517 灰方崎=須崎市浦ノ内灰方(高知県)横浪三里はなかなかふしぎな場所なんです [岬めぐり]
高知市の浦戸湾と紛らわしいが、浦ノ内湾という名のほうが正式名称で、「横浪三里」というのは通称であるらしい。通称といえば、この湾を南で土佐湾と隔てている壁のような半島には、名前が地図などにないということを前に書いていたのだが、どうやらこれも一般には「横浪半島」と言われているようだ。
横浪三里という名は、何となく想像をかき立てる。もっぱら地図旅行しかできなかったこどもの頃から、その名はしっかりと覚えていた。“三里”というのは、その距離や規模を示しているものだとは、すぐに想像できるが、では“横浪”とはなんだろう。横浪(横波)という言葉は確かにあるが、それがここで意味するものはナンだろう。
調べようとしてみたが、これがわからない。
前項で、この湾のふしぎな地形は、陥没沈降によってできたものだろうという仮説を述べたが、もしそうなら、この湾の水深はさほど深くはないのではないか。それを専門的に裏付ける情報はないだろうか。また、これに対して、横浪半島の地形は、海から大きく盛り上がったことを思わせる。
それらについても、ネットで調べる限りは、きちんとした情報が得られない。自治体や観光協会などの情報も、なぜかたいていは簡単過ぎてほとんど中身がなく、知りたがり屋を満足させるものではない。こういうとき、でんでんむしが頼りにするのがwikipediaなのだが、横浪三里という項目さえない(探せない?)のである。
2010/03/04のashi.comの情報によれば、wikipediaの管理人も書き手も少ないこと、日本ではその内容も芸能界情報に偏り過ぎているのだという。それを読んだときにも、一瞬おっちょこちょいは、じゃあ一肌脱ごうか…という気分になりかけたのを、かろうじて思いとどまった。
先だってのチリ地震津波にさいしては、テレビは一日中赤い線で囲まれた日本列島を画面に出していた。津波の状況を太平洋岸の各地の港から中継していたが、須崎港もNHKでは何度か映し出されていた。これが、高知港ではなく、なぜ須崎港なのか。
実はそれにもちゃんとした理由があるのである。それこそが、でんでんむしの仮説を証明できるできごとであるはずなのだが…。
宇佐大橋を渡って左へ川を越えると、もう須崎市で、そこには埋立という小字地名があるから、この海岸は埋立でできたところなのだろう。そこは「浦ノ内灰方」といい、浦ノ内湾を囲む地名には、すべてこのように湾の名が冠してある。
「いやぁ、ちょっとわかりにくところなのでご案内します」といいながら運転席を降りてきた宿の人に導かれて、工場か倉庫かなにかのような建物の前をずんずん入って曲りこんだところで堤防切の切れ目があり、その前に小さな建物がある。「ここが巡航船の乗場です」という。なるほど、こりゃ知らない人間にはわかりっこない場所だ。
ここまできて、かけられた看板を見て、やっと初めてそうだとわかる。看板の文字の字間が変なので一見「埋立市」のように読めるが、「須崎市営巡航船」の「埋立(乗船場の)待合室」の意味である。
ドアを開けて中に入ると狭い待合室だった。先客の男の人が2人いて「おはようございます」というので挨拶を返す。なにはおいても、まず壁に貼ってある時刻表とあらかじめ調べてきた情報に違いがないかを確認する。これを確かめておかなければ、とんでもない目に遭うという経験を何度かして、そこから学んだ。
ほかにルートはないかとチェックしてみたが、やはり一日4便の便数が増えているわけもなく、船で湾の奥の終点まで行ってしまうと帰れない。予定通り、湾の中程の長崎まで行って、そこでいったん下船する。そして、反対側から来る埋立行きの別の船に乗り換えて戻ってくる。
それしか、方法がない。堤防の切れ目のところに小さな船が停まっている。これが須崎市営の浦ノ内湾を結ぶ唯一の公共交通機関である。「巡航船」という呼名がまたいいねぇ。
船の背後に見えているのが埋立地で、水産試験場などがあるらしいが、その先端も、灰方崎という岬である。
灰方崎の写真も、走る船の上から撮ったつもりだったのに、よくみるとこれがほとんどなかった。
その反対側から突き出ているのが、大崎ということになる。
先ほど、待合室にいた人は、この巡航船の乗組員だった。乗客は、ほかにはおばさんが1人。おそらく、採算がとれないからと廃止してしまうわけにはいかないのである。採算は度外視しても、市営でこの航路を守らなければならない大きな理由がある。
浦ノ内湾はその独特の地形が影響していることもあるが、沿岸にはほとんど平地がない。埋立のような場所もあるが、それも少ない。山と山に隔てられた谷筋に、ぽつぽつと集落が点在するが、それを結ぶ道路も北側ではなんとかつながっているという状態である。
朝と午後の便は、学校と家を結ぶ貴重な通学路になっているようだ。
(2010/03/06記 2010/03/21Vol.2から移転統合)
▼国土地理院 「地理院地図」
33度26分26.52秒 133度25分25.31秒
四国地方(2010/01/22 訪問)
横浪三里という名は、何となく想像をかき立てる。もっぱら地図旅行しかできなかったこどもの頃から、その名はしっかりと覚えていた。“三里”というのは、その距離や規模を示しているものだとは、すぐに想像できるが、では“横浪”とはなんだろう。横浪(横波)という言葉は確かにあるが、それがここで意味するものはナンだろう。
調べようとしてみたが、これがわからない。
前項で、この湾のふしぎな地形は、陥没沈降によってできたものだろうという仮説を述べたが、もしそうなら、この湾の水深はさほど深くはないのではないか。それを専門的に裏付ける情報はないだろうか。また、これに対して、横浪半島の地形は、海から大きく盛り上がったことを思わせる。
それらについても、ネットで調べる限りは、きちんとした情報が得られない。自治体や観光協会などの情報も、なぜかたいていは簡単過ぎてほとんど中身がなく、知りたがり屋を満足させるものではない。こういうとき、でんでんむしが頼りにするのがwikipediaなのだが、横浪三里という項目さえない(探せない?)のである。
2010/03/04のashi.comの情報によれば、wikipediaの管理人も書き手も少ないこと、日本ではその内容も芸能界情報に偏り過ぎているのだという。それを読んだときにも、一瞬おっちょこちょいは、じゃあ一肌脱ごうか…という気分になりかけたのを、かろうじて思いとどまった。
先だってのチリ地震津波にさいしては、テレビは一日中赤い線で囲まれた日本列島を画面に出していた。津波の状況を太平洋岸の各地の港から中継していたが、須崎港もNHKでは何度か映し出されていた。これが、高知港ではなく、なぜ須崎港なのか。
実はそれにもちゃんとした理由があるのである。それこそが、でんでんむしの仮説を証明できるできごとであるはずなのだが…。
宇佐大橋を渡って左へ川を越えると、もう須崎市で、そこには埋立という小字地名があるから、この海岸は埋立でできたところなのだろう。そこは「浦ノ内灰方」といい、浦ノ内湾を囲む地名には、すべてこのように湾の名が冠してある。
「いやぁ、ちょっとわかりにくところなのでご案内します」といいながら運転席を降りてきた宿の人に導かれて、工場か倉庫かなにかのような建物の前をずんずん入って曲りこんだところで堤防切の切れ目があり、その前に小さな建物がある。「ここが巡航船の乗場です」という。なるほど、こりゃ知らない人間にはわかりっこない場所だ。
ここまできて、かけられた看板を見て、やっと初めてそうだとわかる。看板の文字の字間が変なので一見「埋立市」のように読めるが、「須崎市営巡航船」の「埋立(乗船場の)待合室」の意味である。
ドアを開けて中に入ると狭い待合室だった。先客の男の人が2人いて「おはようございます」というので挨拶を返す。なにはおいても、まず壁に貼ってある時刻表とあらかじめ調べてきた情報に違いがないかを確認する。これを確かめておかなければ、とんでもない目に遭うという経験を何度かして、そこから学んだ。
ほかにルートはないかとチェックしてみたが、やはり一日4便の便数が増えているわけもなく、船で湾の奥の終点まで行ってしまうと帰れない。予定通り、湾の中程の長崎まで行って、そこでいったん下船する。そして、反対側から来る埋立行きの別の船に乗り換えて戻ってくる。
それしか、方法がない。堤防の切れ目のところに小さな船が停まっている。これが須崎市営の浦ノ内湾を結ぶ唯一の公共交通機関である。「巡航船」という呼名がまたいいねぇ。
船の背後に見えているのが埋立地で、水産試験場などがあるらしいが、その先端も、灰方崎という岬である。
灰方崎の写真も、走る船の上から撮ったつもりだったのに、よくみるとこれがほとんどなかった。
その反対側から突き出ているのが、大崎ということになる。
先ほど、待合室にいた人は、この巡航船の乗組員だった。乗客は、ほかにはおばさんが1人。おそらく、採算がとれないからと廃止してしまうわけにはいかないのである。採算は度外視しても、市営でこの航路を守らなければならない大きな理由がある。
浦ノ内湾はその独特の地形が影響していることもあるが、沿岸にはほとんど平地がない。埋立のような場所もあるが、それも少ない。山と山に隔てられた谷筋に、ぽつぽつと集落が点在するが、それを結ぶ道路も北側ではなんとかつながっているという状態である。
朝と午後の便は、学校と家を結ぶ貴重な通学路になっているようだ。
(2010/03/06記 2010/03/21Vol.2から移転統合)
▼国土地理院 「地理院地図」
33度26分26.52秒 133度25分25.31秒
四国地方(2010/01/22 訪問)
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