416 亀崎=阿久根市赤瀬川(鹿児島県)2009年の“市長ブログ”と民主主義 [岬めぐり]
「A-Zスーパーセンター」も結構有名らしいが、なんといってもネットを見ている人間で今「阿久根市」を知らぬ者はいまい。“市長ブログ”で話題になった、あの市なのである。全国ニュースでは、“市長が職員給与をブログで公開”、“市長がブログで市議の評価を公開”、その結果“阿久根市の市政混乱”…といった具合で、いかにも市長が悪い、変な市長が現われたとわんばかりで、言外には“ブログなんか書く市長”的ニュアンスさえ感じられるような記事もあった。
へそまがりは、それを読んで「なんてひどい市長だ」とは思わない。ものごとにはすべて、原因があって結果がある。なぜ、住民に選ばれた市長が、そんなことをしたのかについて、その背景こそが重要なのに、肝心なそれにはニュースは踏み込まずわからずじまいである。
2009年2月6日に市議会が“全会一致”で不信任を決議したので、市長は市議会解散でこれに対抗した。ちょうど、阿久根にやってきた日が、市議選の告示日だったのである。
亀崎へ行くためにバスに乗って3号線を南へ向かうが、最短距離でそこへ行くには、どの停留所で降りればいいのかわからない。結局、自分の目で判断できる晴海町の魚市場まで乗って、そこから北へ逆戻りすることに。
魚市場の額縁の中にあるのは、倉津ノ鼻である(と思ったが、よくよく見るとこれは阿久根大島であるらしい)。ここでも古い堤防から西側一帯が、広く埋立てられていて、その脇にひときわ大きな建物がある。これは市民病院で、しかも“市立”ではなく“医師会立”と地図には表示してある。
その古堤防の道が切れたところに、飛び込んでくる亀崎。小島もある海は、もう「不知火海」ではなく、「東シナ海」である。
この向うは小さな港になっているようだが、それもこの岬の半分を利用している。この岬があるところの字名が黒崎なので、埋立て以前にはそういう岬があったとも考えられる。もっとも、字名だけ「崎」がつくのは、たくさんあるから、根拠にはならない。
この先の埋立地の港からは、阿久根大島への連絡船が発着する。
埋立地の公園で、数人がゲートボールに興じているが、それ以外にはまったく人影などないところで、ミニワゴンの選挙カーが一台停まって選挙演説をしている。演説というより、たんたんと話している話の内容から、この候補は市長を支持する新人らしいとわかる。
もう過ぎたことだから、みなさんご存知の通りで、3月22日に投票が行なわれた選挙の結果は、市長派5人の新人が全員上位に並んで当選したが、反市長派も10人が当選(あれ、定数16じゃなかったの? 計算が合わん)している。選挙前はゼロだった市長派が5人もできたとはいうものの、多数は反市長で変わらない。
民主主義は虚構だというのは、でんでんむしの開き直りだが、得票率が議席に反映しないというのは、国政でもしばしば起こる。市長派の選挙戦術の未熟を言う声もあろうが、住民の意思を選挙で汲み取ろうとすること自体に、限界がある。
その“市長ブログ”というものを、これまで一度も読んだことがなかったが、これを書くにあたって検索で探して、その一部を読んでみた。
■竹原信一 ブログ『住民至上主義』
今回、職員給料カット6パーセントが成立しました。給料明細の公開で職員組合がはじめて市民を意識したために抵抗しませんでした。
市議会議員選挙では、当選のトップ5人が市長派でしたが、残りの11名が職員組合派です。多数決ですから、すべての役職は職員組合派に取られました。議会運営委員長は職員組合代弁者の蜜柑幸雄議員です。彼は給料6パーセントカットにも1人だけ反対しました。職員組合の本心です。副委員長は退職金加算73%を実現させた時の総務課長、浜崎國治議員です。議会運営委員会に得票数トップ5人の市長派は1人も入ることが許されませんでした。議会は職員に完全に乗っ取られたのです。
日本には身分制度は無いと考えられています。しかし、それは間違いです。公務員というのは身分です。実際に「公務員の身分」呼んでいます。安定した職場に高い給与と退職金、更に年金まで一般市民とは死ぬまで違います。また、犯罪についても公務員の場合は警察や裁判での扱いまで有利です、公務員仲間が裁くのですから当然でしょう。マスコミも公務員階級には特別の配慮をします。
こういった事を暴露している私が、彼らから気に入られるはずがありません。私の足を引っ張ろうと報道したことが、逆に評判を上げる事につながったのは皮肉です。(2009/04/26 (日) 竹原信一の市政報告 2 から原文のまま)
テレビのニュース画面で伝えられる市長の様子は、あまり弁舌さわやかというふうには見えなかった。ブログで市民や第三者にもわかってもらいたいという一心が、一部には奇異に取られる行動に走らせたものだろう。
この頃では、ネコも杓子も「説明責任」を求めるが、すべてを説明するのはなかなか難しい。まして、一から水平な場所に向き合って、相手の言い分をすべて聞こうという姿勢がなければ、いくら説明を聞いても素通りするだけだ。
議会では孤立無援の市長が、ブログという新手法で住民に直接訴えかけようとしたのは、政治手法としてもあり得ないわけではあるまい。だが、今回落選した前市議は、前市長の手法に疑義があると裁判を起こした。
「前市長」そう、結局、選挙後開かれた市議会は多数で市長の解職を決め、市長は失職した。この町ではまた市長選挙が始まることになる。
九州地方(2009/03/17訪問)
▼国土地理院 「地理院地図」
32度2分8.30秒 130度11分42.94秒
近畿地方(2009/03/17 訪問)
へそまがりは、それを読んで「なんてひどい市長だ」とは思わない。ものごとにはすべて、原因があって結果がある。なぜ、住民に選ばれた市長が、そんなことをしたのかについて、その背景こそが重要なのに、肝心なそれにはニュースは踏み込まずわからずじまいである。
2009年2月6日に市議会が“全会一致”で不信任を決議したので、市長は市議会解散でこれに対抗した。ちょうど、阿久根にやってきた日が、市議選の告示日だったのである。
亀崎へ行くためにバスに乗って3号線を南へ向かうが、最短距離でそこへ行くには、どの停留所で降りればいいのかわからない。結局、自分の目で判断できる晴海町の魚市場まで乗って、そこから北へ逆戻りすることに。
魚市場の額縁の中にあるのは、倉津ノ鼻である(と思ったが、よくよく見るとこれは阿久根大島であるらしい)。ここでも古い堤防から西側一帯が、広く埋立てられていて、その脇にひときわ大きな建物がある。これは市民病院で、しかも“市立”ではなく“医師会立”と地図には表示してある。
その古堤防の道が切れたところに、飛び込んでくる亀崎。小島もある海は、もう「不知火海」ではなく、「東シナ海」である。
この向うは小さな港になっているようだが、それもこの岬の半分を利用している。この岬があるところの字名が黒崎なので、埋立て以前にはそういう岬があったとも考えられる。もっとも、字名だけ「崎」がつくのは、たくさんあるから、根拠にはならない。
この先の埋立地の港からは、阿久根大島への連絡船が発着する。
埋立地の公園で、数人がゲートボールに興じているが、それ以外にはまったく人影などないところで、ミニワゴンの選挙カーが一台停まって選挙演説をしている。演説というより、たんたんと話している話の内容から、この候補は市長を支持する新人らしいとわかる。
もう過ぎたことだから、みなさんご存知の通りで、3月22日に投票が行なわれた選挙の結果は、市長派5人の新人が全員上位に並んで当選したが、反市長派も10人が当選(あれ、定数16じゃなかったの? 計算が合わん)している。選挙前はゼロだった市長派が5人もできたとはいうものの、多数は反市長で変わらない。
民主主義は虚構だというのは、でんでんむしの開き直りだが、得票率が議席に反映しないというのは、国政でもしばしば起こる。市長派の選挙戦術の未熟を言う声もあろうが、住民の意思を選挙で汲み取ろうとすること自体に、限界がある。
その“市長ブログ”というものを、これまで一度も読んだことがなかったが、これを書くにあたって検索で探して、その一部を読んでみた。
■竹原信一 ブログ『住民至上主義』
今回、職員給料カット6パーセントが成立しました。給料明細の公開で職員組合がはじめて市民を意識したために抵抗しませんでした。
市議会議員選挙では、当選のトップ5人が市長派でしたが、残りの11名が職員組合派です。多数決ですから、すべての役職は職員組合派に取られました。議会運営委員長は職員組合代弁者の蜜柑幸雄議員です。彼は給料6パーセントカットにも1人だけ反対しました。職員組合の本心です。副委員長は退職金加算73%を実現させた時の総務課長、浜崎國治議員です。議会運営委員会に得票数トップ5人の市長派は1人も入ることが許されませんでした。議会は職員に完全に乗っ取られたのです。
日本には身分制度は無いと考えられています。しかし、それは間違いです。公務員というのは身分です。実際に「公務員の身分」呼んでいます。安定した職場に高い給与と退職金、更に年金まで一般市民とは死ぬまで違います。また、犯罪についても公務員の場合は警察や裁判での扱いまで有利です、公務員仲間が裁くのですから当然でしょう。マスコミも公務員階級には特別の配慮をします。
こういった事を暴露している私が、彼らから気に入られるはずがありません。私の足を引っ張ろうと報道したことが、逆に評判を上げる事につながったのは皮肉です。(2009/04/26 (日) 竹原信一の市政報告 2 から原文のまま)
テレビのニュース画面で伝えられる市長の様子は、あまり弁舌さわやかというふうには見えなかった。ブログで市民や第三者にもわかってもらいたいという一心が、一部には奇異に取られる行動に走らせたものだろう。
この頃では、ネコも杓子も「説明責任」を求めるが、すべてを説明するのはなかなか難しい。まして、一から水平な場所に向き合って、相手の言い分をすべて聞こうという姿勢がなければ、いくら説明を聞いても素通りするだけだ。
議会では孤立無援の市長が、ブログという新手法で住民に直接訴えかけようとしたのは、政治手法としてもあり得ないわけではあるまい。だが、今回落選した前市議は、前市長の手法に疑義があると裁判を起こした。
「前市長」そう、結局、選挙後開かれた市議会は多数で市長の解職を決め、市長は失職した。この町ではまた市長選挙が始まることになる。
九州地方(2009/03/17訪問)
▼国土地理院 「地理院地図」
32度2分8.30秒 130度11分42.94秒
近畿地方(2009/03/17 訪問)
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