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468 蛸崎鼻・犬戻鼻=玉野市玉三丁目・深井町(岡山県)三井造船玉野事業所へ進水式を見に行きませんか [岬めぐり]

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 蛸崎鼻と犬戻鼻のある場所は、造船所の中にすっぽり取り込まれているので、近づくことはできない。北側から遠く望めば、ほとんどは折り重なる二つの出っ張りは、どこがどれと判別はできないながら、なんとか岬らしい先端は見える。
 国土地理院の地図で確認すると、ここから見て手前、北側に位置する蛸崎鼻のほうは、どうやら造船所の施設で岬の半分は削り取られてしまっているようで、海側に屏風のように一部が残っているようだ。南側の犬戻鼻(これもおもしろい名前だが、広島県の安芸灘大橋のたもとにも同じ名の岬があったはずとみてみると、こっちは「犬戻ガ鼻」だった。でも同じことを指しているわけで、やはり文字通りの意味なのだろうか。)は、丸々残っているし、その上には鉄塔が立っているので、ここから見える岬の突端がそうなのだろう。
 造船所のドックか係留地か、数隻の船体も見えている。とくに際立っているのは、ちょうど蛸崎鼻と犬戻鼻を遮るようにして横たわる、白いモダンな客船である。
 いうまでもなく、ぐるりを海に囲まれた日本は、海岸線も長く、岬の数も多い。ほとんどどこでも、海と接触している海洋国家として、資源開発や海との共生をはかるため、もっとしっかりした国策をもっていくべきだというのは、でんでんむしの持論である。そういう点からすると、このような船がもっとつくられて、日本の沿岸を航行するようになる、というのもひとつの理想形として、頭に描いていたこともあった。
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 かつて、「造船日本」といわれた時代があった。それも、オイルショックまでのことだったが、三井造船玉野造船所も、その全盛期を担ってきた大手造船6社のひとつだ。
 玉野は、三井造船の企業城下町で、あらゆることがそれを抜きにしては語れない。戦前は潜水艦や戦時標準艦を多くつくっていたが、ここでもやはり朝鮮半島の人々を徴用してきて、やはり米軍の空襲を受けている。
 戦後の復興を支えてきたのは、高い技術力に裏打ちされた「ものづくり」であり、戦後しばらくは飛行機をつくることは禁じられたこともあって、最も大がかりで目立つ造船は、その花形でありシンボルであった。
 映画館ではニュース映画というのが本編前に上映されて、そのなかでもくす玉が割れ、テープや紙吹雪が舞う大型タンカー進水式のニュースを何度となく観たものだった。
 時代はめぐって、日本がめざしてきたのは海洋国家ではなく、狭い国土にくまなく高速道路を張りめぐらし、クルマが主役になる社会だった。現在では、造船では韓国に大きく水を開けられ、急追してきた中国と競っている。
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 問題は、外国との競争ではない。国のバランスのとれたビジョンが問われていることだ。何を根拠にしているのか不明だが、“日本の官僚は世界一優秀”といわれた時期も遙か彼方。そんなことがいわれたときがありましたっけ…。
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 この船、「SUPER LINER OGASAWARA」という。国土交通省の長期に渡る肝いりと、小笠原航路をなんとかしたい石原慎太郎東京都知事の思惑に引っ張られて、次世代型高速船テクノスパーライナー(TSL)、アルミ合金製、世界最大級の超高速貨客船、海の新幹線…と鳴り物入りで、この船がここで進水したのは、今を去る5年前のことである。
 そのときの様子を、小笠原村観光協会のホームページでは、こんなふうに書いている。
 「地元市民約2千数百名が見守るなか、石原慎太郎東京都知事夫人の典子様が「SUPER LINER OGASAWARA」と命名の後、同夫人による支綱切断により、全長140メートルの真っ白な船体が快晴の瀬戸内海に見事に浮かびました。」
 25時間30分かかっていた、東京〜父島間を約17時間程度に短縮できると期待されたのだが、結局その後、一度も航海に出ることもなく、進水したここで繋留されたままである。
 国土交通省と東京都が、運行コスト高を理由に撤退してしまったためだが、そんなことは最初からわかっていないほうがおかしい。支援が受けられないとわかった運行会社の小笠原海運は、船の引き取りを拒否し、海の新幹線は宙に浮いてしまった。
 近来マレにみるバカげた情けない話である…と思ったら、北のほうでも似たようなのがありましたね。原子力船むつ。これは、結局廃船になったけれど、この船もそんな悲しい運命が待っているのだろうか。
 この件で、国土交通省の役人や東京都は、どんな責任をどのようにとるのだろうか。もっとも、役人が責任をとったという話も、いまだかって聞いたことがない。
 半世紀にわたって政権の座にあり、国民のためにやろうと思えばなんでもできたはずの自民党が、なんで今頃と首をひねる「責任力」というキャッチフレーズで選挙に臨んだのは、KYの最たるものだろう。すでに愛想尽かしをされたところでは、ほとんど意味不明でしかないフレーズで大敗した政権与党だけは、有権者に責任をとらされた、ということになるだろうか。
 せめて、華やかに進水式に登場した“石原慎太郎東京都知事夫人の典子様”にも、なにがしか責任をとってもらうべきかも…。
 国土交通省と東京都は、こんな船があったことは、もう都合よく忘れているようで、小笠原には飛行場をつくって定期航空路を開こうと必死だ。
 日本では、せっかくもっている技術力を、うまく国づくり全般に活かし推進する力が、ほとんど発揮されない国になってしまったので、世界に先行する技術があっても、どんどん後発国にも抜かれてしまう。『官僚たちの夏』は、遠い昔話なのか。インドのタタなどを見ていると、技術力プラス財界リーダーの夢が、大きな力になっているような気もしてくる。
 三井造船玉野事業所では、今も年に何回か進水式は行なわれていて、希望すれば誰でも無料で参加できる。いやー、今にして思えば、あのニュース映画のなかであふれる人波、いったいどこから湧いてきたのかと思えば…。
 いやいや、進水式を見に行ったからといって、責任をとれとはいわれませんから、是非…。この2009年10月には2回も予定されています。(進水式見学情報の案内は、玉野市のホームページで)
 なお、「ナゾの唐琴警鐘台」、やはり気になるので(そうなんです、どうでもいいことが気になるタチでして)、倉敷市役所児島支所にメールを出して、問い合わせておりましたところ、総務課の方から返事と写真と所在図まで貼付していただきましたので、465 鵜石鼻の項に情報を追加しました。

▼国土地理院 「地理院地図」
34度27分48.81秒 133度56分35.94秒 34度27分20.53秒 133度56分33.78秒
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dendenmushi.gif中国地方(2009/08/13 訪問)

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タグ:岡山県
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