486 細間崎=下北郡大間町大字大間(青森県)人間みんな一人旅ですからねぇ [岬めぐり]
フェリー乗り場の東隣にあるのが細間崎だが、ここは港の中に取り残されたような防波堤の岬である。ただ、その防波堤も、もともとあった岩礁の出っ張りを利用したようだ。
まだ明けきらぬ薄闇に、その姿はあまり判然とはしない。写真のトーンを変えてみると…。
細間は、大間に対する名であろう。大間の町は、漁港に沿うように細長く延びていて、そこからは急な坂になりつつ後背地が広がる。山に少し入ったところには、町営か公営みたいな温泉施設もできているので、そこに泊るつもりだった。
オンライン予約はやっていないので、電話して一人だというと「ゲームセンター脇の四畳半なら空いている」という。しかも、料金は標準料金とおんなじだというから、まったく一人の客は歓迎しない、どうでもいいという扱いだ。これだから、和風方式旅館はヤなんだよね。ゲーセンも夜中じゅうやっているわけではあるまいから、割り切ってそこに泊まるという選択もあったのだが、我慢すれば結局気分良く過ごすことは不可能だ。シングルがあるホテルのほうが、はるかにいい。
もうだいぶ前のことだが、急に思い立って正月を群馬の四万温泉で過ごそうと、妙な気を起こしてしまった。今、問題の八ッ場ダムも反対運動でごたごたし始めた頃で、吾妻渓谷の川原湯温泉も、すでに影が薄かった。
草津ならとうていムリでも、中之条から奥に入る四万ならなんとかなるかと、電話をかけた。当然ながら、たいていは満室だと断られたが、数件目で部屋は取れるという。そこで、ラッキーと予約し、行ってみたらなんとこれが、通常は布団部屋か何かのように使っているらしい変な場所の四畳半に、夫婦で押し込められた。これも、そんな時期に行こうとするのが悪いのであって、半分はいたしかたない。ま、夫婦で四畳半も、状況によっては悪くはないのだがねぇ。
それを思えば、ここは事前に「四畳半なら空いている」と情報を提供して了解を得ようとするだけ、まだ良心的だ。公営の場合には、比較的一人旅の客を差別することは少ないはずなのだが…。
サービスや応対がどうのというよりもなによりも、設備の設計自体が、新しくできたくせに最初から一人客を念頭に入れていない。そこが問題なのだ。
ならばいっそビジネスホテルのほうが、と思って泊まった大間のホテルは、細間崎から少し上ったところにある。ここも、それなりだったが、あらぬ期待もしないし、あきらめがついてさっぱりするので、かえってマシというものだ。
町の中心からはずれているが、それこそ最北端の大間崎にも数軒の民宿がある。そこに泊まることも検討はしたのだが、こういう場所は吹きっさらしであろうし、それに民宿という中途半端さが、どうも馴染めないところもある。
これが、大間のマグロ漁がシーズンに入っていて、とれたてのマグロを賞味できるというのなら、民宿でそれを体験してみてもよかったのだが、それもまだ時期でない。
いつの間にか観光庁なるものまでできているし、前原大臣も“観光立国”を謳い上げた。内需拡大の一助…というより、本音は中国人旅行者の大幅増に期待をかけているようである。
だが、国内観光の実態は、中国人が行くようなところはまだしも、総合的にみてお粗末だ。もっと日本人が一人でも、観光地ばかりでなく地方の隅々にでも出かけ、その地域の活性化にもつながるような、新たな発想としくみこそが必要なのであって、中国人にばかり気をとられていて、本質を見失ってはいけない。
最近のニュースでは、山で遭難するのも、ハングライダーで墜落するのも、カヌーで流されるのも、みーんな60代以上ばかりではないか。
そうした中高年のニーズも、迷いつつ模索しつつ漂流している。それも、旅行会社が立てたツアープランにのっかったものが中心で、受け入れ側も相変わらず観光といえば団体で儲けようという発想しかない。“ノーキョー”さま御一行がメインであった時代と、ツアーの団体優先という枠組みはほとんど変わっていない。
それに、バスでやってきて、いわゆる観光ポイントだけをめぐり、ちょっとトイレを借りて、またすぐ去っていく団体に、地元やその地域が恩恵を得ることは少ないはずである。
一泊ン万円も取る高級温泉旅館ならどうかといえば、これがまた一般的には昔から一人客は取らないという不文律があるらしい。自殺者でも出ると迷惑だからというのが本音だと聞いたこともあるが、満室だという理由で、ていねいにお断りされるのが普通である。
部屋の広さは四畳半でもいいけれど、それが布団部屋やゲーセン脇ではなく、メインの設備になる時代がきて、はじめて日本の国内旅行にも新しい可能性が生まれ、地方の地域の隅々にまで新たな活性化をうながすことになるはずなのだ。
夫婦やグループで仲良くというのもいいが、それだっていつかはひとりになる。
人間みんな一人。人生はいつも一人旅ですよ。
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東北地方(2009/09/10 訪問)
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