449 弁天崎=下閉伊郡田野畑村明戸(岩手県)いこかもどろか思案橋の思惟大橋 [岬めぐり]
海底から隆起した台地が海との際に断崖絶壁をつくり、その上と間にできた隙間のような川筋にだけ人の暮らしがあり、その河口にだけ小さな港がある。しかし、その港から港を結んで、海岸を走る道はない。
水尻崎や北山崎のあたりが、まさしくそうである。その中間にある田野畑は北リアス鉄道の駅も、トンネルとトンネルの間に挟まれた谷の上にある。
この村(そういえばこの頃ではどんな田舎へ行っても「市」だといわれたりするので、たまに「村」があるとほっとする)ではざっと大小8本くらいの川筋がある。そのなかでも、真木沢と松前沢の谷は長く深く広い。
45号線では、南の槙木沢橋は谷底から105メートル、北の思惟(しいの)大橋の高さは120メートルもある。それぞれ谷を渡る道は急傾斜なので、それぞれ「思案坂」「辞職坂」というおもしろい名前がついている。
“はは〜ん、さてはこの名の由来は?”と推測もできるが、念のために村のホームページを確認(橋の高さもここで知った)してみると、果たして想像どおりであった。確かに、陸中の山は深く、道はどこまで行ってもキリがない。アップダウンを繰り返し、やっとここらまできてもなお先が見えない。いいかげん不安になってメゲても不思議ではない。
龍泉洞からの帰り、455号線の途中から北東へ向かう道に入り、田野畑から北山崎を目指した。槙木沢橋と思惟大橋の間で45号線を横切り、鳥越から羅賀を経て明戸へ向かう。この周辺だけは、海岸の道があるので、橋を渡るのは帰途である。
地図で見ると、弁天崎も矢越岬も、その道からなんとか見えそうに思ったが、これがまた思うようにならない。
山の中の龍泉洞では霧などなかったのに、海岸に戻ってくるとまたしてもあたり一面が白いベールの中で、羅賀からの遠望も効かない。そのうえ、どちらの岬も、実は道からはだいぶ離れていた。
山の中を歩く細い道はあるらしいので、そこを行けば弁天崎はその上まで行けたかも知れないが、車ではそういうわけにもいかない。
この岬の周囲には島や岩がひしめいていて、その危険を知らせる灯台も必要だ。
ここへも翌日の帰り道に再び訪れて、なんとか北側から霧のないところを眺めることができた。だが、厳密なことをいえば、これは南に張り出した弁天崎の北側の岩壁を見ているに過ぎないことになる。
では、翌日の霧がないとき、明戸の海岸から見た弁天崎の様子はどうなのだ?
これが、人が運転する車に乗って、スイスイ走る岬めぐりの限界でもある。いくら探しても写真がないところをみると、どういうわけかすっぽりと抜け落ちていたらしい。
霧がないとはいえ晴れてはおらず、もやが覆っているので、木々の間に隠れてある灯台も、よくよく目を凝らして見ないと判別できない。
国土地理院の地図で地形を改めて確認すると、この崖の高さは、60〜70メートルで他のリアス式海岸と同じである。岬の出っ張りは、山の尾根だったところ、その東側半分がざっくりと削り取られたようになっている。
灯台は、その絶壁の上に鎮座している。
その垂直斜面が、崖になって残っている。回りの岩島をみても、ここは単なる隆起でできただけでなく、その後に崩落があったということを記録しているようにも思える。
もっとも、これはあくまでもシロートの想像に過ぎないのだが…。
39度56分46.62秒 141度57分34.88秒
東北地方(2009/06/30-7/01 訪問)
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