491 津鼻崎=下北郡大間町大字奥戸・佐井村大字佐井(青森県)「ごらんあれが竜飛岬北のはずれと…」 [岬めぐり]
津鼻崎の先端は、二つの岬に分かれていた。これがまた、柱状節理の直立して天をめざす岩とあいまって、独特の景観をつくりだしている。南側からでは、こういうふうには見ることはできなかった。
先端での高さは10数メートル程度だが、周りのススキの原と、南西約40キロのかなたには、写真ではあまりはっきりしないが龍飛崎(045 龍飛崎(青森県))とおぼしきあたりが見える。南西ということは、ここでもまだ津軽半島の先端より緯度はこちらのほうが高い。
実を言えば、「ごらんあれが竜飛岬北のはずれと…」というのは、「津軽半島では北のはずれ」という肝心なところを省略し、下北半島のほうには目を向けさせない、作詞家の巧妙なフィクションなのである。
また、少し北寄りに目を転じれば、北海道最南端の白神岬(150 白神岬(北海道)ここが北海道最南端だよ〜)もなんとか確認できる。津軽海峡の雄大な景色が、岬の様子となかなかうまくマッチしている。
ここには、歌碑もなければ説明板もない。崖の上に壊れかけている古いコンクリートの柵以外は、人工的なものはなんにもない。
観光ルートにも入っていないので、ほとんどやってくる人もいないであろう。
津鼻崎は大間町と佐井村の境界線を形づくっている岬である。材木山という山の尾根が、西の海に張り出し、南側には小さな湾を抱え込んでいる。
こういう場合、北側からでは岬の全貌は見えないだろう。南側へ回り込めば、雄大な岬の形が見えるのかも…。そんなことをあれこれ想像しながら、徘徊ルートを模索する。
佐井行きのバスも、ここまで来るほとんどの客は降りてしまうので、車内はがらがらで、一人だけいた他の乗客も奥戸の付近で降りてしまい、また一人になった。
材木という集落の停留所で降りるか、それとも次の停留所のほうが南からの岬の眺めがよいのか、地図を見ているとさまざまな可能性も想像される。ほかに誰もいないので念のために、津鼻崎へ行くにはここでいいのかと、運転手さんに聞いてみた。
すると運転手さんは、ここでいいと請けあってくれ、「そこのバス停に地図か何かあったと思う」と教えてくれた。
なるほど、赤いベンガラのような塗料で塗られたバス停小屋のなかには、こんなものが…。おそらく、運転席からちらりと見えた地図のようなものとは、このことだったのだろう。なによりも注目すべきは、この年号。「昭和37年」ですよ。57年ではありません。こりゃ、驚いたな。この年に生まれた人は、今や47歳のおじさん・おばさんですよ。でんでんむしは、広島から大阪へ転勤した頃だ。まるで、時間が止まっているような思いに、しばし動けない。
小屋には「津花崎」と書いてあった。そりゃまぁ、「鼻」より「花」のほうがきれいだからね。それに「鼻」がすでに「崎」の意味をもっているとすれば、「○鼻崎」という命名表記は、屋上屋といえなくもないし…。
マサカリの刃に当たる部分は、北部の一部を例外としてそのほとんどは切り立つ断崖絶壁が続く。それを北で最初に予告しているのが、ここなのだ。
材木の集落では、お祭りの祝い飾りを玄関にさげた家があるが、その数はそう多くない。すると、羽織袴の老人がひょいと出てきた。材木川の北側には、神社があるので、そこの秋祭りなのだろうか。
集落の道はすぐに港の高い岸壁にぶち当り、岬の側は断崖で、北には道がない。それでもどこかに山へ登って崖の上に出る道があるはずだと、よくよく崖を眺めて見る。すると、一軒の家の玄関前に上った道から、石段が続いているようだ。
その階段は、石段ではなくコンクリートだったが、ほとんど通る人もないらしく、行き倒れ蛇の骸の左右から、クズなどの植物が生い茂っている。それらを、踏み分けかき分け上っていくと、平坦な道に出た。そこが材木山の中腹で、やはり入口は別にあったようだ。
岬の北側には、大間が望めるが、その手前にクレーンなどが立っている工事現場がある。そこ奥戸では、大間原子力発電所の建設が進んでいる。
帰りのバスまでは、また時間がかなり開いている。帰り道はそちらに足を向けて、ぶらぶらと山道を散策するつもりで歩いて行くと、散策する間もなく公園と墓地に出てしまった。
そのすぐ下がバスが通る垰道で、そこへ出てみると、大間と佐井の境界道路脇にこんな大きな(こういうのをなんと呼べばいいのだろう)看板のような標識のようなものが建っていた。
そうだ。「なずな」だったのだ! (今頃遅いですが、気がついたというより、思い出したというより、この看板で教えてもらったわけです。田畑智子さんが演じた、シングルマザー役の名前でした。NHKの朝ドラで、大間を舞台にした『私の青空』が放映されたのは、2000年度の前半で、横審委員の内舘牧子脚本だったのですね。)東北地方(2009/09/10訪問)
41度28分6.27秒 140度52分59.83秒



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