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429 犬辻鼻=薩摩川内市寄田町(鹿児島県)バスを降りてそこらを歩けないのが残念無念… [岬めぐり]

 バスの窓いっぱいに飛び込んできた、大きな一枚岩の直立する壮大な岬の景色には、一瞬息をのむような趣があった。ここが、この日のまず最初の主役である犬辻鼻。ここまでは、あんなこんなのいきさつを経て、どうにかこうにかやってきた。やはりちょっと降りて歩いてみることができないのが、かえすがえすも残念な岬だった。
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 「駅前のステーションホテル」にも、いろんな町で泊ったけれども、ここ串木野も敦賀と並んでおそらくこれから先も、曰く言い難いという点で記憶に残ることだろう。
 朝早くチェックアウトすべく、2階のフロント(これがまた名状し難い)に降りていったが、昨夜のおじさんも誰もいない、いくらベルを鳴らし呼んでも、誰も出てこない。鍵をおいて出ようとしたが、出入り口になっているエレベーターが動かない。しばらく待ってみたが、らちがあかないし、こちらもバスの出る時間までに、駅前からはだいぶ離れた串木野西中前まで行かなければならない。
 しかたがないので、カウンターの横を抜け、通用口らしいところを探して非常階段からなんとか外に出ることができた。
 無銭宿泊? いえいえ、“前金”ですから。
 この日の朝、「あったらいいな」をキャッチフレーズにする、薬以外の健康グッズもいろいろつくって売っている会社の「あるくたすけ」とかいう足袋のようなものを履いてみた。テーピングをしたと同じ効果があるという、広告の触れ込みに釣られてしまったのだ。
 なにしろ、これから薩摩川内市といちき串木野市にまたがる川内原発の南部に、標高519メートルの弁財天山を頂点として展開する山地を、羽島崎、犬辻鼻、天狗鼻と三つの岬を訪ねてしっかり歩く予定だった。そのため、準備万端整えたつもりで、意気揚々とようやく頼りない朝日のさしはじめた串木野の町を歩いて、北へ向かう。
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 地図(なくしたのは昨日の分だけ)を見ると、串木野西中学校へは、住宅以外の建物が少ない町を抜け、橋を渡り、山のほうに1.5キロも歩かなければならない。
 なぜ、こんなところがバスの始発になっているのだろう。
 中学校に近づくと、そこここからちらほら制服姿が現れ、朝の挨拶を交わす。気持ちのいいこの子たちについていけば、中学校までは間違いなく行ける…そう思ったとたん、右足のふくらはぎ付近に激痛!
 たちまち歩けなくなって、中学生にどんどん追い越されてしまう。
 右足をひきずりながら、やっとの思いで学校の校門前まで来たが、どこにもバス停らしきものがない。
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 ちょうど、校門脇に“西中の美人先生”らしい女性が車を停めて降り立ったので、すかさず尋ねてみる。だが、その人もよく知らないらしく、ちょっと待てと言い置いて校舎の中に消えた。車に乗る人はみんな、バス停とは縁がない。
 しばらく待つうちに「ごめんなさい、お待たせして…」と再び現れたその人の手には「ゼンリン住宅地図」が…!
 わざわざ電話でどこかに問い合わせ、それでバス停のありかを調べてくれたのだ。みると、「串木野西中前」のバス停は、西中の校門から400メートルも離れた道路脇で、「前」どころではない。
 親切に感謝して礼を述べ、少し高台にあって教室の窓からなら海がみえるだろうかという中学校を後にして、また痛みをこらえてそろそろと歩き出す。だが、このありさまでは今日の行程は、大幅に変更せざるを得ない。とりあえずバスに乗って終点まで行けば、犬辻鼻は何とか見えるだろう。羽島崎も車窓から眺めるだけにし、天狗鼻はあきらめるしかあるまい。とにかくバスで終点まで行き、そのまま折り返して、串木野へ戻るしかない。
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 やってきたのは、いちき串木野市のコミュニティバスで、その名も「いきいきバス」。といっても、車両と運転手はいわさきグループの借り上げだ。「ちかび」とこの辺では呼ぶ、巨大な串木野国家石油地下備蓄基地があるという山の下を走り抜け、ちょっと大きな羽島の集落を過ぎ、山の中へうねうねと登っていった先に、土川という岬の間に隔絶している集落がある。
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 どうやら、深く刻まれた川を挟んで岬のある北側は薩摩川内市。川の南側はいちき串木野市。市境にまたがって、この土川集落はあるらしい。
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 道が狭いので、バスは土川の集落があるところまでは降りていけない。犬辻鼻を見下ろしながら、高いところにある道路でスイッチバックしながらバスが向きを変えると、そこで初めて二人目の乗客が現れた。
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 なお、念のため改めて説明しておくと、写真で青っぽいのとそうでないのがあるのは、バスの窓ガラスのコーティングの影響による。横の窓ごしに撮った写真は青っぽくなり、正面のガラスごしに撮ったものは普通に見える。

▼国土地理院 「地理院地図」
31度46分51.95秒 130度10分27.55秒
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dendenmushi.gif九州地方(2009/03/18 訪問)

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タグ:鹿児島県
きた!みた!印(12)  コメント(4)  トラックバック(1) 
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きた!みた!印 12

コメント 4

yuki999

いいところですね^^
by yuki999 (2009-06-08 04:23) 

dotenoueno-okura

近寄りがたいやうな偉容。滑り落ちる夢を見さうな岬。みごとな岬でござるな。
拙者にも似た体験があり、ホテル・バス・おんな先生など「曰く言い難い」「名状しがたい」あれこれが目に浮かぶやうでござる。
金鳥の看板、懐かしく詩情すら湛えていますなあ。曽遊の地で見かけたブリキの広告。仁丹の将軍、正露丸のラッパ、ほほえみかけていた浪速千栄子・松山容子・水原弘など思い出してござる。
昨夜、何げなく見ていたテレビがポルトガルのロカ岬を映しておってな、ユーラシア大陸の最西端を訪れる観光客が絶えないとか……端っこ好きはどこにもいるもんでござるなあ。
by dotenoueno-okura (2009-06-08 07:49) 

dendenmushi

@yuki999さん、ね、いいでしよう? 地方へ行くと、よくあるのですが、この景色をそっくりそのまま首都圏近くへもってくれば、かなりの観光名所になるだろうなあ…と。
 あ、もちろん、そんなこと望んでるわけじゃありませんけどね。
by dendenmushi (2009-06-09 06:37) 

dendenmushi

@由美かおるとその美脚を忘れちゃいけませんぜ。それに、メガネがずり落ちてる大村崑、あともうひとつあったなあ…? あれは誰だッけ? ほら…。
 ロカ岬は、ヨーロッパの人にとっては、こここそが「地の果て」という認識が一般的らしいですね。なんとかいう詩人が、「ここに地終わり海始まる」だったかな、とかなんとかいって有名な文句なのです。
 最初、これを「岬めぐり」キャッチフレーズにするつもりだったのですが、日本の岬めぐりに、外国人の助けを借りるこたああるまいと、自分で却下しました。
by dendenmushi (2009-06-09 06:47) 

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