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467 鼻操鼻=玉野市日比(岡山県)どこまでも引きずっていくものは…? [岬めぐり]

 玉野市と聞いて、その位置や町の様子が思い浮かぶ人は、そう多くはないだろう。ところが、これが意外に市の歴史は古い。それこそ、“紀元二千六百年”に、児島郡の宇野町と日比町が合併してできた市なのである。
 では、よくある町名の文字の一部をくっつけて市の名前にする形(たとえばこの場合なら「宇日市」とか「比野市」など)になっていないのは、なぜなのだろう。そもそも「玉」とは、どこからきたのだろう。
 これがまたおもしろいことに、旧日比町には「玉」という地域があり、現在もそこはある意味で玉野市の中心的存在なのだ。そこには、市役所はないが、三井造船がある。これこそが、早くから市になっていた理由であろう。
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 そして、日比には日比共同製錬玉野製錬所や三井金属鉱業日比精錬所という製錬所がある。鼻操鼻の上に、いやでも目立つ煙突がそうだ。
 鼻操鼻は、宮田山という120メートルの山の南端の岬だが、この山の向こう側に製錬所はあり、見えている煙突も、そのもうひとつ向こう側の山の上に立っている。この付近の山が、大きな木もない禿げ山なのは、製錬所の公害のせいだろうか。
 山間の谷間を埋める製錬所は、当然公害源であり、迷惑施設だが、ここでは戦前には中国人などを強制連行で徴用し、たくさん死んでいたというのでも、引きずっている歴史は重い。
 住友財閥の基礎をなした四国の別子銅山と製錬所は、閉山してひさしい。石見銀山が世界遺産になったからというわけではあるまいが、こちらのほうは、産業遺産のような形で一部をミュージアム化しようという動きがでるような時代になっている。が、現在でも銅精錬は必要である。今は全国7か所で銅製錬所は稼動している。そのうちの2つまでが、実はこの近辺にある。
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 製錬所のマイナスイメージを、少しでも緩和できているのかどうかは不明だが、鼻操鼻の西側は、岡山県でも有数の渋川海水浴場で、海洋博物館などのハコモノやホテルもできている。
 夏の海岸は、なにもなくても華やかだ。
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 沖の円錐形の大槌島も、至近距離に入ってくる。鼻操鼻とは2.6キロほどしか離れていない。ここが県境になっていることは、前項で触れた通りだが、その歴史は享保年間に遡るという。
 なんでも、そもそも備前藩と高松藩の漁場争いが原因で、さまざまな駆け引き交渉が行なわれ、樽を流して線引きを決めたという話も伝わっている。
 地図を見たとき、円錐形の島の中央に真っすぐ引かれた県境を見て、極めて人為的・作為的なものを感じた。もともと境界線自体が人為的・作為的なものではあるが、岡山県ではすぐ目の前が香川県という場所がいくつもあるので、これはなぜだろう、どんないわれを引きずっているのだろうと思っていた。
 瀬戸大橋のところで、目の前が香川県となっているのは、このときの備前側の樽流しの誤算からというが、それが現代にまで定着しているのだから、人間の引きずっていく、いかなければならないものはとても多く、おもしろいものだ。
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 王子ヶ岳から宇野へ行くバスも貴重で、これを逃すと帰れなくなってしまう。日比の港まで出れば、そこには松ヶ鼻という岬も港口にあるのだが、そこへ寄っている時間がない。やむを得ずバスで、日比の製錬所の谷間を通り、昔の遊廓のあとが残るという町を抜ける。
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 ところで、この「鼻操鼻」という名前。
 「鼻繰」という名がつく岬は、全国にいくつかある。
 だが、ここは「鼻操」。
 「操」は「くり」とは読まないので、「はなそう」か。
 「鼻繰」や「鼻操」という言葉が、どんなことを指しているのか、よくはわからないが、いわゆる“はなほじ” などではあるまい。
 でんでんむしの直感では、まったく根拠はないが、船の操船となにか関連があるかも…?
 …と書いていた「鼻繰り」だが、その後判明したことがある。岡山のどこかには「鼻繰神社」があること、そこにはウシの鼻につけるワッカが奉納されていること、つまり、「鼻繰り」とは、そのワッカのことであること、そこから牛馬のタズナを繋ぎ止めておく木や岩を指すこともある、といったことである。「鼻操り」も「あやつる」という意味で、同じように使われたのだろう。
 それはわかったが、残念ながら岬の名とは、まだつながる証拠はない。(2011/08/18)

▼国土地理院 「地理院地図」
34度27分5.12秒 133度54分36.36秒
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dendenmushi.gif中国地方(2009/08/13 訪問)

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タグ:岡山県
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