496 鼻繰崎=東津軽郡平内町大字東田沢(青森県)ホタテとツバキの夏泊半島の東側 [岬めぐり]
この「鼻繰り」という名の付いた岬も、いくつかあるが、その意味が不明だった。あるとき、なにかの拍子にそれがわかった。「鼻繰り」とは、牛の鼻につける、あのワッカのことだった。
そこにひもをつけて、牛の鼻面をコントロールするのだろうが、あれが鼻繰りだったのだ。(「鼻繰り」については、岡山の玉野市で「鼻操鼻」という岬に遭遇したときにも、関連で書いていたが、結局は同じ意味なのかも知れない。)
しかしながら、ではどうしてそれが岬の名になるのかという点については、あいかわらず不明である。あるいは、岬が牛の頭のように見え、その先端が鼻繰りにあたるから…というのも、考えられないこともないが根拠薄弱である。もっとも、岬の名前など、根拠薄弱なものばかりであって…。
鼻繰崎は、夏泊半島東海岸のなかほどにあり、これより北はもう先端の夏泊崎まで行かないと岬はない。だが、バスは東田沢が終点で、今回は時間がなく日も暮れてきたので、ここから引返すしかない。
ヒラナイというのは、アイヌ語で山から川が流れ出るところの意があるというが、そんな場所は日本中のどこにでもあてはまる。だが、いわれてみれば、そう大きくもない300メートルちょっとの山が最高点という夏泊半島で、どこもかしこも川が海に向かっている。これはめずらしいかも…。ここ東田沢にも長沢川が流れ、その河口に集落と港が固まっている。
海岸に青い網のようなものがたくさん積み上げてあったが、これはホタテの養殖に使うものだろう。陸奥湾のホタテはつとに有名だが、それらホタテ漁の基地の多くはこの平内町にあるらしい。
町のホームページによると、『青森ホタテは昭和45年以降100億円産業としてのし上がってきた。「ひらない」もこの頃からホタテ養殖が軌道に乗りはじめ、漁業経営体数も43年から3倍に増え出稼ぎも減少している。現在、ホタテ王国 ひらない は養殖ホタテ水揚げ高日本一の生産量を誇っています。』とあった。
ホタテの養殖は当初は稚貝を海底に撒く方法から始まったが、今では牡蛎などと同じような棚に吊るす養殖方法が開発されているようだ。それで飛躍的に生産量が増え、そのおかげで冬も出稼ぎに行かないですみ、家族で暮せるようになったという話は、ちょっと泣ける。
スシネタでも貝類はだめなでんでんむしも、ホタテだけは好きなので、来るたびに陸奥湾のホタテを…と思いながら、いまだに現地では遭遇の機会を得ない。
陸奥湾の北を遠く望めば、中央遠くには津軽半島の東側、右に下北半島の北海岬、左に椿山の出っ張りがある。ここも椿川が流れ椿山があり、椿神社があるが、ツバキ自生北限地帯なのである。これも、秋田県の男鹿半島に同じような主張をしている椿という場所があって、そこでも「なぜ “北限地帯”が二箇所もあるのか」(162 金崎=椿(秋田県)「ツバキ自生北限地帯」の怪)という疑問を呈していた。これはまだ、未解決。 いずれにしても、照葉樹林帯の花形であるツバキもここが北限ということは、日本の山野の植生を特徴づけている照葉樹もここまで、ということだ。
さて、今回の下北半島三度目の訪問も、夏泊の半分だけで終わってしまった。こういう変則的なコース取りになったのも、全体に交通不便で計画が立て難かったためである。
ほんとうは、青森と佐井を結ぶ船に乗って、夏泊の西海岸も…と考えたし、大湊から脇野沢の間の岬もと欲張ってみたのだが、どうやっても計画がうまくいかない。3日ではこのへんまでが精いっぱいだった。
裏返せば、思うようにならないところも、ハプニングで計画が狂うところも、ときに行き当たりばったりなところも、これがまた電車とバスとてくてく歩く岬めぐりの醍醐味なので…。多少弁解じみて聞こえるが、それは事実なのです。
▼国土地理院 「地理院地図」
40度59分41.69秒 140度56分22.68秒
東北地方(2009/09/10 訪問)
タグ:青森県
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