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409 仏岩の鼻=田辺市天神崎(和歌山県)なぜここでナショナルトラスト運動が起こったのか… [岬めぐり]

 天神崎にあるもうひとつの岬は、港に近い仏岩の鼻である。この名がついたのは、当然ながら、ここにある立岩がホトケさんのように見えるということからであろう。おそらくは、それはかなり昔からそう呼ばれてきたのだろうが、それにしてはこの仏岩の周辺環境は、著しく悪い。
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 長い防波堤が、ここから大きく東へ飛び出しているのだが、この堤防がつくられたのは、“ナショナルトラスト”という言葉を、日本人が知るずーっと以前のことだったのだろう。それをつくるときには、そこらにごろごろしている岩などに配慮しようと考える人間は、誰一人いなかったようだ。仏岩のギリギリをコンクリートの高くて太い堤防が通っていて、この分では、何体かの小さなホトケさんはかまわず下敷きにされてしまったのではないか、と疑わせるに充分である。
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 だいたいにおいて、堤防などをつくるときに、ちょっとした自然の出っ張りを利用するというのは、ごく自然な発想だったようだ。ここ、仏岩の鼻もホトケの名をもってしても、そうした常識と慣習に再考をを促すことはできなかった。
 仏岩の鼻の付け根は、かろうじて残る狭い空間地に軽自動車ばかりがずらりと並んでいる。「天神崎」という標識が立っているが、そのすぐそばまで車でいっぱいだ。
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 この日は冬の晴れ間、好天の日曜日とあって、釣りなどにやってきた人のものだろうか。また、近所のおじさんみたいな人も数人集ってきてたむろっていたので、なにかここですることでもあったのか。
 なにしろ、周辺には駐車場スペースもなにもないし、台地の上は保護されているので道もつけられない。天神崎へやってくる人は、みなこんな切り通しの狭い道を入ってくるしかない。天神崎を回る狭い道もあるにはあるが、これでは、車は「軽」以外は入れない。
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 そんなこんなで、結局いろいろな点で、ここ仏岩の鼻が聖地の玄関先として犠牲を払うことになっている。
 「天神崎」だから、これも岬かと思ってしまうが、これは地名であって岬の名ではない。ちょっとした半島のようになっている一帯の半分が、そういう住居表示地名で、その付け根のいちばん標高の高いところが60メートルほどで、国土地理院の地図ではそこに「天神崎」という表記がある。ZENRINの地図では、どうも丸山の先端の岩付近にその名が付してあるようだが、それも違う。下から見上げるとただの薮山にしか見えないが、標高30メートルに満たないでこぼこの台地には池もいくつか点在し、豊かな自然の生態系が息づいているのだという。
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 しかしながら、初めてここにきてみて思うには、正直なところあの日本中が大騒ぎになった“自然保護の聖地”にしては、規模といい見た目といい、さほどのことがあるようには感じられない。
 よく考えてみると、ここでああいう運動が起こったのには、ふたつのことと関連があるのではないだろうか。ひとつは白浜の観光開発の進展、いまひとつは南方熊楠が起こした“神社合祀反対運動”以来、この地に根付いていた自然保護意識の伝統ではなかったか。
 半島の西側一帯は目良という、すでにとうに埋立てが終了した新開地で、その先端のいちばん立地のいいところは「かんぽの宿紀伊田辺」が占めている。
 なんとなく、そんなところは見たくないという気持ちが無意識に働いたこともあるが、今回は丸山より先には行かず、ここから引き返すことにした。いずれにしろ、この北側には積み残しになる岬もあるし…。
 地図で見ると、この岬の南の沖に「途中島』という小さな島の表示がある。その島は岩礁のようなもので、遠目には見えなかったが、すぐに『未来少年コナン』の“残され島”を連想してしまった。

▼国土地理院 「地理院地図」
33度43分37.97秒 135度21分24.86秒
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dendenmushi.gif近畿地方(2009/01/25 訪問)

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タグ:和歌山県
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コメント 2

dotenoueno-okura

このところ“鼻”が多出するので「データベースその1」を見直してみました。九州・中国・四国ほどではなくてもここも多いですね。鼻=岬というのは(無知な)関東人には耳慣れないんですよ。
和歌山県というのはまた、発祥の地とか第一号とかが多いんですね。たしかにナショナルトラスト運動には南方熊楠の影響というか、進取の気象にとむ精神風土の作用があるように思いました。 
by dotenoueno-okura (2009-04-27 08:34) 

dendenmushi

@「鼻」は「端」ですが、これは西日本の呼び方なのでしょうね。とはいっても、わりと全国的に分布しているし…。
 進取の気性はどうか知りませんが、今回の和歌山シリーズの初めのほうで出てきた「雑賀衆」など、畿内に密着してきた歴史が長かったということは言えるので、そうした歴史の厚みをもっているように感じました。
by dendenmushi (2009-04-28 06:26) 

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