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450 矢越岬=下閉伊郡田野畑村机(岩手県)机の上に集落があり机の下に漁港がある [岬めぐり]

 矢越岬(やごしざき)もまた、北東向きに飛び出した岬の先端部分は南側からは見えず、北へ細い山道を踏み分けて入らないと見ることができないようだ。その山道も、トンネルで抜けなければならぬほどの場所である。
 ここらは45号線も遠く西寄りの山の中を走り、それに代わる海寄りの道で、北山崎への主要道路が通っている。ちょうど、「おみおしトンネル」という600メートルほどのトンネルがある。トンネルで通るということは、そこにある岬が見えないということなのだ。
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 したがって、ここは南側の机の漁港の船寄せ場から、北を望むことしかできない。岩島と崖の間にコンクリートの波除けと傾斜路がつけられ、そこに小さな漁船が、何艘も引き揚げられている。
 その奥から北が矢越岬なのだが、その先っちょは霧に隠れているうえに、隠れていなかったとしてもここからでは完全にうかがうことはできない、というわけだ。
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 それにしても、ここの漁港は不思議である。前にもどこかで書いていたような気がするが、日本全国岬の数より漁港の数のほうが多いのではないかと思われるくらい、いたるところに小さな魚港がある。その場合、たいていはそのそばに人家があり、集落ができ、漁村がある。
 ここ机漁港では、それがない。(この写真は、翌日に再び通りがかったときの机漁港)
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 漁港のある谷筋の崖下には、番屋と呼ばれる漁のための小屋が並んではいるが、人が住んでいるわけではない。この番屋には「机浜番屋群」という麗々しい看板まで立っているが、別に建物が古い由緒のある歴史的遺産というわけでもない。比較的近年に建てられた小屋に過ぎない。それでも、“漁村の歴史文化”を伝えるなんだかには違いないというので、これを元にした体験イベントなどもあるらしい。
 しまった。いかにそそられない被写体とはいえ、メモ代わりというからには、写真に撮っておくべきだった。これは失敗だった。
 「やませ」は、漁にも影響するのだろう。船も出ている様子はなく、人がいるわけでもない。あたりは波の音しか聞こえない。人はどこに住んでいるのだろう。
 地図で見ると、机小学校のある集落は、番屋からトンネルに向かわず谷を詰めて3キロ程度も山に入った、標高180メートルくらいの比較的平らなところに展開している。人々は、ここに住み、漁のときには軽自動車を転がして漁港までやってくるのだろう。
 陸中の海岸に延びる谷では、しばしば「津波到達地域」の注意が掲示されているのを見かけた。津波は、狭くなる谷に押し寄せるとき、被害を拡大する。ここが、その被害に学んでこういう形態になったのか、それとも最初からそうなのか、いつからそうなったのかはわからない。が、地形から想像できるのは、机の場合はもともと海岸に近いところに集落ができる余地がなかったので“職住分離”の番屋方式が定着した、と考えるのが妥当なのだろう。
 「矢越」という名は、由来のエピソードのひとつやふたつ容易に創造も想像もできそうな名前だが、「おみおし」ではそれもできない。トンネルに入る前にどこかでちらっと漢字の標識か何かを見たような気もしたのだが、どうも思い出せない。メモもとらないで、ほとんど印象と記憶だけでノホホンと書いているでんでんむしの岬めぐりでは、気になるところ正確を期すべきところは、帰ってきて調べて補足する。
 けれども、「田野畑村ウエブサイト」でも、その他のページでも、それについては書いていない。すべて最初から「おみおし」であったかのように、まるで疑問の余地などあり得ないというように、ひらがな表記ばかりなのだ。
 “オマエらには読めんじゃろうから、ひらがなに変えてやったぞ”と、またまたエライ筋のご意向なのか、こういう例は各地に多数ある。だが、ひらがなに変えることによって、本来の名前のもつ意味は雲散霧消してしまう。
 “吉村昭・津村節子夫妻”とのエピソードもさることながら、田野畑村のホームページには、机のことなども含めて、もっと書いておいて欲しいこともあるような気がした。
 そこのトップぺージに、“田野畑村空き家バンク”というのがあった。この頃では、各地の自治体が本腰を入れ始めている。でんでんむしも“終の住み処”を探しているが、残念ながらからっきし寒さに弱く意気地がない寒がりには向いていそうにない。
 というか、でんでんむしなら住み処は自分で背負っているじゃないか…。(それに、そもそもなんで「でんでんむし」なのだ? それについては次回番外で…。誰もそんなこと聞いとらんって? まあ聞いてくださいな。)

▼国土地理院 「地理院地図」
39度57分11.25秒 141度57分45.69秒
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dendenmushi.gif東北地方(2009/06/29-30 訪問)

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タグ:岩手県
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コメント 1

matuzaki

名前をいれてリターンしたらとんでしまった。

今津波の災害で机漁港の設計をしています、手伝いなので

現場にいっていません行ってきた人が現場には建物なんかひとつもな

かった、といっていましたがこのブログをよんでわけがわかりました。

何回もくらっているので住めないわけなんですね、だけど魚場はよいと

いうことでしょうか、番屋郡の写真がないのが残念!
by matuzaki (2012-02-05 06:05) 

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