472 高辺鼻=玉野市築港五丁目(岡山県)香川県は目の前500メートル先に [岬めぐり]
直島へはいくつかの航路があるらしいが、中心になっているのは、やはり宇野港から出る直島行きの連絡船で、それが発着する埠頭は、JR宇野駅の真南にある。連絡船が横付けする白い覆いのついた浮き桟橋は、宇野港ではここだけで、いかにも観光地へ…という雰囲気はある。
その屋根の下を通して、正面に見える、裾に人家をくっつけた岬が高辺鼻。
高辺鼻の向うに見える島々は、直島群島の一部であり、さらに遠くの山は、おそらくは小豆島であろう。
また、すぐそこにある丸い小島は、下烏島という無人島で、ここからはもう香川県。この付近、岡山県の陸と下烏島や屏風島の香川県の島では、たった500メートルほどしか離れていない。
桟橋には、一人の若い女性が佇んでいる。なるほどねぇ。安藤忠雄設計の施設や現代アートがウリで、他の観光地にはない特別ななにかだという現在の直島のイメージが、昔の大原美術館がそうだったようなものに近いのではないかと、なんとなくわかるような気がする。
船を待っていたのか、乗ったのか、そこまで見ていなかったが、すぐに高速連絡船がやってきた。その名も「Thunder bird」は、でんでんむしが使っているメールソフトと同じ名前だが、これはむこうではクルマの名前にもなるくらいで、極めてありがちな名前のようだ。
「Thunder bird」は、高辺鼻をバックにして、あっという間にくるりと向きを変えると、南へ向かって走り去った。
この桟橋のあるところが築港1丁目で、高辺鼻のところが築港5丁目、となっている。その名が付く範囲は広く、3丁目などは海岸からも遠く離れた北西側の山の中までそうなのだ。だが、この住居表示名「築港」が、他所者にはどうもピンとこない。
屁理屈を言えば「築港」というのは、“港をつくる”という行為自体や過程を指す言葉である、という認識が強いためであろう。ただし、同時に“できた港”を意味することもあるので、この場合はそうなのか。それにしても範囲が広過ぎ。
築港5丁目は山ばかりで、西側の名もない川に沿って南に延びている。この川沿いの道にしたがって、民家が並んでいるが、この道も高辺鼻で行止りになっている。
「名もない川」と書いたが、地図をよく見ると、これはもともと川ではなく、昔の入江の海岸線を示す名残なのではないか、という考えが浮かんできた。これは、どうみても遠くから堆積物を運んでくるような川ではないのだ。
築港1丁目から2丁目にかけて、宇野駅があり、町があり、工場地帯がある場所は、丸い入江をそっくり埋立ててできた平地だったのかもしれない。
「築港」という名も、そういう歴史と経過を示す命名なのかも…と思えば、ここはまあ納得ということで…。
34度29分32.36秒 133度57分41.29秒




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