368 岩井崎＝志摩市志摩町御座（三重県）“リゾートの廃虚”のような光景もあちこちで

　深谷水道から、三度御座岬行きのバスに乗って、半島を輪切りにしている片田、布施田、和具を通り過ぎ、越賀の西で降りて、前回素通りしていた岩井崎をめざす。
　この岩井崎には、とてもおもしろいことがある。それは、この岬の突端は西隣の御座なのにそこから東へは海岸沿いにごく細い半月形に境界線が引かれていて、越賀の領域になっているのだ。どんな必要性や故事来歴があって、こんな境界線ができたのだろうか。


　越賀から歩きながら、岬の見える場所へ続く道を探してみたが、なかなか岬に近寄ることができない。歩いていくうちに、とうとう御座まで来てしまった。その南の海岸に出て、やっと岩井崎の全貌が見えた。


　それまで、バスを降りた砂浜や、道の途中から海岸に向かう道を入ったり出たりしたのだが、ふたつの出っ張りがあって、結局東側からは岩井崎はその頭らしい部分がちょっと見えただけだった。


　道の途中の山のなかには、ある時期は喫茶店だったらしい看板が錆び、その奥にはいちおう戸締まりはしてあるが荒れるに任された建物がある。この260号線を通る車が立寄ってくれることで、商売が成り立つと計算した人がいたのだろう。
　退治崎のところでもそうだったが、この半島には荒れたまま放置された“リゾートの廃虚”のような光景が、あちこちに点在する。
　ほかにまだ完全な廃虚になっているわけではないかもしれないが、大きな別荘地らしいところの入口が、岩井崎の前後に2か所あった。そのひとつ「奥志摩海浜別荘」という大谷石の門には「昭和43年…」とあった。まさに第一次リゾートブームのハシリの頃だったといえようか。
　後から考えてみれば、この別荘地に入っていけば、東側の岩井崎（不思議な境界線の）が見えたのかも知れない。ここも大きな「立入禁止」の看板に怯んだわけではなかったが、歩いているときにはその知恵が回らなかった。


　あずり浜のバス停の周囲も、かつては観光の目玉として期待されたらしい、海女小屋などいくつかの施設がある。そこも今は閉じているが、それが単にシーズンオフだからなのか、それともずっとオフのままなのか、それはわからない。
　岬めぐりをしていると、各地のこうした辺鄙な場所で、放棄されたままになっている別荘や、元食堂や元旅館民宿などに遭遇することがよくある。
　深谷水道のところにもあったが、あずり浜には三重県の屋外広告規制の標識が立っている。これも、行政が経済活動の末端にある行為を規制している例だといってよい。

　経済活動というものは、その哲学や思想も手法も形態も、いささかも完成されることなく、未熟なままに人々を左右し、世界を翻弄しているのだ。
　そして、誰ひとりその責任者もおらず、行政も政治も法も、もちろん無力である。そんなことが、ここ数十か月の様子だけをみると、しきりに思われる。

▼国土地理院　「地理院地図」
34度15分38.68秒 136度45分57.09秒

東海地方（2008/11/21訪問）

タグ：三重県 灯台

コメント 2

「リゾートの墓場」か。たしかに岬めぐりをしていると、そういう光景をよく見かけるでしょうなあ。
屋外広告物に関するこの標識はおもしろい。この規制・許可は現在でも機能しているんですか。それとも、これも墓地の卒塔婆みたいな存在なんですか。
最後の数行には同感ですなあ。経済だけでなく政治についてもね。それでも、ヒトは少しずつ賢く（賢島の名はどういう由来なんですかね）なって、ついには理想社会が到来する──と信じなくては「やってらんない」ですね。
by knaito57 (2009-01-16 10:40) 

＠こうした屋外広告物の規制は、ここではまだちゃんと機能しているようでしたよ。ただ、その範囲があまり広くなくて、細切れになっているので、たいして効果的とは言えないようでした。
　でも、これはもっと全国各地で、広範囲に規制して、徹底したほうがいいですよね。そう思います。
　それがカシコジマですよ。
by dendenmushi (2009-01-18 11:22)