が浮かんでいる。五能線は崖と海岸の間の隙間を、北へ向かってまっすぐ進むと、間もなくトンネルに入って塩見崎を越えて行く。
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 この岬が、深浦町の大字追良瀬(おいらせ)と大字驫木(とどろき)という地区を分けている。塩見崎の南、1.5キロほどのところにも岬があって同じようにトンネルもあるが、ここは無名。
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 しかし、塩見崎には島以外何もないが、この岬は追良瀬川の河口にあって、その付近には追良瀬の集落と追良瀬駅まである。おまけに、国土地理院の地図では、旧地名としてはここに塩見崎という名がある。追良瀬川が北から西へ向きを変えていく付近には、塩見山(539メートル)もある。
 さて、こうなると、でんでんむしお得意の揣摩憶測が羽根をはやして羽ばたいていくのである。
 この無名岬は、河口の土砂の堆積が進む前は、小さな湾の北側をつくって南西向きに海に飛び出していた台地の先端であっただろう。そして、この岬のほうこそが、本来の塩見崎であったのではないか。
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 それが堆積が進み、湾が埋まっていくと、その名が北のほうの岬に移っていった…。その理由がなにかは不明だが、そうした地形の変化と関係があったとしても不思議ではない。地形図を読んでいくうちに、もくもくと広がってきた、勝手な憶測である。
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 追良瀬川は、青森県の反対側に流れ出している奥入瀬川とは、ナンの関係はないのだろう。途中にダムもできて水量は多くないこの川がまた、なかなか大変な川であるらしいと、地図を眺めていて思われる。
 秋田県との県境の白神山地から源が流れ出し、白神岳の東側の長い谷を、左右から流れ込むいくつもの沢をあわせ、小きざみな蛇行を繰り返しながら、V字谷を北へ下っていく。河口まで全長33.7 km、渓谷を歩く道もないところが多い。これは、地図でみる限り、なかなかの秘境ではないか。
 スピードを上げて走り抜ける列車の窓から川を眺めるだけで、地図があればその上流から源流まで、空想が展開していくのだ。

▼国土地理院 「地理院地図」
40度41分55.61秒 139度58分6.30秒
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dendenmushi.gif東北地方(2010/06/29 訪問)

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タグ:青森県 地図
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