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474 松尾鼻=玉野市八浜町見石・岡山市南区郡(岡山県)海原をせきし児島湖の光と影 [岬めぐり]

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 松尾鼻というのは、まったく目立たない岬で、玉野市と岡山市の境界あたりの道路際に、わずかに児島湖に向かって飛び出たところである。境界線になっているということは、怒塚山からの尾根が延びて落ちるところでもあり、それが岬の名が残る所以でもあっただろうが、もうひとつは児島湖の干拓以前のことも想像してみなければなるまい。
 「児島」も文字通り島だったわけで、この付近では唯一の岬の名は、島だった時代からのものだったのかもしれないのだ。
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 松尾鼻の南は弓状の埋立地ができているし、北側に広がる埋立地は岡山市の木材工業団地ができている。そのため、今では地形的な特徴は失われ、道路を通ってもほとんどそれとわからないうちに過ぎてしまう。
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 この八浜という地名に、こどもの頃から聞き覚えがあるのは、ここに叔母一家が暮していたことがあったからだった。
 数少ない親族の住んでいるところは、重大な意味をもつ。たとえば、当時のように誰も気軽に旅行などできなかった時代でも、うまくいけば夏休みを叔母さんの家で従弟たちと過ごすという願ってもない幸運が巡ってくるかもしれない。もちろん、経済状況からすると巡ってこない公算の方が大きい。
 税務署に勤めていたらしい叔父の転勤で、この前後に尾道、八浜と移り住んでいた。どっちが先だったか記憶が定かでないが、とにかく八浜には行けず、尾道の向島ではひと夏を過ごした。
 しかし、バスで通り抜けながら考えると、こういってはなんだが、税務署を置く必要があるような町ではない。まあ、向島でも同じことで、家がそこにあったということなのだろう。しかしまた、当時はそれこそ干拓事業関連で、税金を集めるに重要な地であったのかもしれん。とにかく、ここは人工湖では世界で2番目に広いというのだが、さほどのようにも思えない。
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 児島湾の干拓が計画されたのは、もう60年以上前のことだから、かなり昔のこと。児島湾を中程から締め切り、堤防が完成して淡水化されたのは、1959(昭和34)年のことである。締切り堤防といえば、諌早湾のを思い出す。長良川の河口堰もあるが、並んだギロチンが連続して落ちるようなその瞬間の映像が、テレビで流されたので印象深い。
 児島湾が締め切られた頃は、この事業はあくまでも世紀の偉業として世間では思っていたに違いない。教科書などに写真が載っていたような気もするが、それもそのすばらしい人類の業績例のひとつとして、であった。
 閉鎖性水域の環境問題として水質汚染などが問題視されるようになり、人間が自然を勝手に変えることへの畏れと自省が生まれるのは、ずっと後のことになる。
 目の前の島を陸続きにしたうえで、できた内湾の半分を干拓して濃地にするという知恵が、近代から始まったものではないことは、これまでも何度かふれてきた。
 この項で終りとなる今回の岡山県西部シリーズでは、最初から干拓で始まり、干拓で終ることになる。
 前回、児島湖を訪れたのは、7年前のことである。そのときには、締切り堤防の一部に設けられた資料展示室のようなところも見学したので、そのときの写真も引っ張り出して、いっしょにくっつけているが、そのなかの一枚にこんなのがあった。
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 また、締切り堤防では、ひときわでかい一枚岩の歌碑が目立っていた。それは、その完成にさいしてここを訪れた、昭和天皇の歌であった。
  海原をせきし堤にたちて見れば しほならぬうみにかはりつつあり
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 完成してしばらくは有料道路だった堤防の上を、バスは一路岡山駅に向かって走る。一度来たことがあるというだけでも、沿道の景色にも見覚えがあるというのが、なんとなくうれしい。
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 岡山駅前は、何度か来ているが、桃太郎の銅像の写真を撮ったのは初めて。おみやげに広栄堂のきびだんごを買って乗り込んだ新幹線は、満員だった。なのに、でんでんむしのA席の隣BC2席だけが空いている。
 大阪か京都で乗ってくるのかと思えば、誰も来ない。では名古屋からだろうと思うと、結局名古屋でも誰も来なかった。
 この新幹線の座席指定配分というのも、どういうしくみになっているのか、なかなかふしぎなものだ。だいたいにおいて早く指定を取ると、車両の中央あたりになる。
 会社に勤めていた頃は、規定にしたがって東京=新大阪間をグリーン車で移動していたが、これが乗客はまばらでも、中央に数人が固まってしまう。へそまがりはそれがいやで、いつも誰もいないはじっこの席に移動していたが、あるとき通路の反対側に同類らしい人がひとり座っている。横目で見ると、これがその当時はまだ人気再復活でテレビに出たりツアーをやったりするようになる前の舟木一夫その人だった。
 新幹線は、暗くなった東海道をひたすら東へ走っていたが、熱海の手前で新丹那トンネルを走行中に、突然シューと音がして電気が消え、徐々にスピードが落ちるとすぐ停止してしまった。
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 地震があちこちで頻発していたので、そのせいかと思ったが、トンネルの中で列車が止まってしまうのは、いささか不安になる。トンネルで停電、真っ暗(というのは極端で、非常灯はついている)になるのは、気持ちよくはない。
 幸い、変電所の異常によるもので大事ではなく、十数分止まっていただけでまたポワーンと音がして電気がつき、再び走り出した。それでもだんだん車内は蒸し暑くなりかけていたので、もしも、あのまま停電が長引いたとしたら、パニック映画のような事態になっていたかも…。

▼国土地理院 「地理院地図」
34度34分22.79秒 133度56分49.38秒
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dendenmushi.gif中国地方(2009/08/13 再訪)

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タグ:岡山県
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