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421 明神ノ鼻・神崎鼻=出水郡長島町山門野(鹿児島県)“みえないものでもあるんだよ”とキミはいう [岬めぐり]

 黒之瀬戸大橋ができたのは、今から35年も前のことである。当然、それ以前は連絡船が通っていたのだろうが、これで長島という島は国道389号線で九州本土と直接つながることになった。当初は有料道路だったが、19年前から無料になっている。ということは、充分建設費を回収できたということであり、この橋の利用度が高かった、ということなのだろう。
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 潮の流れがいくら速くとも、すぐ目の前に島があれば、そこを我がものとしたいと考えるのは、自然だったといえるのか。元は肥後国の天草諸島の一部だった長島は、島津氏に制圧されるという歴史的事実があって、そのおかげでというか、そのせいでというか、現在も鹿児島県になっている。
 ほとんどの歴史は、軍事的衝突ないし武力行使による侵略の積み重ねとその結果だというのは、洋の東西を問わない。島津は、その武力の行使に躊躇しないという性格をもっていた、といっても鹿児島の人は怒れないはずである。遠く琉球まで出かけていって、これを支配下においた“琉球処分”も、生麦事件も、薩英戦争も、そしていちはやく倒幕に向けて軍事行動を起こしたことも、西南戦争も、“シマンヅー”のDNAと無縁ではあるまい。
 それを思えば、こんな長島を攻めとることぐらい、当然過ぎてなんもおもしろくないことであったのかも知れない。
 確かに県境が通る天草下島と長島の長島海峡は、黒之瀬戸とは、何倍もの差がありそうだ。明らかに、天草よりも鹿児島の方に近いのは事実だが、だからといってそれだから鹿児島県…ということにもならない。このへんが境界線の不思議なところである。
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 この橋の下の瀬戸は、潮の流れの速い潮流としても有名なのだそうだが、急潮の上に架かる橋の向う、長島の北側を眺めれば、明神ノ鼻と神崎鼻というふたつの岬がある。明神ノ鼻のほうは、人工的な構造物も伴う港の岬で、神崎鼻のほうは自然の岬である。
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 国土地理院の地図を見ると、手前の明神ノ鼻は沖合の島を岩壁で結んで港にしたように思われる。しかし、「鼻」の名があるところをみると、完全な島ではなく、浅瀬か砂洲でかぼそくつながっていた岬を、人間が強引に“補強し改修した”ものと推察できる。
 この神崎鼻のさらに奥には、加世堂湾という名の深い入江があり、その入口には丸岡鼻という丸い岬もあるが、それとわかるのはあくまでも地図上でのこと。橋からでは隠れてしまって見えない。
 ふたつの岬の向うには300メートルほどの山があり、その東端付近は市来崎という地名があるが、岬としての表示はない。
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 隠れているのは、もっとあって、その市来崎の北方には大中小の島々がある。いちばん大きい獅子島(そこが鹿児島県最北端)くらいは見えるのではないかと思ったが、やはりそれは見えなかった。こういう、見えるか見えないかの差は、微妙であり、結構それが重要だったりする。
 “みえないものでもあるんだよ”と、金子みすゞはいうけれど、これも世の中の真理のひとつを的確に表わしている。
 この海は、不知火海(八代海)の南端である。

▼国土地理院 「地理院地図」
32度7分4.94秒 130度10分38.83秒 32度7分23.78秒 130度10分40.99秒
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dendenmushi.gif九州地方(2009/03/17 訪問)

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タグ:鹿児島県
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