588 ダンノ鼻=大飯郡高浜町神野浦(福井県)撮るなと言われても人家のそばにある高浜原発 [岬めぐり]
高浜町は、福井県の最西端の町である。役場のあるJR若狭高浜駅駅付近が町の中心部で、若狭湾に面した海岸部と、西の内浦湾周辺まで、隣のおおい町と比べるとこじんまりしている。人口もおおい町より少し多い1万人を超える程度で、原発のおかげで財政的に恵まれていることも共通している。
しかし、町のホームぺージでは、原発の紹介やPRはおろか、「リアス式海岸の特徴を示す内浦地区には原子力発電所があり」とあるきりで、実にそっけない。
海岸には洞門もある岩場の出っ張りもあって、砂浜とセットで景勝の地になっているらしいので、当初はそこに泊ることも考えてみたのだが、意外なことに大島半島の付け根から内浦湾までには、ひとつの岬もない。つまり、ここに泊るのはコストパフォーマンスが悪い。“若狭富士”とも呼ばれている青葉山の東を、ひたすら歩いている。
名島を過ぎて、橋にかかると、若狭湾から海水を取り入れる取水口があり、大量の海水が冷却水として役割を果たすためにとうとうと流れていく先には、なにやら巨大な構造物がある。こんなに間近で原発が眺められるのは、おそらくここだけではないだろうか。
カメラを向けていると、入口の警備の人が飛んできて、写真を撮るなという。ちょっと、それはおかしいんじゃないのかといいたいところだが、いちおう「テロ対策の必要から」と理由を言われたから、素直にやめた。けれども、テロを考えている連中なら、とっくに写真どころか見取り図か設計図くらい手に入れてるはずですよ。
テロ対策は、隠すことでは達成はされず、すべて公開し、知らせることで、地域のなかで幅広い理解を得ることでしか完成しないと、素人考えでは思うのである。
ダンノ鼻は、高浜町最初の岬で、149号線を北上し、高浜原発の威容を橋から眺め、田ノ浦のトンネルを抜けると、湾のなかにポッカリと浮かぶ姿が飛び込んでくる。160メートルほどのピークがあり、そこには地図ではしっかりした道と石段のようなものまであるが、岬は無人地帯。
その内懐のように奥まったところに、神野浦(こうのうら)の集落がある。そして、そこから数百メートルも離れていないところに原発がある。高浜原発は、最も人家に近いところにある原発である。そういう意味では、まったく人里離れたところにあるわけでもないし、隔離されているわけでもない。
高浜原発のある場所は、田ノ浦という字地名があり、若狭湾と内浦湾をつなぐ場所なので、ここも昔から無人であったとは考えられない。
トンネルを出たところにも、管理施設のような大きな建物が数棟あって、その門から何台もの黒塗りのタクシーが出入りしている。社員の通勤バスの時間が終わったら、今度は来客や業務で原発を訪れる人も多くなるというわけだ。
おおい町のような“にこにこバス”もない高浜町は、この内浦地区の交通手段の維持責任を放棄しているようだし、関西電力は社員を運ぶバスはたくさん走らせても、地元のために交通サービスの便宜を図ろうとするような発想もないらしい。
社用でタクシーに乗るわけでもないこの地区の人は、自分の車がなければどこへ行くこともできない。
これは、少しばかり特異な状況のように思われる。
ダンノ鼻という名から、すぐに連想したのは、“ダンゴ鼻”だが、それは関係ないだろう。
▼国土地理院 「地理院地図」
35度31分48.03秒 135度29分28.12秒
北信越地方(2010/06/07 訪問)
タグ:福井県
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