456 閉伊崎＝宮古市重茂（岩手県）岬の上まではとても行けそうにないので遠くからヘイ！、ジューモ！

　また、宮古まで舞い戻ってきた。そこで目立つのは、やはり重茂半島である。これは、三陸（今回は厳密には「陸中」）シリーズ最初の「441 竜神崎」でもふれたのだが、その先端が閉伊（へい）崎という。
　この半島は大きな半島で、月山という500メートルの最高点までは車で行ける。そこから閉伊崎を見下ろす予定だったが、帰り道にあちこち寄ったり大回りをしたりして、その時間がなくなってしまった。



　しかたがないので、宮古港や館ヶ崎から撮った写真で間に合わせてお茶を濁している。だが、閉伊崎は遠くはるか霞んでいて、はっきりとはわからない。ここは、やはりこのままですますわけにもいかないような気がするが、この際は、あくまで今回の陸中海岸岬めぐりの最後に、備忘的に項目をあげておくことにした。
　重茂（これは“じゅうも”ではなく、“おもえ”と読む）の名は、三角定規を立てたような半島の付け根の東側にある集落と川の名と同じだが、地図には半島の名が記されていないものが多い。
　重茂の地域は広く、北端の閉伊崎から半島の付け根を経てさらに南の出っ張りまで、太平洋岸に接する一帯を含んでいる。実は、その南の出っ張りこそが「本州最東端」の「とどヶ崎」がある場所なのだけれども、ここへはまた機会を改めることになる。

　それにしても、半島の名が地図にないのが気になるが、半島の場合には山や川に比べて、実用的な意味での必要性が多少希薄なのかも知れぬ。
　岬は、半島に比べると、実用的なニーズも多くあったとみえて、けっこうマメに名がつけられているし、地図にもそれが表示してある。（ただし、ZENRINのソースを使用している地図では、恣意的に入れたり入れなかったりしているので、まったく信用できない。これについて、「意味がわからん」という人は、くわしくは前にふれているのでこちら。）
　ともかく、この項は備忘項目なので、あまり先へ深入りもできない。あとはおとなしく、再び山田線に乗り閉伊川沿いに盛岡へ出るだけだ。
　「閉伊」という名が、鎌倉時代からのこのあたりの豪族の名でもあったことも、こうした例は日本全国あちこちにあることで、とくにめずらしくはないことながら、でんでんむしにとっては感慨が深いものがある。
　こういう場合、地名が先なのか、氏が先なのかわからない場合もあるが、いずれにしても、地域と人の結び付きの深さを、今に伝えている事例としても、見過ごしにはできない。
　ここでも、閉伊氏とその一族は、閉伊川流域の水運と、閉伊湊（宮古）の海運・漁業などの、強大な利権を握って栄えていたものであろう。
　閉伊郡、閉伊川、閉伊崎…そんな名前が、いいかげんにテキトーについたわけでは、決してないのだ。
　そして、「重茂」もまた、閉伊氏の一族のひとつなのだ。
　往路も同じルートで来たが、そのとき二両だった電車が、一両だけになった盛岡行きは、閉伊川に沿って遡って西へ走る。来るときにも走る車窓から気になったのだが、川岸に“案山子”が立っている。これは、いったいどういう理由によるものなのか？


　この日は、7月1日。ところどころで、釣り人の姿を発見して、どうやらそれと関係があるらしい、とは思ったが、未だにその役割はよくわからない。
　山田線は、区界（くざかい）という駅から106号線と分かれ、山の中へ入って大回りをする。その理由もわからない。
　区界というだけあって、ここが下閉伊郡と盛岡市の境界であり、兜明神嶽という標高1000メートルほどの山裾に広がるのが区界高原である。


　2時間も、こういう電車に乗っているのも疲れるが、やっと盛岡に着いて、そこから乗り替えた東北新幹線では、さらに疲れるできごとが待っていた。
　八戸から乗ってきたらしい通路向うの座席のおじさんたちの酒盛りがはやたけなわで、ヨッパライグループのくだらない言い合いが延々と続き、うるさいことおびただしい。周囲や車内販売のおねえさんの注意も効き目はなく（車掌はこういう肝心なときには現われないしなにもしない）、あげくのはては大宮で降りるときには、座席に散らかしたごみを持って行くように注意した乗客とつかみあいまで…。

　新幹線も「禁煙」だけでなく「禁酒」にすべきだわねえ、という前の席のおばさんの意見に、激しく同意。電車はどんどんかっこよくなっても、乗っているヤツがこれでは…。とくに最近は、おじさんのだらしなさが目につくね。

▼国土地理院　「地理院地図」
39度39分16.40秒 142度1分29.40秒

東北地方（2009/07/01　訪問）

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