400 壁川崎=御坊市名田町野島(和歌山県)木の国・日高川・道成寺・清姫草履塚と岬は…? [岬めぐり]
「紀の国」は「木の国」である。北林谷栄が主人公のおばあちゃんを演じていた『大誘拐 RAINBOW KIDS』という映画は、監督・脚本:岡本喜八のケッサクのひとつといっていいが、きっと原作もよかったのだろう。これが、紀州一の山林地主とその山々を舞台にしていたが、その山はいかにも深い。
それを象徴するようなニュースが、先日あった。細かいことは覚えていないが、なんでも和歌山県で最高峰の山にこれまで名前がついていなかったのでつけることになった…というものであった。
そうでしたか。恐れ入りますねえ。まったく。
そこで地図で調べてみたら、どうやらその“無名の和歌山県最高峰”とは、奈良県との県境をつくる山脈のうち、標高1,372メートルの護摩壇山の東に連なって位置する1,382メートルの山ではなかろうか、と思われる。すると、こういう場合は奈良県の了解も必要になるのだろうな。
その山は、まさに御坊に河口を開く日高川が、うねうねと蛇のようにのたうちながら上って行き着く水源とするところにある。そこは田辺市龍神村(あれ!? 市の中に村があるの?)だが、日高川はそこから日高郡日高川町を経て、道成寺のあたりで南に流れの向きを変えると、御坊の街をまっすぐに流れ下って海に注ぐ。
河口が「日高港」と港になっているのもおもしろいが、「御坊港」と言わず、高い山から長い旅をしてきた日高川に敬意を表しているのもえらい。
河口の南には御坊発電所があり、そのさらに南に壁川崎(かべござき)という岬があることになっている。そこは、バスの車窓から眺めることができるのではないか。
そう考えて、御坊南海バスの車庫に戻ってきて、そこからは42号線を南下して印南まで行く御坊駅発のバスに乗り換える。ところが、肝心の壁川崎は、道路を走るバスから見えるところは、あっという間に通り過ぎてしまい、すぐに岬から遠ざかってしまった。
でも、これおもしろいでしょう。カーブミラーのなかに、バスが写ってます。
日高川の河口付近には、大きな製材所かなにかもあって、木の国から切り出した丸太が、たくさん並んでいる。
川には葦の生い茂る中洲も広がっていて、河口の向うに見えるのは、日ノ御碕の山である。天田橋を渡りながら上流を見ると、その川の突き当たりの左あたりが道成寺となる。
そして、発電所のある埋立地の島へ渡るところには、「尾の崎大橋」という橋が架かっている。とすると、ここも尾の崎という岬だったのだろうか。
バスが御坊発電所への交差点を過ぎると、道路脇に「清姫草履塚」というのがあると、地図には表示してある。言わずと知れた“安珍・清姫の伝説”の舞台がまさしくここであり、蛇体になる清姫が履いていた草履を脱いだ、ということだろう。車窓から探してみたが、それもわからなかった。シャッターを押し続けたが、どこにもそれらしいものは写っていなかった。そのかわりに、こんなものが…。
やはり、ここはバスを降りてみなければならない場所であったようだ。
印南へ向かうバスは、やはりミニバスで、黄色いカバーの優先席が目立つ。初めは乗客が何人かいて、でんでんむしの指定席にも先客がいたが、やがて南に進むにつれて、結局また一人になってしまった。
思えば、でんでんむしが初めて観た『京鹿子娘道成寺』は、昭和30年代の半ば頃の歌舞伎座で、中村歌右衛門の舞台だった。
『道成寺』はもちろん、『義経千本桜』『白浪五人男』『妹背山婦女庭訓』『楼門五三桐』など、歌舞伎の舞台にも満開のサクラを背景にしたはなやかな場面が多いんだなあ、とそれぞれを思い出す。
場面転換では、チョーン!と柝(き)が入って浅葱幕(あさぎまく)が文字通りパッと切って落とされると、桜の釣り枝の飾りや大道具苦心の桜木と背景が一体となって目にも鮮やかなサクラの舞台が一瞬にして現われる…といった趣向を、日本人は昔から楽しんできた。それもまた、サクラに寄せる独特の心情の反映にほかならない。
ちょうど今、東京では満開のサクラが散り初めで、昨日も地元の隅田川の佃・月島・明石町あたりの花を散歩がてら眺めてきた。まこと、安・近・短のお花見である。
♪花のほかには〜ビルばかり〜ぃ…。写真もおまけに。
あ、今日で400項目でしたねえ。記念行事? そんなものはありません。単なるひとつの通過点に過ぎませんから…。
33度50分45.16秒 135度9分49.32秒
近畿地方(2009/01/24 訪問)
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